我が人生三分の二故事
☆ オタク市場に目を向けたらどう? ―――――――― 2008/11/08
                         by 老玩童 OJIN

以前から時々事務所に遊びに来て、マシンやゲームのIC基板の修理現場を眺
めてウロウロしていた、H君というゲームオタク(?)の中学生がおりました。

なにしろそのオタクぶりは、----父親も母親も仕事をしていて、しかもかなり
上位の役職らしく収入も多い、ただどちらも単身赴任?でヨソにいて----自宅
にはH君だけが住んでいるという状況だったようですが、

その自宅に、二十万円近いピンボールゲーム機を、しかも2台も買い込んで、
自分だけで遊ぶーーーというぐらいのものでした。(現金で払ってくれました)

その彼もこの当時はもう高校を卒業して社会人。大学なんてバカのいくところ
なんかいっても仕方がない、、とうそぶいて大学には進んでいませんでした。

ーーーたしかに彼は、ある意味の天才でした。

例によってフラリとやって来たある日、

「社長、今はアミューズメント業者だけを相手にして商売してるけど、ゲーム
オタクっていうか、自分のマシンを持って、自分の家で自分だけで遊びたいと
考えてる奴らがたくさんいるんだよ。これからはそういう市場を狙ったほうが
ずっと大きな商売に繋がっていくよ」

----その後に始まったファミコンブームを先取りするような提案をしました。

「業者向けだけでも忙しいし、そんなオタク向けということになると販売シス
テムも別に構築しなきゃならないし、オレはとてもアタマが回らんよ」

「じゃーオレが毎日来てそのシステムから何から全部立ち上げてやるよ」

「それは有難いけど、ウチもそんなに裕福じゃないから、海のものとも山のも
のとも分からん段階で、君の給料なんてお小遣い程度しかあげられないよ」

「給料なんかいらないよ。儲かるようになったらそれなりにちょうだいよ」

それまでずっと考えていたのでしょう、たちまちのうちに彼はシステムと宣伝
コピーを作り上げました。そして、それまでは知らなかったのですが、そうい
うオタク連中が見ているという専門誌に広告を出したら、

いや、来た!来た!来た!来た!

その頃、テーブル型TVゲーム機は、ブラウン管サイズがそれまで14インチ
だったものが18インチに替っていく時期にあたり、14インチテーブル型の
中古はアミューズメント業者には見向きもされず、文字どおり倉庫に山積みに
なっていました。

それが、希望するゲームIC基板を組み込んで、毎日毎日羽が生えて飛んでい
く〜〜〜、いやもう驚きました。

テーブル型だけではありませんでした。アップライト型という、高さが2m程
で幅と奥行1mという大きなゲーム機まで希望する者まで出てきた!ーーーこ
んなもの、家の中に置く場所があるのかな??

極めつけは、体感ゲームといって、プレーヤーが機械の中に入って、プレー中
はゲーム筐体全体がゲームの進行に合わせて前後左右に動く、という大型機械
の注文まであったことでした。

なにしろ縦横高さとも2m以上、重さも百何十キロもあるシロモノです。あな
た承知して注文してるんですか?これこれこういう大型機械なんですよ。値段
だって26万円もするんですよ。――ええ、勿論よく分かっています。注文を
受けてもらえたら代金は直ぐに振り込みします。

いくらゲームオタクとはいえ‥‥世の中には凄い奴がいるものでございます。

けれど、買ってもらうのはいいけれど、これをどうやって配達するんだい??

ぎりぎりアップライト型までは、ある宅配業者が全国どこでも配達を請け負っ
てくれていましたが、しかし、ここまで大きくて重いと不可能。積み下ろしす
るのにも重量物用の装備のあるトラックじゃないと無理だ・・・・

結局、注文主が東京と遠くなかったので、特別運賃をもらって会社のトラック
で届けてあげました。ーーー届けに行って帰ってきた社員に、どんな家だった
んだい?と聞きましたら、1戸建てのかなり大きな家で、機械は車庫に設置し
てきたとのことでした。

そういうビックリするようなものも売れましたが、どこの業者も事務所の隅に
放り出してある、メーカーが新しいゲームを売り出すと、そのゲームに関する
ポスターやポップアップを付属品としてつけてよこす、そんなものまで売れて
いきました。(小額ながらこれは原価も手間もゼロ、丸儲け!)

さらに、

「社長、このやり方だけでは、家の中に置けるスペースがない奴は手が出せな
いし、テーブル型のゲーム機が突然届いたら両親だってビックリして怒られる
からと手が出せない奴もゴマンといるよ。オリジナルの、もっとコンパクトな
やつを製造して売り出したほうがいいよ」

----早い話が「業務用ゲーム基板のファミコン」を作ろうということです。

売れ行きの確かさは分かりましたし、14インチのテーブル型ゲーム機の供給
が間に合わなくもなり始めていましたので、それで..どんな感じに作るんだ?

