郵政の実質国有化について述べたが、その先について考えてみた。私に見える
郵政国営化の先にある景色は、残念ながら殺伐としたものだ――――。
郵政国有化について、いろんな人が論じているのを読んだが、多くの論者は、
国有化の目的は増発される国債の引き受けだろうという点で一致している。
ことの仔細は、大体次のような話である。
日本政府の債務が、先進国の中でずば抜けて多いことはよくご存知のことだと
思います。額にして現在841兆円が正式な発表の数字ですが、この他に隠れ
た債務があり、1千兆円=GDPの約2倍になると言われています。
本来なら子孫にツケを残す訳ですからそれを少なくしなくてはならないのに、
リーマンショック以降の不景気で落ち込んだ需要を下支えするために景気刺激
策として政府支出が必要であり、この財政政策なくしては壊滅的な不景気にな
ると認識されています。
だから各国とも、赤字覚悟で予算を組んでいるわけで、日本も、麻生政権で、
次年度予算として88兆円規模のものになるとされておりました。しかし、
政権交代後に民主党が勢い込んで予算策定を行ったのですが、民主党の選挙マ
ニフェストの実行を織り込んだ予算は、公式には95兆円、それに金額は明示
しない要求項目が加わり、97兆円の要求と見込まれているわけです。
2009年は、不景気で企業業績も大きく落ち込んでいますので、税収が大き
く減少し、40兆円を下回るのではないかと言われているのです。----08年
は46兆円ぐらいの税収があった。
そのような場合、国債の発行額は50兆円になりかねないのです。
これは、過去最大の国債発行である09年の補正予算込みでの44.1兆円を
超える額で、藤井財務相はこの過去最大の額を何とか上回らないようにして、
世論の非難から逃れたいと考えているようです。
もし、50兆円近い国債の新規発行となった場合、何が起こるのでしょうか。
これだけ巨額になりますと、ひょっとして国債が償還されないのではないかと
いう不安が支配して、売れ残る危険性があります。
もし、売れ残った場合、現在の金利では魅力がないわけですから、完売できる
ところまで国債の金利を上げざるを得ません。国債なしでは、承認された政府
予算を執行できないのですから、それだけのお金をかき集めなければならない
のです。
国債の金利上昇は何を齎すのか、実はこれが政府の一番怖れる話なのです。
民主党政権が誕生した頃の、市中長期金利は1.2%ぐらいでしたが、現在は
1.45%にまで上昇しています。ーーーこの政権は、国債を多く発行するか
ら、償還しない危険性もあると踏んでのことでしょう、今までより上昇してい
ます。
もし、金利が1%上昇したとしますと、政府が負担する金利は----直ぐではな
いですが----8.4兆円になり、凄い負担増になります。
金利が上昇すると政治運営が非常に厳しくなります。計画していた施策が実行
できなくなります。また、金利の上昇は、それまで買ってもらって市中にある
国債の価格が落ちることになります。
例えば、金利が2%になると、金利1%の国債は償還されるときには目減りし
ているので、当然その分、価格を下げないと誰も引き受けません。
これは、いま国債を大量に持っている銀行などに含み損を負わせます。経済に
与える影響も決して軽微なものではありません。
長期金利が上昇しますと、
商品販売をしている人は、この商品を売って次の品物を買い付けに行ったらも
のすごく高くなっているのではないか、と思うようになると、今ある商品に高
めの価格を設定して売り抜けようとします。
こういう傾向がそこらじゅうで起きますと、物の価格が上がり続けます。そう
いう現象が国中で起こるとインフレーション、それも性質[たち]の悪い大イン
フレーションとなります。
これは、年金生活者や低所得者の生活を直撃し、かつインフレーションを人為
的に鎮めるのは困難であり、それは政権を完全に倒壊させるでしょうし日本を
激しく衰退させるでしょう。
そういう事態が起こり得るところまで政府負債が膨れているのが実体で、イン
フレが起こらないことが世界中から不思議がられているぐらいです。
では、なぜ95兆円もの予算になるのかといえば、ーーー民主党は、来年の参
議院議員選挙に何としても勝たねばならぬ、と思っているからです。
最近の民主党内での事件ですが、事業仕分けという予算削減の分析をやろうと
意気込んで、仙石行政刷新相が、新人を含め32人の議員を選んで事業仕分け
を始めようとしたら小沢幹事長に一喝され、スゴスゴと議員を外し、元官僚な
どを人選して補ったそうである。
その理由は、来年の参議院選挙に勝つには、ドブ板活動をやらねばならないの
だから、新人を事業仕分けに使うことまかりならぬと幹事長が吼えたのです。
仙石氏は、ベテラン議員7人を残して再組織し、小沢幹事長に謝罪したのだそ
うだ。この間の事情は「Chikirinの日記」に詳しい。
それぐらい小沢幹事長は必死なのだが、当然マニフェストの実行をしなくては
選挙に負けるということで、ばら撒きますけれど財源はムダ削減で充当します
と、嘘を2つに分けて、少なくともばら撒きだけは実行しようと必死になって
いる訳です。
----ムダ削減は時間がかかるといっておれば済む話、と思っているのか??
