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┃ Chinese Puzzle ―世界から見た中国― :by FROMFAST007
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[Chinese Puzzle No.13 (中国における日本企業の人材戦略)] ― 2001/11/19
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<ポイント>

(1)中国で、日本企業の多くは管理職の大部分を現地駐在の日本人で賄い、
中国人をスタッフ(事務職)として雇用する形態を取っている。
一方、米国企業はごく少数の管理職のみ外国人とし、管理職レベルの大部分ま
でを中国人に任せている。

(2)中国でのビジネスを一番理解しているのは中国人であり、コストも低い
ことから米国式の経営の方が合理的ではある。

(3)しかし、米国式経営は、優秀な中国人の多くが米国留学組であることに
起因しており、日本への留学生が少ない現状では、すぐ日本企業に真似できる
ものではない。

(4)日本企業は、思い切って英語が出来る(日本語が出来ない)優秀な中国
人を管理職に抜擢し活用すべきである。

<本文>

(1)外資系企業の中国人材戦略(日本式と米国式)

今月、ついに中国のWTO加盟が正式決定しました。WTO加盟によって中国経済が
どう変化していくのか、あるいは変化しないのかというテーマが様々な紙面を
飾っており、中国経済に対する諸外国の注目度も急に高まってきた感がありま
す。

今回は、中国経済の変化を先取りして果実を得られるような外資系企業の取る
べき戦略を人材面から見てみたいと思います。
中国に限らず、企業が海外進出する場合の人事政策には、大きく分けて二つの
タイプがあると思います。

一つは、トップから中間管理職までのいわゆるマネージャーの大多数を外国人
(進出先以外を母国とする人)が占め、事務職を現地人が担当するタイプ。
ここでは、これを仮に日本式戦略と呼ぶことにします。日本企業の大多数はこ
の方法を取っていますが、中国では韓国系企業や国際機関、政府系機関もこれ
に似た形態を取っており、現地の実情より本国の意向を重視する組織にこの傾
向があるようです。

もう一つは、ごく一部のトップのみ外国人とし、管理職の大部分から事務職ま
でを現地人が占めるタイプ。
米国企業の多くはこの方式を取っており、有名なのは携帯電話のモトローラ社
です。モトローラは中国総代表(中国でのトップ)も中国人です。

日本企業では、例えば建設機械のコマツ北京事務所長が中国人だそうですが、
大勢にあわせてここでは現地人を管理職として積極登用する人事政策を米国式
戦略と呼びます。
 
以下では日本式と米国式戦略を比較したうえで、米国式戦略の優位を説明しつ
つ日本企業現地化の限界と代替案を示したいと思います。
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なお、ここでいう日本式と米国式戦略とは海外拠点における人材活用の方法論
という狭い意味で用いています。例えば年功序列や能力主義のような広い意味
での日米経営比較をしようという意図はありません。
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(2)米国式戦略の優位性

企業経営の一環として、米国式戦略の優位は際立っています。
米国式の優位性は、大別して現地化推進の容易さと低コストにあります。

現地化推進とは、中国でビジネスをするにあたって必要とされる現地の市場や
リスクを感じ取る触覚を発達させることです。
いかに競争力のある製品をもつ企業でも、その製品に対するニーズが、中国の
どこにあるのかを知らなければ製品は売れませんし、中国ビジネスの落とし穴
(リスク)がどこにあるのかを理解することも不可欠です。
そして、市場情勢やリスクは常に変化しています。

日本式戦略のもとでは、現地スタッフ(中国人)がこうした変化を先取りし、
日本人管理職がそれを理解して企業戦略に生かしていくという形が理想なので
しょうが、そこまで先見性がある現地スタッフはなかなか日本企業にはやって
こないのです。

なぜなら、中国人の間では“日本企業に就職しても出世ができないし、給料も
低い”ということが半ば常識になっているからです。
私が留学していた北京の大学でMBAを取得した中国人の友達も、そうした理
由で日本企業は最初から就職活動しませんでした。

結局、日本企業には上司から言われた仕事だけをするレベルの中国人職員しか
集まらず、中国市場やリスクの研究は中国滞在経験が長い日本人が行なうこと
になります。しかし、いわゆる"中国通"といわれる日本人でも、中国理解では
優秀な中国人に敵うわけがありません。

特に中国ではマスメディアが未発達で、様々な問題が噂話で伝わります。
噂話の輪のなかに入って情報を入手し、そのなかから意味のある情報を抽出で
きる日本人は本当にごく僅かでしょう。

その点、米国式戦略が優れている理由はわざわざ述べません。
ただ、中国や海外のトップ校でMBAを取得したり、日本企業で実績を積み重
ねた優秀な中国人は出世や給与の点で夢のある米国式企業に続々就職している
という事実が米国式戦略の優位性を証明していると言えましょう。

