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┃ 藤田健の"中国だけで驚いてちゃアカン!":by 藤田健さん
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☆ カルカッタ編(3)チャイ屋の少年“ラム”―――― 2002/02/06
ーー今日も一日はチャイ屋から始まった。
ここのチャイ屋には、ラムという10歳ぐらいの利発な男の子が働いている。
この年で、田舎の村から1人でこのチャイ屋に預けられている。いつも明るく
みんなの人気者だ。それに、まだ子供なのに良く気も回る。
インドでは、学校にも行かずに働いている子供がとても多い。でも、きっと彼
らも実家が貧しくて、そうでもしないと食べていけないのだろう。そんな経済
状況では、いくら児童労働を規制しようとしたって、福祉制度の整わない国で
は難しい。--明治時代の日本もこんな感じだったのだろうかと思いを馳せた。
しかし、働き手が子供の場合、当然彼らの給料は安い。実情は私には分からな
いが、きっと食事を食べさせてもらうだけとか、親元にお金が払われているだ
けのこともあるだろう。だからインドでは、簡単な仕事では子供が働いている
ことがとても多い。そのため、子供の低賃金に引っ張られて、大人の賃金も安
く抑えられてしまうそうだ。
インドの子供達でも、8歳ぐらいの、働き始めたばかりの子供はまだまだ無邪
気だ。それに、大人に怒られればやっぱり泣きベソをかいたりもする。それが
働き出して1〜2年で、みるみる大人の顔になっていく。それは同年代の学校
に通っている子供達と比べてみるとよく分かる。
15歳ぐらいにもなれば、もういっぱしの大人の顔になり、店番をしている子
だって珍しくない。
だからラムと毎日付き合っていて、とても素直で明るい子なのだが、なんだか
10歳ぐらいで既に幼さが見当たらないことがなんとも哀しくなってしまう。
自分があの年齢の頃には、毎日放課後は鬼ごっこをしたり、野球をしたりして
いたのに、、、。
毎朝、チャイ屋の前を人力車に乗って学校に通っている小学生が通っていく。
きっとお金持ちの子供だろう。ラムよりもずっと幼い顔立ちをしているけれど
年の頃は同じぐらいだろうか。時々本を開いていることもある。教科書かな。
ーーラムは、いったいあの男の子を見てどう感じているのだろう。あの男の子
からは、同年代の子供が働いているのってどう見えるんだろう。
色々と思いを馳せてみるが、実は自分の両親が小学生だった頃には、日本でも
それほど珍しくない光景だったのではないだろうか。
いつも世話になっているので、ラムにも何かしてやりたいのだが、ーーどうす
ればラムが喜ぶのかよく分からない。
ラムは、いつもボタンのとんだ半ズボンとオンボロシャツを着ている。替えの
服は、洗濯したまま塀に干しっぱなしのもう一着だけ。どちらの服も、浮浪者
と間違われてもおかしくないほどにボロボロだ。
だから、本当は新しい服でも買ってあげたいところだが、しかし、カルカッタ
での親代わりでもあるチャイ屋の親父さんを差しおいてそこまでやってしまっ
たら、ちょっと差し出がましいような気がして気が引ける。
この際、ありきたりだがオモチャでも買ってあげようかと思って直接ラムに訊
いてみた。
「ラム、いま君が一番欲しいものってなんだい?」
‥‥そこで返ってきた彼の答えが、あまりに現実的過ぎて胸が詰まった。
「たまには肉が食べたい」
----肉ぐらい食わせてやるさ----と思った。
しかし、チャイ屋の中で、彼だけに肉を食わせてやるわけにもいかず、さりと
てチャイ屋を閉めて全員を引き連れて飯屋に行くわけにもいかず、どうしたも
のかと思った。チャイ屋には、私より年上の従業員だっていた。
ーーみんなの面子をつぶさないように、口実も作らなければ....。
鶏が一羽いくらで買えるのか訊いてみると、大体30Rpぐらいだという。
そこで一計を案じ、シャンカールに尋ねた。
「シャンカール、チキンカレーは作れるかい?明日の昼、チキンカレーが食い
たくなったので作ってくれ!」ーーーそうシャンカールに頼んだ。
すると、
事の成り行きを聞いていたラムの顔が、子供らしい無邪気さをみるみる取り戻
して輝いた。
―― 翌日の昼、チャイ屋に寄ると、もう準備はできていた。
チキンカレーを頼むと、ボコボコにヘコんで傷だらけのアルミの食器に、ご飯
とチキンカレーをよそってくれた。肉が一切れ、ご飯はたっぷり。
みんな、私が来るのを待っていたようだ。そして、私が食べ終わるのを待って
いる。私さえ食べ終わってしまえば、ーーーあとは残り物なので、正々堂々と
子供達もチキンカレーが食べられるという寸法だ。
私が食べ終わってから、従業員みんなで残りのチキンカレーを旨そうに食べて
いた。その間私は、何杯かのチャイを飲みながらのんびりとしていた。これで
ささやかながらもラムを喜ばしてあげられたことがなんとも嬉しかった。
―― さて支払いである。
無論、鶏一羽分の代金は支払ってあげる気でいたのだが、実はカレーの代金は
決めずにおいたのである。その当時、チキンカレーを安いカレー屋で食べれば
10Rpで食べられた。
シャンカールだって、私がチキンカレーの値段の相場を知っていることは承知
しているだろう。そこで、金には意地汚いシャンカールが、果たしていくらの
値を付けてくるのかが少し楽しみだった。
「じゃあご馳走さん。それで、カレーはいくら?」私は訊いた。
「40Rp」シャンカールはニッコリ答えた。まあ、妥当なとこだろう。
「じゃあ、カレーの代金が40Rpとチャイが3杯で43Rpね!」
ーーと43Rpを支払おうとしたら、
「Too much!カレーをご馳走になった上に、チャイ代までは受け取れないよ」
とシャンカールが言った。
ーーそれは、私が予想もしない言葉だった。ーーとてもうれしかった。
どうやらシャンカールにも、素直に気持ちが通じていたようだった。
―― 数日後、ラムが田舎へ一度帰ることになった。
親元に帰れるというので、ラムもうれしそうだ。小さなバッグに全財産を詰め
込んで支度をしているラムを見つけた。彼のバッグの中にはブリキの缶がひと
つ入っていた。
