我が人生三分の二故事
☆ 高校卒業、そして上京 ――――――――――――― 2008/01/07
                         by 老玩童 OJIN

高校時代は、農作業の手伝いと、勉強と、恵美ちゃんとの淡い交際と、バス停
の傍のオバチャンとこのラーメンと、他にロクな思い出もなく過ぎていって、

ーーー卒業の刻がやってきました。

卒業アルバムに載せるからと、クラスのみんなで大きな紙に寄せ書きをしまし
た。「九十九回敗れても最後の一回に勝つ!」な〜んてアホウなことを書いて
ふと見ると「努力なしに実ることなし えみこ」――――。(-ε- )

それまでに、朝日新聞の早稲田専売店で東京生活を始めることに決めていまし
たから、卒業式もそこそこに上京の準備にかかりました。

みなさんは「外地」「内地」という言葉をご存知でしょうか?

本州・四国・九州は「内地」。北海道や沖縄は「外地」なんです。戦前でいえ
ば、千島・樺太・朝鮮・台湾・南洋群島領なんかも全部外地です。ここまで説
明したら判って頂けましたでしょう。

修学旅行で東京―奈良―京都―大阪を駆け足で巡りはしましたけれど、それは
ホントのただの「旅行」で、住み暮らすわけではありませんでした。けれど高
校を卒業して上京するということは「内地で暮らす」ことになるのです。

内地へ行くんだ!

北海道から本州へ渡って、先ず目にする顕かな違いは何でしょう?ーーー山の
景色が違うーーー北海道の山はエゾ松カラ松オソマツ..ん?..ともかく松の木
の山景色ですが、それが本州に渡ったとたんに杉の木の山景色に一変します。

東京の上野駅までの切符を買ってもらって、布団はチッキで送って、出発の当
日、かーさんは「他人がいるとこで泣いたら恥かしいから行かない」と、家の
前の国道の口で、いつまでもいつまでも見送ってくれていました・・・・

とーさんと、2人の弟と妹が足寄駅まで一緒に来て、陸別からは恵美ちゃんも
来てくれて初めて家族に会って、とーさんが「めんこい娘さんだな〜、ボクよ
大事にしてやらんばダメだぞ」。弟や妹たちはポカンとして見とれていました
が、成人してから結婚した嫁さんは、どちらもなんとなく恵美ちゃんの面影に
似ていたような、、、。

汽車が動き出して・・・直ぐにホームの端を過ぎて、みんなの姿が小さくなっ
ていく・・・誰の人生でも、イフで繰り返すことはできませんけれど、自分の
バカな妄想に駆られて恵美ちゃんと別れずに結婚することができていたなら、

たぶん今とはまったく違う人生を生きていたんだろうか、それともこの軽薄男
は浮気でもやらかして、やっぱり離婚することになって、同じような人生を歩
んでいたんだろうか・・・・

イフの道を歩いてみることはできませんけれど、恵美ちゃんという女性を失っ
たことが、その後の人生行路に大きく影を落としたような気がしますーーー。

そのときは、前途に待ち受けているそんな運命を知る由もなく、

上京列車が狩勝峠を越える時、眼の下に漠々と拡がって霞む大十勝平野を眺め
ながら、俺は必ず成功してここに帰ってくるんだ!と心に誓ったものでござい
ました――――。
・
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青函連絡船で津軽海峡を渡り、東北本線は夜中。朝になって上野駅に到着しま
した。ーーー今でも、カラオケで「ああ上野駅」を歌うと、あのときの光景が
目に浮かんできて涙腺ダム放水状態になるので、よっぽど酔っ払って酩酊寸前
ぐらいにならないと「ああ上野駅」は絶対に歌えません....。

上野から、訊いて尋ねて、ようやっとたどり着いた早稲田の朝日新聞専売店。

そこの宿舎に入って、朝の四時起きで朝刊配達の準備をして、配達が終ったら
朝御飯、少し休んで勉強して、お昼御飯を食べてからまた勉強して、夕方近く
なると今度は夕刊の配達----夕刊は折込チラシが殆どないので簡単。また何時
間か勉強して寝る――――。

そんな生活が2、3ヶ月過ぎた頃不安になりました。----こうやって頑張って
いれば、育英奨学金も借りることができるし、2年ぐらい我慢すれば学費だっ
て貯められるだろう、けれど、


‥‥‥ 俺はそれまで我慢して頑張れるだろうか ‥‥‥


自分が配っている新聞を見てみれば、時給何百円のアルバイト募集広告がたく
さん載っている‥‥‥時給何百円なら1日10時間も働けば何千円、、ここと
同じように休みもなく働いたら1ヶ月で20万円以上になる‥‥‥それを1年
やったら2百数十万円、3百万円近いじゃないか!?

そしたら育英奨学金を借りなくても済む‥‥‥借りなければ社会に出てから返
さなくてもいい、ーーー小賢しい性格がそういう計算をして、、揚句に、

「すみません..店を辞めたいんです」

「辞めてどうするの?君は頑張って早稲田に入るんじゃなかったのか?」

ーーー然々斯く斯くと、もっともらしい理由を並べ、結局辞めましたーーー

                           = つづく =
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 
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