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┃ 中国ひとりぼっち: ―――――――――― by ブーザンさん                ブーザンのホームページ(中国ひとりぼっち)

☆ 成都逮捕事件(1) ――――――――――――――――― 1995/05/26

−1

タクシーの兄弟との4日間が、瞬く間に過ぎ去った。
その夕方、中国旅行社がホテルで待ち合わせた時間通りに来た。
「桂林」行きの航空チケットを頼むためであった。
前回のように、航空チケットのキャンセル待ちにでもなったら困ると考えて、
ホテルの従業員に頼み旅行社に来てもらった。

3日後の「桂林」行き航空チケットを、予約した。
お金とパスポート・外国人居留証を手渡し、必ず手配するよう念を押した。
話しが終ると直ぐに帰ってしまったので、私はひとりで町へ出た。
ガイドブックに載っている街の餃子屋さんへ行ってみようと思った。

−2

春南百貨店の向い側にある「竜抄手」という餃子・ワンタンの専門店に焦点を
絞ってタクシーを拾った。
運転手にその店の名前を伝えると、直ぐに分かったらしく直行した。
行く途中の車の中で、「お客さんは、日本から?」と聞くので、「良く分かり
ましたね?」と聞き返すと「お客さんの中国語は上手ですが、発音が日本人で
すよ」と、
「意味は通じますか?」と再度聞いた。
「私共の商売は、いろんな人を乗せますからね〜?」と、まだまだ私の中国語
は一般の人には通じないんだ!と直感した。

−3

そんな話をしていると、タクシーは「竜抄手」に着いた。
車を降りて店に入ったが、広く感じられた。
空いているテーブルを探して座った。
5分程待っても注文を取りに来ない為、皆どうしているのか?観察してみた。
汽車の切符売り場のような所へ行って注文し、小さな窓からチケットを貰って
いた。私もそこへ行き、何を頼もうか考えた。
チケットを買う上段と下段に、メニューを木片に書いたものが掛けてあったが
意味が分からない。
私は後ずさりして、後の人に先に買うよう促がした。

−4

廻りを見まわすとワンタンや餃子・白玉等、小皿に盛ったものを、美味しそう
に食べていた。
チケット売り場に並んでいた客が途切れ、おばさんが変な目をしながら、
「アンタ!買うのかい?買わないのかい?」と大きな声で言う。
「さっきの人と同じ物を下さい」と答えたが、「さっきって誰の事・・・?」
と首を傾げている。
仕方なく、直ぐうしろの席のお客さんの皿を指差し、
「これと、これと、あれと、それを下さい」と言ったところ、変な動物でも見
るような目つきでまじまじと見返された。
お金を払った。
小皿4枚で4元8角(55円)であった。

−5

美味しかった!
店は広い感じで、テーブルは学校の会議に使用する様な長細いテーブルが、抱
き合わせにして置いてあり、椅子も粗末な物であったが、餃子とシュウマイは
美味しかった。

満腹感を覚えたので街へ歩いて向かう事にした。
大体の地図で、何処へ行くという目的も無く歩いた。
成都も人が多いと感じた。
歩いているうちに、錦江賓館の前に出て、交差点を道なりに右へ折れて歩いて
いたところ、前方で女の子が車に連れこまれようとしていた。
道行く人は見ても知らない振りで通り過ぎてゆく。
私は、咄嗟に車から出ている腕を思いっきり殴った。

−6

中の男3人が降りてこようとしたので、「私は、日本の公安だ!」と叫んでし
まった。馬鹿にも程がある。
彼等は、ビックリしてタイヤの音をきしませて逃げ去ったが、もし降りて来て
いたらどうなっていたのか?
考えると、自分の馬鹿さ加減に腹が立った。
そんな事を考えながら歩いていると、さっきの女の子が私の横に来て一緒に歩
きはじめた。

「何処から来たの?」と彼女に聞くと「深セン」から来たという。
なんだ同じ広東省かと思っていると、急に「コーヒーを飲もうヨ」と言い出し
たので、先ほどの餃子で喉が渇いていた事もあってコーヒー屋に入った。
内部は中々モダンな作りになっていた。

−7

私はコーヒーを頼んだが、彼女は考えた末にウィスキーを頼んだ。
喉が渇いていたので水をお代わりした。
彼女はすぐ2杯目のウィスキーを飲み始めていたので「ペースが速いぞ!」と
注意をしたが、美味しいウィスキー、と呟いてまた口へ運ぶ。

そのとき、何気なく時計を見ると7時30分を過ぎていた。
話すことも無くななったので勘定をしてもらう事にした。
その前に自分で取りあえず計算をしてみた。
コーヒーが20元(260円)、ウィスキーは2杯で100元(1300円)くら
い?と計算した。

−8

しかし店は、2400元(31200円)の請求!をしてきた。
これには、私より先に彼女がビックリして食って掛かっていった。
私は、200元で話しを付けようと考えた。
しかし彼等は頑として2400元を譲らなかった。

私は、200元以上は出す気が起らなかったし、出す気もなかった。
彼達は「老板」が来るまで待つように引き止めたが、店主が来れば余計ややこ
しくなるとも思った。私達が店に入ってから50分ほど過ぎたが、お客は我々
二人だけで他には誰も入って来なかった。

−9

私は、彼等にスキができるのを待った。
2人の店員の内の1人が店の奥へ行き、もう1人はカウンターから出るために
カウンターをくぐった瞬間!彼女の腕を掴んで「今だ!」と2人で店から飛び
出した。200元はテーブルの上に置いてきた。
彼女には小さな声で「隙が出来たら逃げる」から用意するよう話してあった。

彼女は若いので逃げ足が早かった。
私は彼女に引きずられるように走った。
3、400メートルほど走ったところで路地に逃げ込み、夜店が沢山出ている
道路へ出た。
「ここなら人も多いし、もしも奴等が追ってきても見つからないだろう」と、
独り言のように呟いたが、雑踏のざわめきで彼女には聞こえなかったようだ。

                             =つづく=
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