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┃ 藤田健の"中国だけで驚いてちゃアカン!":by 藤田健さん
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☆ New York・Midnight Harlem 【No1】
外国の様子が事細かに書かれている本やテレビ番組が氾濫している現代、なぜ
私はわざわざ現地に赴くのだろう。
それは、本の中で語られている事実が著者にとっては一面の真実ではあろうが
実際に自分の目で見、肌で感じた現実とは随分と違ったものである事が多いか
らである。
テレビの場合は演出が激しく、その傾向は一層強いものとなっている。
ーーニューヨーク・ハーレム。
この地名は映画やテレビを通じて危険な町の代名詞のように言われ、NY在住
の人たち(ハーレム在住の人以外のアメリカ人)の中でも、危ない町ということ
で通っている。
特に「スパニッシュ・ハーレムはやばい」とか「ブロンクスは最悪だ」「シュ
ガーヒルには近づくな」と様々言われている。無論ワケもなくそんな風に言わ
れているはずはない。何らかの事実に裏打ちされた話なのだろうから、きっと
危ないところなのだろう。
しかし、ハーレムが危ないと私に語った人達の中には、残念ながら自分の目で
確かめた上で語った人は一人もいなかった。
だから、どうしてもハーレムの実状を自分の目で確かめてみたかった。
私も旅の経験上、それなりに(ツアーの旅行者に比べれば)危ない目にも遭っ
てきたので、危険だといわれる地域を歩くときには充分な下準備をし、細心の
注意を払って行動している。
最初は、まず本で調べたり現地に詳しい人に話を聞いたりという情報収集から
始める。そして次に今迄の経験に基づいてハーレムの危険度を分析してみる。
危険だといわれる街には、それぞれ危険の中身にタイプがあるものだ。
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* ナイロビ(ケニア)。
貧しさからの犯罪多発地域。地元に住んでいる人さえ、よくホールドアップに
遭う。この場合物盗り目当てなので、抵抗しなければ怪我をするリスクは少な
い。警官のユスリ、タカリにも要注意。
* バラナシ(インド)。
ここは一見平和そうだが、犯罪組織があるので柄の悪い奴らに引っかかるとか
なり危ない。
* アムステルダム(オランダ)。
ここの場合、頭のおかしな麻薬中毒者が多い。
* イスタンブール(トルコ)。
ツーリストを狙い撃ちしている犯罪者が多い。
* 東京。
深夜の繁華街にいる連中や暴走族など、喧嘩自体を楽しんでいる連中がいる。
意外に思われるかもしれないが、ここ数年の東京は(或は、日本はというべき
か)犯罪から身を守るのが、世界でも難しいタイプの危ない街になってきてい
ると私は感じている。
傷害事件の発端が信じられないほど些細で、犯行の動機が不明瞭なので防ぎよ
うがないからである。
こうして見てみると、犯罪者はどんな奴らなのか。。どのような犯罪が多いの
か。なぜ犯罪が多いのかという点に着目して考えてみると状況がよく分かる。
・ハーレムの場合、犯罪組織がどの程度闊歩しているのか。
・貧しさからくるホールドアップはどの位有るのか。
・麻薬中毒者はどの位居るのか。
・警察は機能しているか。
・人心は荒れていないか。
・理由無き犯罪が起きては居ないか。
・ツーリスト狙いの犯罪の状況は。
これらのことを考えた結果、ツーリスト狙いの常習犯はまずいないと見た。
なぜなら、(アポロシアターなど一部の場所以外は)ツーリスト自体が恐がって
行かないのだから、当然常習犯もいないはずである。
ホールドアップについても、金持ちがいないのだから待ち伏せしている常習犯
もいないであろう。
つまり、明らかに金の無さそうな格好をしていれば、金目当ての犯罪には巻き
込まれないはず。だいたい、もし自分が金目当てに誰か襲うつもりなら、金持
のイッパイいる白人の住宅地や繁華街に行って誰か襲い、ホームグラウンドの
ハーレムに逃げ帰るという方法を取る。
また犯罪統計によると、ハーレムで起きている殺人の過半数(70%位だった
かな?)は顔見知り同士の犯行だそうだ。