今のデスクトップパソコンのキーボードの、奥行と厚さを3倍ぐらいにしたも
ので、ジョイスティック=操作レバーと押しボタンスイッチが付いたもの。

またまた雑誌に広告を出して、

またまた来た!・・・って、オバケじゃないですが、A4の大学ノートにその
名簿を整理したら、6〜7冊にもなるほどでした。

その頃の資料がたまたま残っていたのでご覧下さい。これは、雑誌の広告を見
て資料請求してきた相手に送った資料です。オタクの方々にはかなり興味のあ
る資料だと思いますので、棄ててしまうのは惜しいと掲載してみました。

〜〜その頃はパソコンなんて影も形もない頃ですから、この資料は、文字部分
はワープロで作り、画像は雑誌などから切り抜いて張り合わせて作りました。

表紙1頁2頁3頁4頁5頁6頁7頁8頁9頁10頁1
1頁12頁13頁14頁15頁16頁17頁18頁19頁20頁21頁22頁23頁24頁25頁26頁27頁28頁29頁30頁裏表紙。

こうして大発展大成功!に結びついていくはずだったのですが‥‥遅かった!
皆さんもよくご存知の、任天堂のファミコン旋風!

・・・簡便さの差異、ソフト価格の差異・・・・

ーーー対抗できず駆逐される運命の荒波に飲み込まれてしまったのでした‥‥

余談になりますが、

このH君がある日、

「社長、遊びでこんなの作ってみたんだけど、やってみる気ない?」

と、ニヤニヤしながら或るプランを提案してきました。

それは、パチスロのソフトに、ある細工をして出す絞るを自在にコントロール
できる装置!?ーーーん〜?こりゃ儲かりそうだな〜、なにしろ1台分の値段
を2万円としても(原価なんて何百円‥)、パチスロはパチンコ屋1店に何十台
もある。ということは1店注文をもらえば百万円以上!ーーー全国にパチンコ
屋は何軒あるんだい?

「社長、アタマ悪いな〜〜、これがあればパチンコ屋はいくら儲けられるの?
あいつらもっと高くたって買うよ」

「それにね、これには実は..「ある手順の操作」を仕込むことも可能だから..
この装置を取り付けた店が分かっていれば、その手順の操作をすればいくらで
も出すことも可能なんだよ..つまり..1店で50万抜いて、一日10店ぐらい
回るのなんてお茶の子さいさいなんだよ〜〜」

・・・悪魔の想法・・・

----しかし実際の効果は本当に大丈夫なのか?ーーーパチスロ機を買い込んで
その装置を取り付けて試し打ちしてみると、おお!設定どおりの波になるぞ!

ただこの装置は、装置というぐらいで、それまでの裏ロムという、調べられた
ら直ぐにバレてしまう単純なやり方ではなく、パチスロの、誰も考えないよう
な、ある部分に取り付ける作業をしなければならない・・・でもまあ、そのほ
うが有難味があるかなーーー。

で、今までのパチンコ業界とのツテを通じて、ではやってもらおうという第1
号店は信州諏訪の某パチンコ店。ーーー閉店時間が過ぎて、従業員が帰って、
さて作業開始!ーーーこんなものが付けられるなんて、知っているのは社長と
店長だけ・・・翌日の開店までには作業を終らせなければなりません。

そして、

ーーーパチンコ業界も実は狭い世界なんです。その店の実績を伝え聞いた別の
店からも注文が殺到!ーーーは、したんですが、

パチンコ屋が伝え聞いたということは、今まで裏ロムで飯を食っていた連中の
耳にも当然伝え聞えていくわけで、パチンコ屋のオヤジのほうもそんな連中に

「お前んとこで、もっと安くできないのか?」

こちらは半分遊びでやったことですから、特にコピー防止のセキュリティをか
けていませんでしたので、間もなく、全国的にコピー品の嵐、裏世界の全国的
な大ブームにはなりましたが、ーーー大元にはスズメの涙、、あはははは‥‥

しかし、

ーーー全国に蔓延したこのコピー品、元のソフトは同じものですから、H君と
その仲間(?)たちが、「ある操作手順」を使っていくら稼いだのか、或いはや
らなかったのか・・・それは分かりませんけれど・・・

天才H君の本当の目的が・・・コピーされることなんかどうでもよくて、全国
のパチンコ屋にあの装置が蔓延すること・・・どこの店に行っても「ある操作
手順」でお金を生み出すことができて、数ヶ月間で何億円かを稼ぎ出す・・・

・・・或いは自分の手を汚さずに、一人に百万で、いや、1千万でも買う奴は
いくらでもいたでしょうーーー。そんな奴が20人もいれば・・・・

ーーーそれが本当の目的だったのではないか..と..今更に疑念が消えません。

                           = つづく =
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 
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