しかしこのばら撒きも、際どくてムダ削減ができないから、下手をすると赤字
国債が捌けない、それが長期金利の高騰を促すことになりかねないので、防御
策としてその際には郵貯を使おう、ということになったのであろう、と識者は
推定しているのです。
識者の1人、大前研一氏が、メルマガでこの一連の流れに対して述べているこ
とを、少し長いが引用させて頂きます。
┌--------
この問題の発端として、かんぽの宿の一件が深く関係しているという報道もあ
るようですがそれは無関係だ。今は、100億の価格をつけた不動産が5億円
で売り出されることさえある時代だ。
└--------
とした後、
┌--------
本質的な問題は、国家が、運用する力も持たないのに国民から資金を集めて、
それを使って国債を購入していることです。すなわち、結果として「国の借金
を国民に肩代わりさせている」ということです。
「国の保証があるから安心だ」などと言いながら、ゆうちょやかんぽで集めた
国民のお金で国の借金を返すとは、詐欺にも等しい行為だと思います。そして
こうした仕組みがあるから、日本という国は節操なく赤字を垂れ流し、世界で
も随一の借金大国となってしまったのです。
ゆうちょ銀行は、昔から審査部も法人営業部もなく、資金を運用する力は全く
持っていませんでした。
最近ではそれを改善する動きもみせていましたが、今回の社長交代でまた時計
の針は10年近く戻ってしまうでしょう。これは日本という国にとって由々し
き問題だと思います。
さらには、最近では郵貯のみならず、銀行までも正しく機能していません。ひ
と昔前は法人や個人への貸出を一生懸命行っていましたが、最近ではそのよう
な動きは殆ど見られず、もっぱら国債を買っているだけです。
おそらく国の資本が入ってしまったことが影響しているのだと思います。銀行
は産業の潤滑剤としての役割を果たすべきなどといわれますが、全くその役割
を果たせていません。だから日本という国は経済が躍動しないのです。
国家や政府が主導して、このような、国へと導く仕掛けを作っているのです。
率直に言わせてもらえば、「なんという国を作っているのか!」と一喝したい
気持です。いま民主党が見せている動きは、最悪の国を作り上げるシナリオで
す。
日本にとって大変シリアスな問題だということを、国民も民主党も認識するべ
きでしょう。そして、民主党には一刻も早く正しい方向に舵を切り換えてもら
いたいと願うばかりです。
└--------
本当にその通りなのである。恵まれない人にお金を渡すのは、一見すると美し
い行為に見える。しかし、国民全階層が所得を減らしているという、世界史に
も例のないような状態の中で、=森岡孝二著「貧困化するホワイトカラー」
財源のアテもなくばら撒きをすることは、国民全体を更に酷い状態にするだけ
のことなのである。ーーーそれ以上に、赤字国債を乱発することは、国を壊す
ことになる。
ばら撒きをしたいのであれば、産業振興を行い、国富を蓄えられるようにしな
がらやるべきである。産業政策は何もなく、コンクリートから人へという空疎
な分配論だけで国が良くなるはずがない。
コンクリートの後ろにも雇用があり、それをなくすなら、コンクリートの後ろ
にいる人の雇用を、転職できるものにして初めて「人へ」となる。金の稼ぎを
何ら考えないのは、
ーーーソ連などの共産主義・社会主義と同根の空想癖の習性なのだ――――。
結婚を餌に金品を奪い取るのを「結婚詐欺」というが、「政権交代したら世は
バラ色」と囁いて酷い目にあわせるのは「政権詐欺」と名付けるべきだろう。
いま明確になりつつあるのは、国民が、民主党のやっている「政権詐欺」に騙
されつつあるという事実である――――。
= この稿おわり =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛
◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 95人 (73%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 13人 (10%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 5人 ( 4%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 8人 ( 6%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 10人 ( 8%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛
┌──────────「原田さん」
日本の長期金利は国内要因よりも米国長期金利に連動しているように見える。
最近FRBが国債引き受けをやめたことで、米国国債の長期金利は上昇傾向を
みせている。国内要因など、言われるほど影響していないのではないか。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
長期金利は、その国の資金需給で決まる短期にリスクプレミアムが乗せられて
いると言われています。資金需給がタイトであれば、諸外国の金利が上がれば
その国の需要が増えて金利が上がることがあるかもしれませんが、
現在の日本のように、資金需要が極めて低く、国債で運用という情けない状況
では、アメリカの金利が上がったから日本の金利も上がる、というようなこと
はあり得ないと思います。
ここ10年の金利動向を見ても、アメリカの金利の上下動と日本の金利の動き
とに相関はありません。
└──────────
┌──────────「tenyoufoodさん」
┌--------
産業振興を行い、国富を蓄えられるようにしながらやるべきである。産業政策
は何もなく、
└--------
日本国内では「不可能」なのは解っていても、そんなこと言える訳ないよ誰に
だって。
┌--------
コンクリートの後ろにも雇用があり、それをなくすなら、コンクリートの後ろ
にいる人の雇用を、転職できるものにして初めて「人へ」となる。
└--------
問題なのは、コンクリートが出来た後のことなのだから、「その後」について
言わなければダメ。
┌--------
いま明確になりつつあるのは、国民が、民主党のやっている「政権詐欺」に騙
されつつあるという事実である――――。
└--------
自民党にはサンザン騙されてきているので、慣れています。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
自民党の政策は、1980年代までは機能していたし、正しかった。
あの時代、サヨクの言うような政策を採っていたら今頃北朝鮮並みでしょう。
宮本一族の支配下かな?
