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┃ Chinese Puzzle ―世界から見た中国― :by FROMFAST007
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[Chinese Puzzle No.1 (李登輝氏訪日について)] ――――― 2001/05/09
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さて今回は、北京のメディアで意外に大きく取り上げられている李登輝氏訪日
問題を見てみたいと思います。
この問題は、欧米のメディアでは殆ど取り上げられていないようで、中国でこ
の問題に対する報道が連日のようになされているのと対照的です。
なぜこの問題について中国はここまで執着しているのでしょうか。
(1)対中外交の目標
李登輝問題そのものに入る前に、まず対中外交について考えたいと思います。
小泉首相が所信表明演説で対中関係の重視を外交課題に挙げましたが、誰もが
知るとおり日中関係が何の問題もなく友好的に発展するはずはありません。
政治体制、歴史、経済摩擦など様々な点で両国の国益は食い違います。
もっとも、外国間で国益が一致しないことは当然であって、このこと自体は対
中外交独特の難しさとは言えないでしょう。
対中外交の難しさは、中国が政治大国でありながら国際常識とは異なる態度や
原則をもって行動する場合があることだと思います。
言い換えれば、中国政府にはどうしても「何を言い出すか分からない」という
潜在的な不安があることは否定できません。
一党独裁政府で、意思決定がブラックボックスの中で行われているのですから
日本人はおろか一般の中国人にも先が読めません。
そこで対中外交の目標には、通常の二国間関係と同様の国益調整だけではなく
中国が国際社会の信用できる一員へ自己変革することを手助けするという「第
二の目標」があってもいいのではないかと思います。
中国にもメンツがありますから、日本が中国の変革を手助けするという考えを
公式に発表することは難しいでしょう。
しかし、日本人としては中国あるいは中国人と接する際に心に留めておきたい
考えだと思います。
(2)対中外交の選択肢(北風と太陽)
北風と太陽のイソップ寓話は、韓国の金大中大統領の対北朝鮮政策でよく引き
合いに出されますが、日本の対中外交に関しても当てはまる考えだと思います
つまり、中国が国際社会の常識や慣習と反する考えを押し付けるような態度に
出た場合はハッキリとその問題を指摘し、場合によってはそれに対抗する態度
を取ることが「北風」。
一方、中国が国際社会への参加や対話を求めている場合には多少の弊害があっ
てもそれを支持するという考えが「太陽」です。
例えば、WTO加盟支持もそれに当るでしょうし、北京オリンピック開催もこ
の考えから私は支持しています。
この二つの態度を混合するような態度、例えばアメリカ議会が中国の人権問題
を理由にわざわざ北京オリンピック開催反対の決議をしたことなどは逆に中国
の国際化を後退させるので得策ではないと考えています。
「北風」の態度を要求される問題と「太陽」にて応じるべき問題をハッキリ区
別し、メリハリのついたメッセージを与えることが重要だというのが私の意見
です。
(3)中国の偏った台湾観には「北風」の態度を
台湾問題に戻ります。
中国の台湾観すなわち「台湾は中国の不可分な一地方」という見方は国際常識
に照らしてどう評価すべきでしょうか。
ここでは中国と国際社会の見方の違い(perception gap)に注目したいので詳細
な台湾の歴史には立ち入りませんが、台湾が中国の正式な領土だったのは清朝
時代のことです。
清朝末期すなわち19世紀末は植民地主義が未だ世界を席捲していた時代です
が、当時ヨーロッパの宗主国に属していた植民地は今やほぼ全てが独立国とな
りました。
現在でも、民族の独立運動や独立国家の誕生というような出来事が散見される
ことからも、世界は「統一」よりも「独立」「分裂」の方向に向かっていると
いうべきでしょう。
一方EUの統合という動きもありますが、これは参加国政府と国民の同意あっ
てのものです。
こうした流れから見ると、中国の「台湾は中国の不可分な一地方」という見方
は、少なくとも以下の点で国際社会の常識から外れていると思います。
すなわち、台湾自身の意見を尊重する態度がみられないことです。
例えば、もし台湾が独立を宣言したら、武力による解放も辞さないという態度
は、明らかに台湾住民の意見よりも共産党の威信を重視していることの表れで
しょう。
また、99年9月の台湾大地震で緊急救助隊の外国からの派遣に対して北京の
事前了解を求めたことも中国の台湾問題に関する過度な偏屈さを象徴していま
す。
住民が殆どいないような辺鄙な地域、あるいは香港のような旧植民地であれば
