我が人生三分の二故事
☆ 儲け損なったポールポジション ――――――――― 2008/02/10
                         by 老玩童 OJIN

パックマンの後も、各社から様々なTVゲームが発売されましたが、当たり前
のことで、そうそうヒット作が続くわけもなく、テーブル型ブレイクアウト→
(以下全てテーブル型)→スペースインベーダー→ギャラクシアン→パックマン

・・・その次のヒット作がでません・・・

しかし、一度美味しい思いを味わった設置先喫茶店は、ヒットがないからとい
って諦めてはくれません。新機種が出たと聞けばそれを入れてくれ、オタクが
入れないんだったら別の業者に入れてもらうから、オタクの機械は引上げてく
れ――――。

パックマンのときから、ようやくPCB=ゲームソフト)と筐体=TVゲーム
機の本体)が別々に販売される風潮が現われだしましたが、しかしまだまだ、
新製品は先ず一体型で販売して、ある程度出回ったところでPCBだけでも売
りますという販売スタイルでしたから、ビッグヒット機でない限り、そうそう
喫茶店側の希望ばかり聞いていたのではこちらが資金ショートに陥ってしまい
ます。

それに喫茶店側も、店内のテーブルの大半をゲーム機にしてしまうところも結
構ありましたが、それではうるさくて落ち着ける喫茶店として来てくれている
お客さんを逃がしてしまうということで、1〜2台だけをゲームテーブルにし
て、という店が結構多く、

そしてそういう店のほうが台当りの売上が良く、それだけに頻繁に入れ替えを
したいところではあるんですが、全部の要求に応じていたらこちらがパンクし
てしまう・・・どうしたものか・・・

その頃、インベーダーの、デッドコピーではないマガイ物インベーダーを作っ
ていたデータイーストという会社が、筐体売りながら、PCBの一部分を交換
することによって別のゲームに変わる、というシステムのテーブル型ゲーム機
を売り出しました。----ファミコンの超原始的なもの、という感じです。

これは画期的!最初に筐体ごと購入すれば、以後はそのPCBの一部だけ=新
しいゲームソフト)を安い値段で買えて新しいゲームに替えることができる!

・・・んですが、そういうメリットがあるということで、最初に買うときの最
初のソフト付本体の値段がなにしろ高い!それと、その以後に交換できる新し
いゲームソフトは、当たり前データイースト社のものだけで、人気のある無し
の保証なんてなんにもない・・・さらに、これにしたところで1台の本体には
1種類のゲームだけ・・・・

そんなふうに悩んでいたある日、営業で回っていたI君が「社長、1台の本体
に、何種類かのゲームPCBを組み込んで、お客さんが自分で切り換えて好き
なゲームで遊べる、そんなのはできないんですか?」と質問してきました。

1台の本体に何種類かのゲームPCB、か・・・PCBを収納するスペースは
あるから・・・トライしてみる価値はありそうだな・・・

現在でならそれほど珍しくも目新しくもないと感じられるでしょうが、なにし
ろまだテレビゲームが始まってそれほど経たない頃のこと、試行錯誤しながら
それでもなんとか2イン1タイプ、3イン1タイプ、4イン1タイプ、と試作
機を完成させて喫茶店に設置してみると、

ある程度以上人気のあったゲームが1台で切り換えて遊べるということで結構
喜ばれて、普通の1台1種類のものよりは遥かにいい成績を上げることができ
ました。

このシステムはしかし、この後、案外流行るようになるんじゃないだろうか?
ダメモトで実用新案でも申請しておいたほうがいいんじゃないだろうか・・・

さてしかし、

実用新案という言葉は知っていましたが、しからばそれをどうやって申請する
の?「自分でできる特許や実用新案」という本を買ってきて眺めてみましたが
やっぱりよく分からん??ーーー電話帳で弁理士さんを調べて来てもらって、

実物を見せて、「どうでしょうか?いけると思いますか?」「なんとかなるん
じゃないかな‥‥こっちも商売ですから頑張ってみますよ」申請書類を作成し
て特許庁へ送って、、しばらくすると弁理士さんから「広報に載りましたよ!
実用新案が認められましたよ!」

さあ権利が確定したぞい!ーーーそれからは、後追いで同じような機械を手掛
け始めた業者に連絡して「こういうシステムは、この度ウチが実用新案を取得
しましたので、お使いになられるのでしたら1台あたり幾らのロイヤリティを
お支払い下さい」

これでけっこう儲かったと思いますでしょう?

