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┃ Chinese Puzzle ―世界から見た中国― :by FROMFAST007
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[Chinese Puzzle No.9 (中国の株式市場)] ――――――――― 2001/08/23
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<ポイント>

(1)改革開放政策の一環としての株式市場整備は大きく分けて二段階に区分
することが出来る。 その一つは株式の発行者たる企業に関する改革であり、
もう一つは投資家に関する改革である。

(2)これまで中国の株式市場整備の主眼はあくまで株式の発行者(企業)の
改革にあった。 具体的には会計制度の整備、透明性ある経営の要求、破産法
整備などがそれである。

(3)しかし、既に第1段階の改革は取り敢えず一定の成果を挙げ、続いて投
資家関連の改革に主眼が移りつつある。 具体的には居住者のB株売買開放や
投資信託、保険会社による株取引(予定)などが挙げられる。
違法取引に対する取り締まりも厳しくなっている。

(4)現在、日本では“安いモノづくり”の拠点として中国を捉えているが、
これは10年以上前から不変の事実。今後の中国経済との関わりを考える場合
は間接投資の対象候補としても株式市場に注目すべきである。

<本文>

近頃、セーフガード発動のせいか日本のメディアには、中国の低コスト生産の
実態が多く採り上げられるようになった気がします。
本メルマガでもご紹介したように、それは現在の中国経済を見るうえで、必ず
認識せねばならない本質的な部分なのですが、10年以上前から存在していた
“常識”であることも事実です。
低コスト生産が不変の事実であるとすれば、その一方で急速な変化が同時に起
こるところが中国経済の興味深いところです。
今回は、中国経済の"変化"を代表する株式市場を取り上げたいと思います。

(1)"サプライサイド"と"デマンドサイド"という視点

中国の株式市場に関する情報は、そのつもりになれば沢山有ります。
特に、銀行系シンクタンクは、ほぼ定期的に中国の株式市場の制度変更などを
レポートにしています。
しかし、こうした情報は非常に技術的なもので、株式市場の変化を大づかみに
理解することは意外と難しいものです。
それに対し、6月30日付の英エコノミスト誌では“サプライサイドの改革か
らデマンドサイドの改革”という非常に明快な切り口で中国の株式市場改革を
総括していました。
以下では、この視点を拝借しつつ、市場改革の経緯を出来るだけ簡単に紹介し
ます。

なお、ここでいう“サプライサイド”とは、株式を発行する企業や売買の場や
情報を提供する機関(証券取引所や証券会社)のこと、“デマンドサイド”と
は株式を売買する投資家を主に指します。

(2)第1段階としての“サプライサイド”の改革

株券を発行する企業が健全な経営を行ない、透明度の高い情報提供をすること
は株式発行における最低条件です。
社会主義国である中国でこうした最低条件を定着させることが株式市場成立の
第一歩であったことは言うまでもありません。

例えば会計制度を見てみると、計画経済時代は企業は当然国家のものですから
まず資本の概念がありません。資本主義国でいうことろの銀行もありませんで
したから、必要な資金は全て政府の補助金となります。
市場経済では帳簿の勉強をすれば、まず資本と負債の概念を学びますが、そも
そもそういった発想がないところが出発点だったわけです。

こうした違いは帳簿の形式だけではなく経営者の意識にも大きな影響を与える
だろうことは容易に想像がつきますから、会計制度を改革・開放政策に合わせ
て変えていく作業はまさに“言うは易く行うは難し”というべきものだったよ
うです。

1985年に制定された"中国会計法"が中国の会計改革の第一歩だったと考え
られますが、その後1992年に"企業会計準則"と"企業財務通則"という法規
が発表され、市場経済の原則に則った会計制度が公式に規定されました。

しかし、市場経済化半ばの中国では国有企業、集団企業、民間企業などが混在
しています。これに対応し、現在の中国では企業形態ごとに会計制度が定めら
れています。
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大別すると業種別会計制度、株式企業会計制度、外国投資企業会計制度。
詳しくは参考資料をご覧下さい。
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このうち、企業が株式上場することを前提としているのは、株式企業会計制度
のみであり、他の制度と比較すると相当広範な情報公開(例えばキャッシュフ
ロー計算書の要求)と、慎重な資産・負債評価(例えば棚卸資産等の低価法容
認)を要求しています。
実際には粉飾決算など様々な問題を抱えてはいますが、各種企業の形態に応じ
た会計制度の改革は中国の段階的な市場経済化を示すいい実例だと思います。

