┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━┓
┃
┃ 中国ひとりぼっち: ―――――――――― by ブーザンさん
┃ ブーザンのホームページ(中国ひとりぼっち)
☆ 成都の7日間(4) ――――――――――――――――― 1995/05/21
−24
四人が食べても食べきれない、と思うほどの量であった。
この日本人はこんなに料理を頼んで、どうやって食べるのだろう?
案の定、ウェイトレス達が私の周りに集まってきた。
私は気恥ずかしさも手伝い、中国語の勉強をしている素振りをしていた。
15分ほど経っただろうか、私はお腹が一杯になり、もう食べられない。
だが、まだほとんどの料理は手付かずで残っており、一人で来た事を後悔しか
けていた。
意を決っしておもむろに立ち上がり、レジの方へ歩いて行った。
私の座っていたテーブルを振り返ってみると、まだ5・6人のウェイトレスが
突っ立ったままだった。
田舎の、新しく出来たホテルで、地元の人には値段が高過ぎ来れなかったこと
と、夜遅いことも手伝って、その時の客は私一人であった・・・・。
−25
・・・・・・・・さて、
隣で食べている兄弟は、唐辛子で真っ赤に染まったなべ料理の為、汗びっしょ
りになっていた。
タクシーの兄弟と、食事の終った食堂の中でおおよその目的観光地を話し合っ
た。
話し合うといっても、地元育ちの彼らの方が土地の事に関してはよく知ってい
るだろうし、私は日本より持ちこんだ旅行ブックの地名を彼らに伝え、日程の
配分をしてもらうくらいしかなかった。
杜甫草堂・武侯祠・青羊宮・文殊院・動物園・王建墓・都江堰・二王廟・青城
山・宝光寺・etc。
彼らは、これを「たったの3日半で、廻れというのか?」と言うが、
「この地図を見る限りでは、行けない距離ではない」と断言しても、
「これは不可能だぜ」と、二人でまた四川語で話し出した。
−26
3、4分ほどの時間が過ぎ、
「青城山は遠いので無理だが・・・、他の所は何とか努力してみましょう」
と話が決まった。
車に乗り出発したら、兄貴の方が「あと100元で良いから、上乗せしてくれ
ないか?」と私に頼む。
「とにかく高い賃金を貰うには、それだけの仕事をしなければならない」
と、二人に話した。
「それじゃ費用の半分だけでも、今貰えないか?」と言うので、
「何に必要か?」と問いただす。
「車のガソリン代などと、また、我々のメシ代も‥‥」
私は、
「私と共に行動するのだから、ガソリン代も食事代もいらない筈だ!」
−27
続けて彼らにこう言ってやった。
「しかし兄貴の食事代などは、元々考えていなかったから、自分で払ってもら
うしかない」と厳しく話す。
「それはないですよ・・・」
その後の言葉は詰まって出てこない。
そこで私は「例えばこう考えたらどうだろう?」と、喉まで出かかって、、
あわてて言葉をのみこんだ。 なぜのみこんだ?
元々弟だけという約束を、何を血迷ったか彼らは兄貴も付いて行くから賃金を
頂きたいと・・・
こんな理屈は、他の観光客には通用するかもしれないが私には通用しない。
−28
彼らが、日本人と一緒だから良い食事に与れると、連れていかれる所は一人前
ゆうに200元はしている。
私が先に半額を兄貴に渡したとして、私と一緒に行動しながら兄貴の食事代は
自分払いとなれば、彼らの取り分が大幅に減る計算になる。
それに気付いて言いそうになったので、慌てて口を閉ざした。。
案の定、兄貴からは「私の分の食事代は自分が支払っても良いから、先に半分
ほしい」という言葉がでたので、1日ずつ兄貴の給料の半分を支払う事に決め
た。
そしてこう言った。
「兄貴に給料の半分を支払ったのだからもう来なくてもよい。それは自分達で
考えてほしい」
「来なくても良いのか?」と、弟が私に質問する。
「来なくても良いよ、弟が一人いれば十分!」
「但し、来なかった場合は、当然の如く給料はない」と告げたところ、逃げ場
を失った様に考えこんでしまった。
ところが、‥‥
−29
翌朝、兄弟は揃ってホテルに現れた。
「やっぱり来ましたよ!」
兄貴の、元気な声に振り向くと手に袋を下げていたが、それには触れず観光に
出発した。
行く先々で、フィルム4本は撮った。
乾電池が直ぐになくなるので、毎朝出発時に50本の乾電池を用意させた。
「貴方は観光でなく、写真をパチパチ撮るだけじゃないですか?」と言うが、
事実その通りだった。
出来るだけ早く、出来るだけ多くの場所を撮影する。
他の観光客のようにのんびり散策し、いにしえの情緒を味わってなどいられな
い。
−30
限られた時間で、どれだけの観光地を廻れるか。
それも人よりたくさんの写真を撮りながら、、、
だから彼らの言っている事も、半分は当たっていた。
時計を見ると2時になっていたので、食事をするからどこか美味しい所を見つ
けなさいというと、車で5分もかからないところで停めた。
「ここ高かそうじゃないか?だいじょうぶかい?」と聞くと、
「だいじょうぶです」という兄貴の声に、よくよく見ると・・・・
驚いた事に、兄貴は弁当を取り出し、「車で食べて、車で寝て待っている」
これには一本取られたと感じた。
弟も驚いていたが、「じゃ兄貴!また後で」と言い残し我々は中に入った。
=成都逮捕事件へつづく=
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。

|