当事国間の交渉で完結することも考えられますが、台湾ほどの規模を持つ社会
であれば住民や台湾「政府」に相応の発言権が与えられるべきでしょう。
現在の中国政府の硬化した態度には、何が何でも台湾の独立を阻止するという
焦りばかりが感じられて、正直言って幼稚さが目立ちます。
ここで、日本としては中国の焦りと非常識をたしなめ、理性的な態度を取るこ
とを促すことが大事だと思います。
特に、台湾側の意向を理解するように努め、台湾側の理解も得られるような解
決案を考える建設的な態度を取らせることです。
そのための第一歩は、中国が非理性的な態度を取った場合にも安易に同調する
ことなく、その非理性的な態度を暗黙のうちに自覚させることではないかと思
います。
李登輝問題は、以上のような文脈から考えてみたいと思います。
(心臓手術といった事情や、人道問題への配慮という点は、日本政府の立場上
は強調せざるを得ません。 しかし、ここでは李氏の訪日の背景には日本人と
日本政府の政治的な支持がある程度はあったことを前提に話を進めます。)
李氏にビザを発給するか否かという問題は、中国の非常識な態度を黙認するか
或は暗黙のうちにたしなめるかという問題に言い換えることが出来ると思うの
です。
そう考えれば、行き着くべき結論は言うまでもなくビザ発給です。
幸い中国と日本及び世界の経済関係を基盤とした関係強化はこの程度の摩擦で
は影響を受けようがありませんから、日中関係悪化のデメリットよりは中国と
台湾へのアナウンス効果の方が遥かに大きいことは間違いありません。
(4)肝要なのは日中の論点のずれを意識すること
中国と台湾へのアナウンス効果と書きましたが、何をメッセージとしてアナウ
ンスするのかという点が重要です。
というのは、北京のメディアを見ると今回の李氏訪日の真の目的は台湾独立に
あり日本もその目的に一役買おうとしているという見方が支配的です。
言うまでもなく、この見方は明らかに誤解です。
まず、李氏は台湾独立論者ではないということ。
このことは、李登輝自身の著書である「台湾の主張」を読めば明らかです。
李氏が望んでいるのは中国大陸の社会が民主化と経済発展を通じて台湾社会と
のある程度の同質化を果たしたうえで統一することです。
台湾独立も一つの選択肢程度には考えているのでしょうが、それをもって台湾
独立論者というのは明らかに決め付けです。
日本に至っては、極端なことを言ってしまえば台湾が独立しようとしまいと、
それは他所のことであってどちらでもいいことです。
(中国の脅威や共産主義から東アジアを守るという地政学的な見方もあるかも
しれませんが、もしも中台統一が実現したとしてもそれはあくまで「一国二制
度」的に現在の台湾社会の現状を温存したものになるでしょうから台湾独立と
はまた異なる次元の話です。)
ただ、李氏が実現した台湾の民主化に対しては共感と親近感を持つのが日本人
の自然な感情でしょう。
以前は非常に抑圧的な警察社会だった台湾の変化が好ましいものであることは
間違いなく、この変化にはしっかりと支持のメッセージを発したいものです。
ここで論点のずれが出てきました。
すなわち中国はあくまで台湾独立論者としての李氏を非難しており、日本人は
台湾の民主化を実現した李氏を(陰ながら)支持しているという構図です。
両者は一見似ているものの次元が違う問題です。
日本は、もし台湾の元総統が残忍な抑圧者であったら台湾独立論者であっても
絶対に好意的に見ることはできないと思います。
一方、もし(実際には当分あり得ないことですが)中国共産党が現在の台湾並
みの自由な社会を大陸に実現すれば、日本は相当好意的に大陸を見るようにな
るでしょうし、台湾独立すべしという意見は少なくとも少数派に止まったまま
でしょう。
こうした論点のずれを意識し、時には必要に応じてあらぬ誤解を解いたたうえ
で、「北風」と「太陽」の態度をメリハリを効かせて貫くことが対中外交には
重要だと思います。
そして、このことは外交官の間ではなく、むしろ本音をぶつけあうことが出来
る我々民間人が中国人との交流のなかで意識していくことが何より大切だと思
います。
このような議論は、勿論中国のマスメディアで発表すれば大変なことになりま
すが口頭で議論している分には北京でもほぼ自由です。
自分なりの軸をしっかり持って、中国人と本音の議論をぶつけていきたいもの
です。
参考資料:
李登輝「台湾の主張」1999年、PHP
AERA 2001.4.30-5.7号 p.22
北京青年報(中国語)4月22日号
http://www.bjyouth.com.cn/Bqb/20010422/GB/4591^D0422B0607.htm
南方週末(中国語)5月7日号
http://www.southcn.com/news_ga/200105070054.htm
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