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┃ 藤田健の"中国だけで驚いてちゃアカン!":by 藤田健さん

☆ ネパールにて「立志伝プロジェクト」

行き先も、何時日本に帰るかさえも決めずに外国を旅している時の気分には、
一種独特のものがある。なんのしがらみもなく自由気ままに過ごしていると、
「幸せとはこのことか!」と思うことがあるほどだ。

しかし、人間とは贅沢なもので、そんな毎日もあまり長く続きすぎると飽きて
くる。そしてある日つぶやく。「何か、生産的なことがしたい!」と。

その頃の自分は、ちょうどそんな気分だった。
ところはネパール。ヒマラヤ山麓の街、ポカラ。

湖畔でヒマラヤを眺めながら、のんびりと過ごす旅行者が集う観光地だ。
その頃の私も、ポカラで読書の日々を送っていた。インドで疲れた心と体を休
めるには最高の場所だった。しかし、少々退屈気味でもあった。

私がいつも立ち寄るMOMO(チベット風シュウマイ)屋が、宿の近くにあった。
まるで、時代劇に出てくる一膳飯屋のような店構えで、物好きな日本人旅行者
をたまに見かける以外、観光客とは縁のない、ひなびた地元向けの店だった。

私はそこでチャイ(インド・ネパールのミルクティー)をすすりながら、何時間
も通りを眺めて過ごすのを日課としていた。

店の主人 Durgaさんは、笑顔の似合う物静かな青年だ。彼は、ボンヤリ通りを
眺めているだけの私をいつもそっとしておいてくれた。
そんな気遣いが、とても心地よい店だった。

そんなある日、Durga さんが日本食を始めると言い出した。どうやら、子供の
進学資金に頭を悩ませていたらしい。そこで、日本食を始める事を思いついた
のだろう。
その時ふと、インドで一緒だった日本人旅行者、K氏の話を思い出した。

場所はインドの田舎の観光地。K氏行きつけの食堂での話。
その食堂はオムライスなどを出していて、味はほどほどで値段も手頃。でも、
観光客はまばらな流行らない店だったそうだ。

ある日K氏が、店の主人に何気なく言ったそうだ。
「もう少し、店の内装とか看板とかを変えれば、客が入るのに。」
すると店の主人曰く、
「どんな内装や看板にすればいいのか、俺にはわからないよ。ペンキ代は出す
 から、あんたやってくれないか。」
そしたらK氏、「どうなっても責任持たないよ。」と言いつつもやり始めたそ
うだ。

トイレを指す矢印をフォークの絵にしたり、オムライスの絵を壁に書いたりし
て楽しげな店にしたそうだ。そしたらなんとそれが大当たり!!
それ以来大盛況の毎日で、地元のお役人からは「君は一人の貧者を救った!」
と握手を求められる始末。

この話は何か、コメディー映画のようで心温まった。
そして、その話に私はあこがれた。

ポカラのひなびたMOMO屋が日本食を始めると聞いたとき、このK氏の話が頭を
よぎった。それからほどなくして、店の主人 Durgaさんから「店の看板を書き
換えるんだけど、どんなのがいいだろう。」と相談を持ちかけられた。

高みの見物を決め込んで世の中を眺める日々に飽きあきしていた私は、その話
に積極的に乗りかかった。

だがひとつ問題があった。私は絵など全く描けなかった。しかしそこに救世主
が現れた。宿で同室だった美大出身のT氏だ。彼はなんと、看板描きのバイト
をしていた事もあるそうでうってつけだった。

私がコピーとアイデアを考え、T氏がそれをデザインして2m×1mくらいの
ブリキの看板に描くという手筈だ。
早速近所の看板屋に行き、そこで場所も道具も借りての看板作りが始まった。
久々に、体に力がみなぎってきた。

こうして寂びれた食堂のリニューアル・プロジェクトがスタートした。

私の作戦はこうだった。

とにかく、安食堂が日本食を始めるのだから、当然ターゲットは日本人バック
パッカーだ。その場合、日本人バックパッカー達は、途上国の人が作った似非
日本食に結構痛い目にあっている。だから、此処の日本食には日本人が絡んで
いることを示すこと。

つまり、日本人が絡んでいないと描けないデザインとコピーにすること。
それと、日本人の興味を引いて、目立つこと。

そこでT氏に、スプーン片手にオムライスの皿を持っている、かわいい男の子
の漫画を描いてもらい、ふきだしに「うまい!安い!ほんとだよ!」という、
吉野屋のようなチョットいかがわしいセリフを入れてもらった。そしてメイン
のコピーは “バックパッカー秘伝の味“ とした。

また、隅に小さく“定食&文庫本”と入れた。日本の本に飢えている長期旅行
者を常連の客として取り込むためである。長期旅行者は、本のためなら平気で
長期滞在を決め込むからだ。そのために、旅行者からの本の寄付も募った。

旅行者のための情報ノートも作成した。旅行者にとって、新鮮な現地の情報は
とても重要だ。だから情報ノートのあるところはおのずと日本人旅行者の溜ま
り場となる。

この一連の作業は実に楽しかった。

そして、少しずつ常連客が増えていくのが、なんともいえず嬉しかった。
あたかも、自分のことのように嬉しかった。それは、高みの見物では決して味
わうことの出来ない充実感だった。

Durga さんの誠実な人柄は、多くの日本人旅行者の心を捉まえた。
そして、その後次々と日本食の作り方を教える人や本を寄付する人、さらには
彼を日本に招待する人までが現れた。また、彼は実に味付けの勘がよかった。