狂いだしたのはバブル後半から、時の政権幹事長は小沢ですよ。彼のアメリカ
の要求に屈しての公共投資400兆円の約束からこういう国になる路をひた走
りです。
まあ、見果てぬ夢の中で白昼夢に酔いながら、民主党万歳と寝言をいいつつ、
安らかにお休み下さい。大増税か大インフレで眠りから起こされますが、自民
でも同じことが起きただろうと、ご自分を慰めながら生きるのも人生かもしれ
ません。
└──────────
┌──────────「中山香さん」
小沢一郎は、かって「日本は普通の国になるべき」と言っていた。国家安全保
障の対応での発言であったと記憶している。
国家安全保障同様に、国民一人一人の安全保障においても我々はもっと「普通
の国民」にならないと、いつまでたっても国家に、政治家に、官僚に搾取され
るだけの国民のままでしかない。
日本人の習性である「横並び」「出ない杭」意識を上手く利用する政治家は、
政権に就けないようにしましょう。「政権詐欺」を防ぐには「政府」に全幅の
信頼をい寄せないことです。
明治維新以降の近代史を具[つぶさ]に見れば、日本の近代化という歩みでの国
家と国民の関係を教えてくれていると思いますが、如何でしょうか。
自分の目で見る、自分の耳で聞く、自分の頭で考える、そして自分で自分の答
を導き出すことができる「普通の国民」の行動こそが、自分の子や孫の時代に
まで禍根を残さないのだと思う。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
私も賛成です。民主党の話(選挙での自民党の話も同じ)は、「うまい話」なん
ですよ。
金をばら撒いて使えば内需が拡大して日本は再生する、なんて、そんな楽して
繁栄するようなことは眉唾だと何故思わないのでしょうか。
政府を信用するのが間違いの始まりで、疑い、自分で判断する為にそれなりに
情報を集める必要がありますし、それを解釈する為に勉強することが大事だと
思います。
└──────────
┌──────────「緑の保守派の尊野ジョーイさん」
┌--------
上手にツッコミどころを鏤[ちりば]めて、っていうのが、こりゃもう高等テク
ニックで
└--------
いや、そんなに計算しているわけでもなく、テキトーに書いているだけです。
あくまでも何となくテキトーです。
今の私の病状が絶好の状態なのかもしれません。ケガの功名という奴ですか。
たしかに、元気に論文を書いていた頃の私には、このような文章は書けないで
しょうね。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
文章は、書き手のその時の精神状態を反映しますね。そして精神状態には、体
調、それ以上に精神力といいますか、闘争心のようなものが滲むように思いま
す。
今の日本の、大過なく過ごす風潮も、何があっても怒らない流れも、日本の精
神状態の反映だと思います。以前にも申し上げましたが、この風潮を私は「老
人症候群」だと思ってます。
回復されて、闘争心に満ちた投稿を期待しております。
└──────────
▼
┌──────────「緑の保守派の尊野ジョーイさん」
激励のお言葉、ありがとう御座います。
今は我慢の時、頑張らないでいるように頑張っています。
元気な時は、よりによって指導教授にケンカを売るくらいでしたから、回復し
た暁には…まあ、以前よりは「大人」の対応をしますけど、大人しくはなりま
せん。(笑)
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
「頑張らないように頑張っている」ことは大事なことですね。
闘争心は、湧き出るものでしょうから、そのうちに滲み出してくるのではない
でしょうか。お大事になさってください。
└──────────