「それ、なあに?」ラムに訊いた。
ラムは、はにかみながら缶の中身を見せてくれた。それは、ラムの宝の箱だっ
た。中は、壊れたミニカーやグリコのおまけのような、大人から見ればどうで
もいいガラクタばかりだった。
それを見て、私は妙にうれしかった。すっかり落ち着いてしまって大人びた顔
をしていたラムだけれど、心の中にはしっかりと年相応の子供らしい無邪気さ
を秘めていたんだ。ーーーただ、それを表す場がなかっただけなんだ、、、。
もう、そんな子供らしい無邪気さや幼さを失ってしまっているんじゃないかと
恐れていたので、そこに垣間見えた彼の年相応の幼い表情が、私を安堵させて
くれた。
ーーその晩、チャイ屋の親父さんに連れられてラムは村へ帰っていった。
そのとき、私はラムのパリッとしたシャツ姿をはじめて見た。村へ帰るという
ので、チャイ屋の親父さんが新品の服を買い揃えてくれたのだろう。親父さん
は、やっぱりチャント考えていてくれたんだ。チャイ屋の親父さんの温かい心
遣いに、私までうれしくなってしまった。
ラムは、もう今では大人になっているはずだ。果たしてどんな大人になってい
るんだろう。どんな仕事をしているんだろう。ブラブラと遊び暮らしているよ
うに見えるバックパッカーを見て、今はどう思っているんだろう。
もし再会する事があったら、屈託のない笑顔を又私に見せてくれるだろうか。
ーーそんな事を時折、今でも思い浮かべる事がある。
藤田 健
Fujita Ken
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┃ ┃ メールマガジン読後感アンケート結果。
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◇面白かった (^○^) ------------------------------------- 34人 (94%)
◇ふつう (゜.゜)-------------------------------------- 1人 ( 3%)
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┃ ┃ コメントボードに頂きました感想。
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┌──────────「小坂文さん」
人情はどの國でも同じ。感動しました。
└──────────
┌──────────「ブラジル人さん」
厳しい現実の中に、ホッとする記事でした。
あの人達の夢が、叶うことを祈ります。
どんな夢かは知りませんが。
└──────────
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┃ ┃ お便りで頂きました感想。
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┌──────────「たろおじさん」男性@53歳@岡山
まるで、インドかパキスタンかイランの映画を見ているような感じ。
イメージというか光景が目に浮かびました。 藤田健さん、ありがとう。
意地汚いといわれる階層も、やっぱり人間関係が良ければ“人”になる。
金持ち国日本も、今のまま海外生産へ移行すると貧乏国になりそうです。
資源貧弱国が加工付加価値で黒字にして、食料などを買い入れることで食って
きたのが、大きく崩れる危険があります。
貧乏にならねば、気がつかないのかもしれない。
日本が今みたいに金持ち国になったのは、たかが2世代。
縄文から6000年としてせいぜい30年間、比率にして0.5%だけです。
いつころがり落ちるか、解ったものじゃない。
工業系の高校を出ても、引き算がわからない。面積って何?、分数って?
それでいて携帯メールにくびったけ、人との話はできないみたい、おはようも
言えない、いつも疲れた顔してる、そんな10代の若年寄が激増してる。
私はどちらかというと、仏教徒。輪廻転生説。
輪廻転生といっても、死んでからなるというよりは、意識がしょっちゅう輪廻
転生するという理解です。
良いことすれば気持ちが明るくなり、悪いことすれば顔が悪くなる。
なにか話が、あっちこっちにとんでしまった。 ごめんなさい(^^;
└──────────
▼
┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
たしかに話があちこちにとんでおりまして、どこをつかまえればいいのか・・
ご愛読をいただきましてありがとうございます。(^^)
健さんのこの“チャイ屋の少年“ラム”は、チョッピリほろりとさせられる、
あたたかなやわらかな心が感じられる素晴らしい傑作です。
こちらに暮らしておりますと、ときにあまりのガサツさに絶望してしまうこと
も再々ですが、こんな話にふれると自分も反省させられて、また新たな元気が
沸き起こってまいります。
たろおじさんは現在の日本をだいぶ悲観的に捉えておられますが、私はそれほ
どとは考えません。
いつの時代も先がわからずに悲観楽観が錯綜しながら、でも、どんな時も困難
を乗り越えて進んでこれたと思います。
日本人の英知を信じようじゃないですか。
また、在日中の中国人による暗いニュースも絶えないようですが、本日、OJIN
も参加しておりますメーリングリストに、中国人が起こしたある事件について
中国人の方からの、中国人社会の自省を促す内容の良識溢れる一文が投稿され
ているのを目に致しました。
時間もなくご本人の了解を得ておりませんので、転載は間に合いませんでした
が、どんな人間の社会でも、良識ある大多数の大衆は声高にはもの言わぬもの
ですが、しっかりと確かに、リベラルな良識を持って存在している、そう感じ
させられて胸が熱くなりました。
分り難い文になってしまい失礼いたしました。
これからも末永くご愛読いただけますようヨロシクお願い申し上げます。
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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