我が人生三分の二故事
☆ パックマン狂騒曲 ――――――――――――――― 2008/02/01
                         by 老玩童 OJIN

スペースインベーダーの狂騒が1年以上も続いて、
そして1979年、インベーダー人気に少し翳りがみえはじめた頃、ナムコが
「ギャラクシアン」を発表しました!ギャラクシアンは、インベーダーの立体
型(?)とでもいうべきものでしたが、これがまた並以上のヒット!

で、ナムコ製品ならば、インベーダーのF氏とは逆の立場になった!(^○^)

――― そして1980年、またまたナムコがビッグヒット!

ある日電話がかかってきて、「何日後に、新製品の内覧会をウチの本社でやり
ます。有力業者さんだけの内覧会ですから、是非ご出席ください」

当日出向いてみると、全国から集まった錚々たる顔ぶれが揃っていました。

で、どんな新製品なの?ーーー会場に並べられていたのは「パックマン」

それまで続いた「スペースインベーダー」「ギャラクシアン」のような派手さ
のない、地味な印象のゲーム・・・販売側のナムコの人間も、全国から集まっ
た錚々たる顔ぶれの業者も「どうかな〜〜」という感じで、、こりゃイケル!
という声はどこからも聞こえてきません・・・・

さて、どうかな〜〜??

決め兼ねましたが、ともかく義理でも見栄でも、ある程度の数は注文しなけれ
ばなりません。ーーー何日かして、サンプルの製品が送られてきて、、1階の
工場でみんなワイワイと遊んでいましたが、9時が10時を過ぎると、さすが
に宵っ張りの連中も「お疲れさまでした〜〜」と帰っていくのに、

??S君がサンプルの「パックマン」にしがみついて離れない??

「S君、俺も眠たいからもう上がるよ〜、ちゃんと鍵かけて帰ってよ〜〜」

次の朝、

2階から下に下りてみると、工場のほうから「パクパクパクパク〜♪」という
「パックマン」のゲームBGMが聞えてくる?? 覗いてみるとS君がまだし
がみついて遊んでいる!?ではありませんか。

「S君、徹夜でやってたの〜!?」
「社長、これ面白いですよ。たくさん入れましょうよ!」
「そう?なんか地味っぽくて、オレにはいまいちピンとこないんだけどな〜」
「そんなことないですよ、絶対いけますよ!」
「う〜〜ん、そうかな〜〜」

他の業者もいまいちピンとこなかったようで、発売前の予約はみんなそれほど
たいした数を入れなかったようで、それでもウチはS君の徹夜かじりつきの件
もありましたから他の業者より多かったようで、ナムコの担当者まで「こんな
に注文入れて大丈夫ですか?」

製品が出来上がってきて各ロケーションに1台ずつ設置して、、出だしはまあ
まあながらそれほど凄いという売上でもなく、

「S君よ〜、やっぱり君の予測は外れみたいだぜ〜」
「おかしいな〜、ほんとに面白いんですけどね〜」

ところが、

ゲームというのは普通、最初にワッ!と売上が上がって、日が経つにしたがっ
て下降線を辿っていくものなんですが、このパックマンは最初パッとしなかっ
たのに、ジリジリジリジリと売上がアップしていって・・・1ヶ月もしたらも
う、順番待ちで行列になる状態。

さあ大変!

その頃には各業者とも同じ状況になっていたので、ナムコには注文殺到!フル
生産したって半年や1年はかかるんじゃないか?という騒動になってしまいま
した。ついこの間までは、どこもかしこも「ピューンドーン!ピューンドーン
!」というインバーダーやギャラクシアンのゲーム音で溢れていたのが、今度
はどこもかしこも「パクパクパクパク〜♪」のパックマン一色。

そんな狂騒曲のなかでも、ウチは、ナムコの担当者が「こんなに注文入れて大
丈夫ですか?」と心配したほど他業者より多く注文を入れた実績がものをいっ
て、ヨソよりはたくさんの割り当てをもらうことができましたけれど、なにし
ろ神奈川県全域にビッシリとロケーション網を張り巡らせていましたから、い
くら来ても焼け石に水。

それでもほとんど毎日、少しでも割り当てを多くしてもらいましょうと日参し
て----社長の仕事は、いかにメーカーからたくさん分捕ってこれるか----ドタ
バタしていたある日、

関西の某社がPCBのコピーに成功した!ーーーという話が飛び込んできまし
た。スペースインベーダーのときも、全く同じデッドコピーから、かなりかけ
離れた模造品まで氾濫して、そのお陰でウチもだいぶ恩恵を蒙ってきていたわ
けですが、さて、

コピー品や模倣品とはいっても、インベーダーのときのセガの「ブタ殺し」や
ユニバーサルの「床掃除」みたいなこともあるから、うっかり手を出すわけに
はいかない・・・それにウチは、なんといってもナムコ系ではトップクラスの
ディストリビューター=大卸問屋)として全国に聞こえた会社・・・う〜〜む
どうしたものか・・・・

手を回して密かにサンプルを入手してみると、「全く同じ!」

しかしナムコに対する信義則がなあ・・・しかし各店からの要求もキツイしな
あ・・・と、悩んでいたところ、今度は横浜のT社もコピーに成功した!とい
う早耳情報が飛び込んできました!

