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┃ Chinese Puzzle ―世界から見た中国― :by FROMFAST007
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[Chinese Puzzle No.10 (米国同時多発テロ事件と中国)] ―― 2001/10/09
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<ポイント>
(1)9月11日の米国同時多発テロ事件に関し、中国はテロ行為への反対と
いう一般論を掲げるも特別な支援策を講じる訳ではなく"対岸の火事"と見てい
る印象がある。
(2)中国国内では、一部にウイグル族への警戒心や、それに乗じた新疆ウイ
グル自治区の統制強化が生じているとの説もある。
(3)日本の対米支援を巡る議論について、自衛隊による支援を非難する主張
は意外なほどトーンが低い。表立って非難すれば米国を敵に廻す恐れがあるた
めか。説明を充分行なえば、自衛隊の後方支援実施後も日中関係に悪影響は及
ばない。
<本文>
9月11日の米国同時多発テロ事件発生から、ほぼ1ヶ月が経過しようとして
います。
事件の衝撃は言葉で表せないほど大きく多方面に渡るものでしたが、事件に対
する世界各国の態度の"温度差"は各々の国内外での立場を浮き彫りにしつつあ
ります。今回は、事件に対する中国の反応についてお伝えしたいと思います。
(1)テロ事件自体への態度
政府、一般庶民を問わず、中国が今回の事件に対し抱いている印象は“対岸の
火事”ということではないかと思います。
今回の事件が全世界に衝撃を与えている第一の要因は無数の人命被害ですが、
更にはテロ攻撃の対象が民主主義の中核であるワシントンであり、自由経済の
中心であるニューヨークであったことでしょう。
日本にせよ欧州各国にせよ、アメリカの建築物のみならず民主主義や市場経済
の思想までもが攻撃を受けたと認識しているからこそ本件を自国の問題と意識
して集団的自衛権を発動しようとしています。
しかし、言うまでもなく中国は民主主義や市場経済の価値を、少なくとも日欧
米諸国と同じ様には共有していません。
従って、日本や欧州各国と比較して当事者意識が希薄なのはある意味当然のこ
とです。
また、自身の歴史体験を通じて内政干渉や外国侵略という行為に非常に敏感な
中国は、よほど正当な理由がない限り三国間の軍事行動を支持しません。
今回も、アメリカの独断による軍事行動には否定的で、国連の決議を取得して
から行動すべきという遠まわしな表現でアメリカの報復行動を黙認する態度を
とっています。
(2)中国国内の治安状況と対少数民族政策
北京市内の状況に目を転じても、9月11日以降に特に治安が厳しくなったと
いう実感もなく、今後中国がテロのターゲットになるという意識は特に無いよ
うです。
先日北京から国際線に乗るため空港へ行きましたが、安全検査も通常通りでし
た。
ただ、米国メディア( The Int'l Herald Tribune)によれば、少数民族である
ウイグル族に対する警戒心は高まっている様です。
ウイグル族の一部独立支持派は、ここ十年ほどの間に新疆ウイグル族自治区等
でバス爆破等のテロ活動を行ってきたため、今回も便乗する形でテロ活動を行
う可能性があるとされているようです。
ウイグル族は、数ある中国の少数民族のなかでも独立志向が強いために、都市
戸籍がなかなか取得できないなど不平等な扱いを受けていることが指摘されて
います。
今回の事件にともなって、同様の事件を引き起こす可能性を暗示しつつ、中国
がイスラム系少数民族に一層抑圧的な政策を実施することも考えられます。
中国の対少数民族政策への影響は注意して見守るべき問題だと思います。
ちなみに、当然ですが中国のメディアではこうした視点からの報道は一切あり
ません。
(3)日本の対米支援に対する控えめな抗議
今回、私は中国が日本の対米支援に対してどういう態度を取るのかという点に
興味を持っています。
周知の通り、小泉首相は今回の事件を米国のみならず、日本を含めた民主主義
諸国への攻撃と捉え、自衛隊派遣も含めた積極的な対米支援を行うべく、自民
党内及び野党との見解統一を進めています。
その過程で、憲法解釈や新法制定といった手続を通じて、日本政府や日本国民
の戦争/平和観が浮き彫りになってきています。
ごく大雑把に言えば、十年前の湾岸戦争への資金協力が殆ど評価されなかった
ことへの反省もあって、政府・世論ともに自衛隊派遣には前向きになっている