こうした改革は、もちろん会計制度に留まらず、企業の定義に関する公司法の
制定、改訂や破産法の整備を進めることにより、市場経済の"常識"を採り入れ
る試みが進められてきました。
株式市場と直接の関係はありませんが、朱総理が三大改革の一つに挙げていた
国有企業改革もこうした流れの中に位置付けられましょう。

企業そのものを市場経済の"常識"に合わせていく改革とともに、株式市場その
ものの改革も徐々に進められてきました。
現在中国(香港を除く)には上海(1990年設立)、深セン(1991年)
の二つの証券取引所がありますが、一般に公開される株式は、国内投資家用の
いわゆるA株と海外投資家用のB株に分かれています。

主な理由の一つは為替管理(A株は人民元建て、B株は外貨建て)であり、も
う一つは投資家保護の程度です。
B株の方がより手厚い投資家保護が為されており、比較的"無難な"企業が上場
しています。

このように中国経済及び企業の実態に合わせて株式を発行する企業や売買する
市場に制限を加えつつ徐々に市場経済の"常識"へ向かっていくというのが株式
市場改革の大きな流れであったと思います。

(3)"サプライサイド"から"デマンドサイド"の改革へ

ところが、最近こうした株式市場改革の流れに変化が生じています。
それは改革の主な対象を“サプライサイド”たる株式会社や株式市場ではなく
“デマンドサイド”たる投資家に移してきているということです。

例えば、今年二月末に外国投資家にのみ開放されていたB株の、国内投資家に
よる売買が認められました。これは外貨建て資産が着実に増えている中国の富
裕層の投資機会を拡大することとB株市場の活性化が狙いと言われています。

また、これまではごく限られたクローズエンド型という特殊な形態でしか認め
られなかった投資信託に関する規制が、かなり緩和されることは時間の問題と
言われています。
さらに、これまでは認められなかった保険会社や企業年金による株式運用も、
合法化されるだろうといわれており、こうした改革が着実に成果を上げていけ
ば、中国の株式市場の主体は現在とは全く違うものになる可能性があります。

こうした変化の背景には既に述べたように中国の富裕層が増加していることだ
けではなく、
 i) これまで個人投資家の比率が非常に高かったため、ギャンブル的要素が強
  かった相場により合理的な価格形成と安定を求める
ii) 今後海外からの政府間資金援助や企業の直接投資の大きな伸びが期待しに
  くいなか、新たな資金及び外貨の調達先を確保する
といった目的があるのだろうと考えられます。

現在、政府は従来以上に厳しく株の違法取引を取り締まっており、日米経済の
不調と相俟って今年八月の株価下落の大きな原因になっています。
これは今回の区別でいえば"サプライサイド"に当たるわけで"サプライサイド"
の改革や改善は今後も続くでしょうが、しかし"デマンドサイド"の改革の成否
が、中国の株式市場改革の仕上げの鍵を握っているといっても過言ではないで
しょう。

(4)今後の着目点としての株式市場

外国からそれなりの投資を集め、国内投資家の主要な投資先となるような健全
かつ大規模な株式市場の形成が成功するかどうかは、これまで見てきた改革、
とりわけ"デマンドサイド"の改革の成否にかかっており、現時点では誰にも判
断がつかないというのが正直なところだと思います。

しかし、現在の状況をみれば粉飾決算があったり、個人投資家による投機売買
が主流であったりと問題点が非常に大きいことから、日本の機関投資家はまだ
まだ中国株への投資には及び腰で、マスコミも日経金融などの専門紙を除けば
あまり大きな関心は寄せていないように思われます。

最近の中国で注目されているのは、専ら低コストの製造業や農業のようですが
マーケットというのは結局"他人と同じ事を他人より早く行なう"ことによって
利益を得られるものです。

従って、それなりに健全な投資が出来る環境になってから初めて重い腰を上げ
るようではエマージングマーケットで利益を上げることは難しいでしょう。
The Economist 誌を初めとする欧米メディアを見ると、こうした変化を察知し
真剣に観察しようという意図が強く感じられます。

現在投資先として具体的に検討するのは性急過ぎるとしても、将来の中国経済
の可能性と、そこから得られる果実をイメージするうえで、中国の株式市場は
定点観測する意義が非常に大きいと思います。

(おわり)

参考資料:
岡正生等   『中国の金融改革』 東洋経済新報社 1998年。
中央監査法人編『中国会計監査基準』中央経済社   2000年。

The Economist June 30,2001 "Fools in need of institutions"
→ 同誌の6月30日号は中国特集だったが、経済関連では専ら金融関連の
レポートが掲載された。本記事はそのうち株式市場に関するもの。
http://www.economist.com/displayStory.cfm?Story_ID=677672

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