信義則も大事だけど、関西のコピー品が出回りだして、ロケーション担当者は
食い込まれそうです!なんとかしてください!と悲鳴をあげているし・・・取
引はありませんでしたが、また札束を懐にねじ込んでT社を訪ねてみました。

名刺を出すと、ナムコのトップディストリビューターということを知っていた
ようで、ギョッ!と目をむいたのも一瞬、

「で、ご用件は・・・」

抱えてきた札束を黙ってテーブルの上に積み上げて、

「今日、(PCBを)何枚いただいて帰れますか?」
「い、いや、何を仰ってるのかちょっと意味が‥」

「わたしはナムコの代理人で来たんじゃありませんよ。神奈川最大のオペレー
ター屋の親父として来てるんです。わたしのやり方は、前のインベーダーの時
の藤沢の**や綾瀬の*****との付き合いなど、あなたも知らないわけで
はないでしょう? 商売ですよこれは、今日は何枚いただいて帰れますか?」

「わかりました・・・ちょっとお待ちください」

出来上がったばかりのパックマンのコピー基盤が運び込まれてきて、、計算し
て、「領収書はいりますか?」
「いりません。お互いにそんなものないほうがいいでしょう。ところで次はい
つお伺いすればいいでしょうか?」

「いやいや噂どおりのお方ですわ、、では3日後に」

当時のゲーム業界の鬼っ子、必要悪としてのコピー品――――。

その後も何社もからコピーは出ましたが、製造量ではこの横浜のT社がダント
ツ・・・ナムコは必死になってコピー撲滅の手をあれこれ打ち出してきて、そ
のひとつが「コンピュータープログラムは著作物であり、コピーは著作権侵害
にあたる」として裁判所へ提訴。

それまではそういう概念が確立しておらず、アメリカの会社相手ではさすがに
ライセンス契約をしていましたが、国内ではメーカー同士でも似たような模造
品を作って涼しい顔――――。

しかし「パックマン」ブームも翳りはじめた頃に、ようやく「コンピューター
プログラムは著作物である」という判決が出て、パックマンのコピー基盤製造
業者は、軒並み損害賠償請求攻撃の矢面に立たされることになりました。

初めのうちこそ現金札束で取引していましたが、取引が深まるにつれ、パック
マンばかりでなく他の人気ゲームも(コピーの準備で)研究しているので、金が
かかって資金繰りが楽ではないので、手形でいいから、先の見込み出荷分まで
手形を入れておいて欲しい。T社からそう頼まれて、かなりの額面の手形を先
渡ししていました。

そんなところに損害賠償。ーーーこりゃヤバイんじゃないのかーーー

最悪の場合はどうしようか・・・と思いをめぐらせていたある日の夕方、親密
になって飯を食ったり飲みに行ったりして遊んでいたT社の製造部門の責任者
から電話、

「ウチ、今日不渡りが出ちゃって、納入業者が押しかけてくるようだからヨソ
より早く来て運べるものを運んだほうがいいよ!」

ナムサン!遂にきたか!

会社で一番大きい4トンロングのトラックに飛び乗って、薄暗くなりかかった
湘南国道をぶっ飛ばす。T社に着いてみると、まだ来ている取引先はないよう
で森閑と静まりかえった工場の、裏手に回ると製造部門責任者が「こっち!」

在庫置き場に置かれていたゲーム筐体や、完成未完成に関係なくゲーム基盤を
トラックの荷台に積み上げていると、遅かった!!