と思います。
欧米のメディアでは、こうした変化は(どちらかといえば好意的に)注目すべき
出来事として採り上げられています。
そこで、中国ではこうした傾向を大々的に非難するのではないかと思ったので
すが、意外にもそれほど厳しい非難はないようです。
ここ1ヶ月の中国メディアを通じて最も強く日本への警戒心を示していたのは
9月25日付の人民日報社記事だと思います。
小泉首相のワシントンでのブッシュ米大統領との会談直後に出た記事で、日本
の海上自衛隊が"調査目的"で米海軍の護衛に当たったことを指摘して“自衛隊
は海外へ出兵するための後押しになるような機会を従来から待ち望んでおり、
今回はその格好の大義名分となった”とし、自衛隊の海外派遣の背後には自衛
隊の権限拡大を目指す一部の意図が働いているとしています。
ただ、この記事にも例えば"軍国主義"のような従来の日本の軍事活動を説明す
るときにほぼ必ず使われてきた表現は無く、日本を非難するというよりもある
一定の警戒をもって見守るべきだというニュアンスになっています。
この記事以外には、日本での自衛隊派遣を巡る議論はほとんど報道されず、外
交部スポークスマン朱邦造氏による“日本は過去の歴史に鑑み、米国への支援
には慎重な態度で臨むべきだ”というコメント(9月27日)を引用する程度
です。
また、10月8日に小泉首相が北京を訪問しました。
訪問の主目的は、首相の靖国神社参拝と教科書問題で後退した日中関係の改善
ですが、テロ報復を行う米国支援に自衛隊を活用することの是非も重大な議題
の一つでした。
首相との会見で、江国家主席と朱首相は自衛隊の活用に対し“テロ撲滅のため
の協力は理解できる”としつつ“アジアの人々に警戒心があることを覚えてお
いてほしい”と穏やかに釘を指す控えめな態度を取りました。
このように、中国政府は日本の自衛隊活用に対して意外にも寛容な姿勢を見せ
ています。
言うまでもなく、今回の事件が首相の靖国参拝、教科書問題等とは異なり日中
間だけの問題ではないことが中国の抑制気味の対応の最大の理由でしょう。
ここで日本を厳しく非難すれば、アメリカやテロ反対の国際世論までも敵に廻
しかねません。こうした事情により、今回の中国の対応をもって今後の日中関
係への参考とすることは難しいでしょう。
しかし今回の事件に限って言えば、自衛隊のパキスタン、アフガニスタン派遣
が実際に行われても、中国の非難は引き続き抑制が効いたものになると予想で
きます。
この機会を通じて、自衛隊が国際社会で一定の評価を得るような役割を担えば
中国およびアジアの各国が日本の自衛隊、ひいては日本の国際協力を見る目は
多少なりとも変わってくるでしょう。
日本はテロ事件の当事者であるという認識の他に、こういう視点からも自衛隊
を含む日本人の現地での救援、支援活動の成功を祈るばかりです。
中国に関わる日本人としては、普通の市民として出来る寄付などの他に、日本
が積極的な国際協力を行う場合に、中国から思わぬ誤解と非難を受けぬように
必要に応じて充分な説明とコミュニケーションを続けていくことが大切なのだ
ろうと思います。
参考資料:
北京青年報(同時多発テロ関連ニュース一覧)
→ 本件関連ニュースは数多くあるが、その多くは米国メディアの報道をその
まま伝えるもの。
http://world.ynet.com/emore.jsp?bid=2888&eid=208568
The Int'l Herald Tribune Oct.6,2001
"Beijing, wary of Muslim unrest, cracks down on Uighur minority"
→ 中国国内でウイグル族への警戒心が高まっていることをレポート。
http://www.iht.com/articles/34728.html
環球時報 2001年9月25日
→ 米軍支援に伴う自衛隊派遣への警戒を表明。
環球時報は人民日報社の国際ニュース専門紙。
http://www.people.com.cn/GB/guoji/209/6389/6395/20010928/571858.html
朝日新聞、人民日報 2001年10月8日
→ 小泉首相訪中に関する速報記事。
http://www.asahi.com/politics/update/1008/013.html
http://www.people.com.cn/GB/shizheng/16/20011008/576756.html
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