それらのことが重なって店は順調に客足を伸ばし、バックパッカーの間では有
名な店となっていった。その進展には、目を見張るものがあった

彼が成功した理由は、多くの日本人を巻き込むだけの魅力を彼が持っていたか
らであり、また、彼の料理の才能のおかげでもある。
もし、私が何かせずともきっと成功していたと思う。

しかし一方、これほどのサクセス・ストーリーを彼がいとも簡単に実現できた
理由は、日本人相手の商売だったからだということもまた厳然たる事実だ。
こんなことは、外国人相手の商売ならではの出来事だ。

たとえ貧乏なバックパッカーであっても、途上国での私達には、ときには地元
の人達の人生を簡単に変えるだけの力がある。同様の実例は、途上国では枚挙
にいとまがない。その現実は、多くの一攫千金を狙う人たちを観光業へと駆り
立て、実際には多くの人が失敗をして人生を狂わせてしまう。

それは、先進国へ出稼ぎに行く人たちにも言えることだ。出稼ぎに運良く行け
た上に、さらに運良くそれなりのお金を持ち帰れた人たちの一部はそれを元手
に宿屋を始めたりする。そして、外人相手の商売を2〜3年で軌道に乗せてみ
せた人達は、もうその後は使用人を使っての悠々自適の人生だ。

当然、そんな現実を脇で見ていた若者達は、地元でちまちま地道に働くことが
馬鹿らしくなって、皆一攫千金を狙いだし働かなくなってしまう。一方、外人
相手の詐欺やぼったくりも続発しだす。片や、宿屋等の観光業は過当競争に悩
まされての値下げ合戦が始まり、皆で足の引っ張り合いとなってしまう。

もし、観光業者達が過当競争を避けて談合をした場合にはどうなるか。

観光客の数に比べて業者が多すぎるのだから、自然と皆値上げをして利益幅の
確保に走ることになる。すると、それに応じて、地元の物価全体が押し上げら
れて、地道に働いている人たちの生活はなおさら厳しいものになってしまう。

詰まるところは、我々先進国の観光客が地元の社会を引っ掻き回しているわけ
だ。しかし、現代社会ではもう既に我々は彼らとの関わりを持たないわけには
いかない状況となっている。

第一、外国人観光客が来なくなってしまったら、地元の経済は既に成り立たな
くなっている。ネパールにとって唯一最大の外貨獲得手段が観光産業なのだか
ら。

その後、私は他の途上国の人たちともかかわりを持つことになるのだが、未だ
に現地の社会とどんなふうに付き合っていけば良いのか悩んでいる次第である

                           藤田 健 
                           Fujita Ken
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││お便りで頂きました感想。
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┏━━━━━━━━━━「柿の木さん」2001/10/26

藤田さんのネパールのお話、とても楽しく読ませて頂きました。
時間と費用が許さずに、日本一周もできない私です。とても羨ましく思いまし
た。
何より女性というのは、大きなハンディですね。

恋に狂って、若い時間を使い切ってしまったのは、人生で良かったのか悪かっ
たのか。。。もう少しで人生後半に入ろうという頃になってしまいました。

また楽しいお話を聞かせてください。待っています。 

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┏━━━━━━━━━━「藤田健さんから」

お便り、ありがとうございます。

"恋に狂って、若い時間を使い切ってしまった"なんて、わたしの方こそ羨まし
くなってしまいました。でも"柿の木"さんの状況は存じ上げませんが、まだ、
海外一人旅を諦めることはないのでは?と思いました。

海外を一人で旅するには、女性ということが確かにハンデとなる局面もありま
す。でも実際に海外を旅してみると、決して少なくはない女性の方々が一人旅
を楽しんでいらっしゃいます。

女性というハンデは、充分に乗り越えられる程度のものです。
それに、時に女性ならではの旅をなさる方もいらっしゃいます。

たまに、年金を使って旅をなさっている老齢の方に出会うこともあります。
あと、「よく旅行に行くお金があるね」と人からいわれますが、私の場合旅費
は(長期旅行の場合)途上国では大体1〜5万円/1ヶ月です。

それと、日本からの飛行機代が大体往復10万円(無論、行き先と時期によっ
て違いますが)ぐらいです。

他のバックパッカーの人の予算もきいてみると、旅費の総予算が大体30万円
〜50万円/1年間ぐらいの人が多いですね。
今からでも決して遅くはありません。
是非ともネパールへ遊びに行ってください。

10日以上の休みと20万円(でおつりが来ます)の総予算があれば、ネパール
は目の前です。

人生の後半戦、お互いさらに楽しみたいものですね。  藤田 健 

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┏━━━━━━━━━━「みやさん」2001/10/31

楽しいメルマガをありがとうございます。

藤田さんのお話も面白いです。
とても自分では行けない珍しい場所を知ることができ嬉しいです。

┗━━━━━━━━━━
 
┏━━━━━━━━━━「藤田健さんから」

お便りありがとうございます。楽しんで頂けているようで何よりです。

原稿書きの作業というのは孤独なもので、こうしてお便りを頂く以外、読者の
方々の顔がまったく見えません。

「果たして、どんな顔をして読まれているんだろう?」
「どんなところで読まれているんだろう?」
「実は、自分のページだけ読み飛ばされているのでは!?」

一人でパソコンに向かっていると、読者の方々のことを想像しながらも、
やっぱり(単なる想像ですので)よく不安になったりします。
そんな時、こうしてお便りを頂けるとほんとに嬉しいものです。
今後もご愛読、お願い致します。
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読者の皆さま
切にお便りお待ちしております。
感想、質問、旅についての相談、リクエスト、アドバイス、そして、皆様が
どんな方々で、どんな風にこのメルマガを読まれているのか。
なんでも結構です。。。クビをなが〜くしてお待ちしています。

                      藤田 健 
                      Fujita Ken
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