次にコスト面を簡単に比較します。
日本人や欧米人が中国で駐在する場合、一般的には5つ星レベルホテル相当の
社宅と社有車が割り当てられ、生活の困難さの対価として多めに給与が支払わ
れます。

従って、会社からみれば一人あたり人件費は本国勤務の社員の2倍近くになる
でしょう。
さらに、例えば日本人職員の語学学習のため留学に出すなどすれば、その職員
には仕事をしないにも関わらず1年間給与を支給することになります。

これが中国人であれば、いかに優秀な職員であっても月20万円支払えば相当
な高給ということになるでしょう。
もちろん、営業やディーラー等の職業なら実績に応じてボーナスを支給しても
いいですが、日本人や欧米人と比較すれば確実に半分以下の人件費でほぼ同様
のパフォーマンスを期待できると思います。
このように、現地の実情にあった経営を行なうという面でもコスト面でも、米
国式の方がより合理的であることは疑いがないように思います。 

(3)米国式経営の特殊性

それでは、日本企業も米国式にならって優秀な中国人を積極的に雇って日本人
駐在員は少数の高給管理職だけにしようと考えたくなりますが、ことはそう簡
単でもありません。理由は、日本語や日本文化を理解している優秀な中国人が
極めて少数だからです。
 
その点、英語やアメリカ文化を理解している優秀な中国人は数多くいます。
アメリカ留学組の中国人や、それに憧れて必死に英語を勉強する現役学生は巷
にあふれていると言っていいでしょう。これは決して単純にアメリカが豊かで
憧れの対象になるという理由だけによるものではありません。

アメリカは中国の改革・開放以来一貫して戦略的に中国人学生を受け入れ留学
させてきました。これは米中関係が不安定で相互不信が高まった時期にも途絶
えることなく続いてきた流れです。
この背景には、米国留学組を中国のエリート層に育てることによって中国を内
側から変化させていこうというカーター政権以来の国家的な意図があります。

その戦略は政治面でも効果を出しつつありますが、より明確には経済面で現れ
ているということでしょう。
米国留学経験があり、場合によっては米国での職務経験がある中国人になら、
それこそ安心して組織の舵取りを任せられるというものです。
日本にも同様の戦略を打ち出す政治家はいましたが(例えば中曽根康弘)残念
ながらその構想はあまり成果を挙げているとはいえません。

米国式戦略は、人材育成に関するアメリカの国家的な構想があってこそ成り立
ちうる特殊な戦略であり、合理的だからといって直ちに日本企業が真似できる
ものではないことは理解する必要があるでしょう。

(4)日本企業の選択肢

それでは、日本企業は引き続き現在の日本式戦略を続けていくより他ないので
しょうか。
私はよりよい方法があると思います。
日本語が無理なら、割り切って日本企業の中国拠点における公用語を英語にす
ればよい。

日本企業の欧米拠点では、使用言語は英語が主となっているところが多いでし
ょう。
中国では日本語か中国語でないとコミュニケーションが取れないと思うから、
優秀でない中国人を高給で雇ったり、日本人に高い研修費用をかけて中国語を
勉強させたりするのではないでしょうか。

そのようなことをするよりも、優秀な中国人を雇って中堅幹部とし、彼らと、
上級管理職としての日本人は英語でコミュニケートすれば遥かに効率的な組織
運営ができると考えます。
つまり、日本企業自らが少し変わることによって、アメリカが手塩にかけて育
てた人材を活用するという考え方です。

ビジネスは基本的にプラス・サムゲームですから、それによって日本企業とア
メリカ企業との間でビジネスが生まれれば、アメリカにとっても決して悪い話
ではありません。
 
ここでは単純化の為に"日本式"、"アメリカ式"という表現をしましたが、経済
に関していえば、多国籍企業の国籍を問うこと自体が無意味になってきている
現在、中国だけを特殊扱いすることに意味がなくなってきているし、今後もそ
の意味は小さくなる一方だと思います。

こうした傾向のなか、中国拠点での公用語を英語にして経営の現地化と合理化
を進めることは決して無理な話ではないと思うのですが、いかがでしょうか。

(おわり)
 
参考資料:
近藤大介『北京大学三カ国カルチャーショック』講談社、1997年。
→ 中国の最高学府、北京大学の著者留学体験記。
中国人学生がアメリカ留学のため必死に勉強に励む姿がよく描かれている。

ジェームズ・マン『米中奔流』共同通信社、1999年。
→ ニクソン政権以降のアメリカの対中政策を描いたノンフィクション。
第五章"カーターの冷戦"で、中国人留学生の積極的受け入れが 中国エリート
層の変化を狙った国家戦略だったことが明確に示されている。

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