つまり、事件以前に殺人に至るトラブルが起きているということだ。
この事から、喧嘩目的の傷害事件なども少ないとみた。
その後、黒人男性と結婚してハーレムに住んでいる日本人女性と知り合う機会
を得たので話を聞いてみた。彼女によると、ハーレムに子供の頃から住んでい
る黒人たちは、一部の白人、特に一部の白人警官からはかなりひどい仕打ちを
受けて育ってきているので、当然、皆白人嫌いになっているそうだ。
つまり、白人に恨みを持っているわけだ。
それなら当然、白人にとってはハーレムは“超やばい街”だろう。
いわば、敵陣なのだから。
あと予想が立たないことは犯罪組織や麻薬中毒者の状況と人心の荒れ具合だ。
事前調査はこれくらいにして、あとは実際にハーレムへ赴いて予想が合ってい
るかどうか、確かめてみるだけだ。無論、用心深く。
まずは昼間の大通りを歩いてみる。一応用心して、ハーレム散策のために日本
から持ってきた一番着古した洋服と靴で出かける。
NYの街では、日本人観光客はすぐわかる。まず、服装がとても小奇麗だ。
皆、カジュアルな服を着てはいるのだが、あくまでおろしたてのTシャツのよ
うに妙にこざっぱりとしていて、地元の人たちの中では浮いてみえる。
日本人観光客はやっぱり、町内のコンビニへ買物に行くような格好では旅行に
行かないのだろう。
次に、バッグの類は絶対に持たない。
これで、大金を持っていない証しとなる。
さらに、(この時期は真夏だった)上着は持たない。
これで、上半身には財布を持っていない事がハッキリとする。
財布をポケットに入れればラインが浮き出るようなズボンで財布を持たずに行
く。(あくまで、ポケットの中に小銭と小額紙幣少々)
これで、財布は持っていないとみなされる。
腕時計もつけない。
靴も薄汚れている。
無精ひげを生やす。
ここまですれば、どこからどう見たって金は無さそうなので、物盗り目当ての
犯罪は防げると読んだ
そこまで気を遣って、地下鉄の125th st 駅に降り立つ。
ハーレム随一の目抜き通りに降り立ってしばし歩く。
あたりまえだが、黒人ばかり。
白人は全くとまでは言わないが、千人にひとりぐらいだろうか。
こんなに沢山の黒人に囲まれるのは久しぶりなので、なんだか緊張する。
とにかくまず、まわりを観察する。
そしてすぐ、予想だにしなかった状況を発見してしまった!
途上国の貧民街では、皆薄汚れた格好をしているので、ついそんなイメージで
ハーレムに臨んだのだが、黒人たちの着ているものがやたらとカラフルなので
ある。こんなにくすんだ身なりをしているのは自分ひとりだけだった。
確かに想い出してみると、映画の中の黒人たちは皆カラフルな服を着ている。
次に、黒人たちの履いている靴がまた小奇麗なスニーカーばかりなのである。
後で知人に聞いたところ、マイケル・ジョーダンの宣伝の影響で、盗みを働い
てでも皆かっこいい靴を履きたがっているそうだ。
この雰囲気では、今の自分の格好はハーレムでも下位1%に入りそうな落ちぶ
れようで、どうも街から浮いている。
おかげで襲われる心配は無さそうだが街に馴染んでいないのはやはりまずい。
明日から考えよう。
しばらく歩いていたら、反対車線から、「Hey Jap!」と大きな声が掛かる。
一瞬緊張するが、どうも雰囲気を見ていると柄は悪いが気の良いヤンキーたち
といったところのようだ。
こちらも変に構えたりせず応対していれば、問題なさそうだ。
あとでハーレムに住む日本人女性に聞いてみたところ、彼らは確かにワルガキ
どもなので、恐る々々ハーレムを歩いているような他所者を見つけると、から
かい半分に大声を出しておどかしてみたり、ナイフを出してみせ、相手が悲鳴
をあげて逃げるのを楽しむような性質の悪いところがあるようだ。
だが、彼らの意に反して相手があまり反応してくれないときには、ワルガキど
ももあまりにガキッポイいたずらをしてしまったと照れてしまうようなかわい
いところもあるらしい。
だが、当の被害者はいかにハーレムが危ないところかという実例として、その
体験をいいふらす事だろう。
そうこうするうちに、昼間のハーレム散策は無事終わった。
藤田 健
Fujita Ken
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