ところが、こういうことをやるのは大メーカーではなく小さな業者ばかりでし
たから、それならウチは止めます、やりません、と言っておきながらコッソリ
とやる・・・日本全国津々浦々なんて監視できませんから、結局僅かの業者が
スズメの涙程度を支払ってくれただけでした。

でもこの実用新案権は、後になってナムコが買い取ってくれました。百何十万
円だったと思いましたけれど、もう忘れてしまいました――――。

1982年、

ナムコがポールポジションというコックピット型=筐体の中に人が座ったりし
てプレイする大型機)ドライブシュミレーションゲームを発売しました。やは
りパックマンのときと同じように全国主要業者だけの内覧会が催されて、

他の業者の反応は、パックマンのときと同じようにあまり芳しいものではあり
ませんでしたが、実際にゲームをやってみて、わたしはバシッ!と強い閃きを
感じました。これは間違いなく大人気!大ヒット確実!

よーし、大船をはじめ、これを入れられるロケーションには大量投入しよう!
いや、一時的にはゲーム場のゲーム機全部をこれにして、ブーム初期の荒稼ぎ
をして、それからでも十分羽が生えたように再販売は可能だ!内覧会会場で、

えーと、例えば大船の場合なら1日2万円の売上は硬いだろうから、

×30台=60万/日×3ヶ月=5400万×50%(分配比率)=2700万
の収入で、購入価格2496万を引いても、その段階で204万の儲け。

3ヶ月でモトをとって、そこで再販しても、最高で定価128万、最低でも7
掛けの約90万ではさばける。そこで、半分の15台を平均100万で売れば
1500万の利益の上積み・・・他のロケーションだってもう少し売上は下だ
ろうけれどそれほど変わらない数字を上げられる・・・・

よし、100台注文しよう!1台が128万円、大卸価格なら全部で約1億。

ところが、

「あなたはいつも突っ走って、大成功もしてるけど大怪我もしてるんだから、
これがもし当らなかったらまた大怪我することになるからそんなに注文しちゃ
ダメ!」ーーー売ってるやつが自社製品に、そんな自信のないこと言っていい
のかよ〜〜〜

与信枠を越えてしまうからとかいろいろ宥[なだ]められましたが、おい!これ
までに人気のない機種を売りつけるときにはなんて言った?「与信枠なんての
は一応の目安ですから」とか、言ってたんじゃないのかい!

ーーーまあ、パックマンのときには‥‥‥こっちも(T社との)スネに傷がある
し‥‥‥スベッタコロンダ交渉しましたが、ーーー結局は30台だけ。

それでも他の業者に比べれば段違いに多い数でしたけれど・・・こんな数では
あちこちに僅かずつ配置するしかないな・・・とほほほ。

さて、現物が送られてきて、各現場に設置したら、思った通り!どころではな
い..1日3万4万、多い日などは5万近くまでの売上----これ以上は物理的に
無理なんです。お客さんが途切れないで1日中つきっ放しで開店から閉店まで
稼動しての1台の最高売上が約5万円なんです。

チキショーめ〜!オレが予想した以上じゃないか!

そういう数字が出てみれば、もちろん他の業者のところも同じですから、また
例によって各業者による奪い合い・・・あーーあ、また何億か儲け損ねちゃっ
た・・・・

勘と閃きで勝負するタイプでしたから、こういうときに思い切り仕入れて儲け
ないと・・・メーカーさんは、いつもいつもヒット作を出すことなんてできま
せんから、駄作の時は「オネガイシマスお願いします」と押し付けてきますか
ら、たちまち資金バランスが崩れてしまうことになります。

押し付けるときは「与信枠なんて一応の目安ですから〜」、人気商品が出ると
「だって与信枠がオーバーしちゃいますよ」・・・そりゃ商売ですから、どこ
の業界でも似たようなものなのかもしれませんけど、まーー、そういう苦労が
ないんだったら、みんなサラリーマンやめて商売やるわな〜〜〜

                           = つづく =
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 
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