「あんたたち何してるんだ!その荷物をどうしようっていうんだ!」

ーーー納入業者か金融業者の最初の到着者?が寄ってきました。

「今日受け取る予定の品物を引き取ってるんだけど、あなたは誰ですか?」

「い、いや、わたしは部品を納めている者なんですが、今日ここが不渡りを出
したって聞いたんで心配で来てみたんだけど・・・」

「不渡り?わたしたちは聞いてませんね〜。いつもと同じ商品の引き取りです
よ。こうやって製造部門責任者も立ち会ってくれてますし、納品書も作ってま
すよ。このトラックの胴っ腹にはウチの名前も電話番号もデカデカ書いてある
んですから、ご不審なら問い合せてくださいよ」

そんなことを話している間にも、社員は積み込み作業の手を休めずトラックの
荷台はほぼイッパイ・・・ロープをかけていると、次の、その次の納入業者た
ちも駆けつけてきて、そのうちの金融業者らしいコワモテが、

「今は混乱してますから、引き取りは明日にしていただけませんか」

「T社の人間じゃないあんたに、そんな指図を受ける謂れはないでしょう!あ
んた、どういう資格でウチの取引に口を出すんですか!」

こういう修羅場では気合勝ちしたほうの勝ち。ロープもかけ終わっていたので
座席に飛び乗って「出せ!」ーーー脱出には成功しましたが、しかしこのとき
に持ち出した商品では、先渡ししてあった手形の額面金額には遠く及ばず‥‥

次の日、T社の社長に会おうと探しましたが行方知れず、、さらに次の日、ど
うやら最大の金主の下に居るらしいことが分かりました。高利金融で有名な、
裏のスジとも関係の深いアイツかいな‥‥‥

もう仕事にもならんし、会社にいても債権者から責められるだけ、と、T社の
製造部門責任者のM君も小田原に避難してきていましたから、

「なんとか社長に連絡する方法はないかな〜?」

「そうね〜、ここの手形もどうせアイツのとこにいってるんだろうから‥‥今
更社長と話してもどうにもならんだろうから、このさいアイツと話したほうが
早いんじゃないの〜」

「それもそうだな。M君アイツと顔見知りでしょ、連絡して会う段取りをつけ
てよ」

高利金融屋の事務所へ出向いて、T社の社長が憔悴し切った様子で同席して、

「申しわけないッ!」

「あなたも頑張ったんですから、こうなっちまったものは仕方ないですよ」
「ところで高利金融屋さん、ウチの手形はあんたのところなんでしょ?」

「そうですよ。いくらで引き取ります?」
「全部アンタのところにあるの?」

「T社の帳簿からすると全部あるよ。ヅラの8掛けでどう?」
「あなた、T社で腹いっぱい儲かってるでしょ。あんまり欲をかいて、わたし
が不渡りにしたら1銭にもならなくなりますよ」

「あんただって、不渡りの出た日に、あんな大きなトラックにイッパイの商品
を持ち出してるじゃないか。泣いてる小さな納入業者に対して寝覚めが悪いん
じゃないの」
「あんなもの1割にもなんねーよ。ウチも資金繰りは楽じゃないのよ、ほんと
に不渡りになるかもよ」

「おや?苦しいんだったらいつでも相談してくださいよ」
「あんたに相談したら1ヶ月で倒産でしょ。で、何掛け?」

「現金で揃えるの?それとも差し替えの手形?」
「両方の条件を聞かせてよ」

「現金なら6掛け、差し替え手形なら8掛け」
「現金なら4掛け、差し替え手形なら6掛け」

「じゃー中とっていこうよ、んで、いつ?」
「現金で揃えるから10日後!」

ーーー数千万円を死に物狂いで揃えて・・・・

                           = つづく =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 感想を頂きました。 ┗━┛
┌──────────「インチキ・コピー・マシンさん」40代@男性 南海レジャーさん、よく知っておりました。当時の記憶が彷彿と湧き上がって きました。天王寺動物園近くの店舗や、コピーゲーム機倉庫などによくお邪魔 してました。 人気ゲームが出るや、札束で初号機を買い付け、(大阪)日本橋にある、表向き パソコンショップの某社にて解析と設計をしており、その会社へもよく遊びに いきました。 パックマン、ラリーX、ディグダグ、ギャラクシアン、ディープスキャンなど のカスタムICの解析とコピーで名をはせ、後に上場会社を立ち上げた名物社 長ともお付き合いさせていただきました。 「パソコン工房」の大野社長も、30年近く前のこととはなりましたが、名物 社長の友人として一時期滞在されており、後の快進撃の構想などお聞きした覚 えがありますが、内容は忘れました。 よく、新世界のファミレスで食事をおごっていただきました。 とにかく、なにもかも懐かしい(沖田艦長のノリ)思いが沸き起こりました。
└────────── ┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
現在40代ということは、当時は20歳そこそこですか? いやいや、もっと 若かったでしょうか。続きを書きかけているんですが、この頃からほんとの波 乱万丈になりまして、どれが先やら後やらゴチャゴチャで記憶混濁、、、。 なんとか整理して続きをアップしていきたいと思います〜〜♪ └────────── ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
我が人生三分の二故事に戻ります







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