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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん
☆ 返済猶予は優良な借り手を育てるのか(下) ―――― 2009/10/14
ーーー政府の介入が全て悪い結果をもたらすか、といえばそうではない。

新しく立ち上がる業界、例えば20年前の太陽光発電のような産業界は、太陽
光発電素子が、大量生産すれば安くなり発電で減る電力料により数年でモトが
取れるのだから普及することになるわけで、

その普及援助をする助成策は、政府が関与しても好ましい結果がもたらされる
と評価される分野であろう。すなわち、業界がある規模になる時期まで政府が
援助することは良いこともある、といえる。

助成策で産業が立ち上がり、世界的な製品を生み出し、国内の雇用を創りだす
ことになるのだから国民全員が喜ぶことである。ただ、世界的な商品になると
いう目利きが重要であるが、そのあたりが心配ではある。

その場合の助成策でも、日本では太陽光発電装置の設置費用を政府が負担する
方式が多いが、ドイツのように、発電した電力を高値で電力会社に購入させて
太陽光発電装置を家庭に設置するインセンティブを設定するような発想は不得
手であるように思う。

電力料金を高く買い取る方式は、結局他の人の支払う電力料金に乗せてチャラ
にするのだから国民全体が負担する方式であるが、消費者の反発を恐れて実行
策として選択しない。

だから普及が遅れてしまい、他国に世界一の座を奪われてから初めて、ドイツ
が実施した実績があるからと尻馬に乗ったように真似をして実行する=他国が
やっていると国民も文句を言わない)

政府だけが悪いのではなく、本当は国民が問題なのだが、横並びの発想しかで
きない国でガッカリする。

とにかく、新産業の立ち上げの関与は良いが、ある程度自走できるようになれ
ば、国は企業に関与しないようにしなくてはならない。

さて今回の不況は、

今までの日本で経験してこなかった大幅な外需の縮小であった。

08年12月では自動車の対米輸出は52.6%減(世界全体では45.4%)
という半減以上の厳しいものであった。09年10月では、日本の経済状況は
若干の回復をみせてはいるものの、その足取りは弱い。

鉱工業生産指数で見ると、08年2月のピークから09年2月の底まで41.
5の落ち込みをしたが、10月までで37%程回復しただけである。

10月1日に発表された日銀の短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)
が2期連続改善したものの、依然としてマイナス水準だし、09年度の大企業
製造業の売上高は前年度比14.3%減、経常利益は38.9%減だ。

将来の見通しが良くないので、09年度の設備投資計画は前年度比25.6%
の減と、過去最大の落ち込みとなった。

世界はどうかといえば、米国は銀行の損失の6割を処理し終わり、消費の伸び
も期待されるようになっているが、日本はまだまだである。

IMFが発表した来年の予想では、世界のGDPの伸びは0.7%プラスに上
方修正されたが、日本だけは修正されなかった。

07〜10年の累計で見ると、日本のGDPは▼2.3%だが、アメリカは+
1.2%、EU▼0.6%となっており、結局サブプライムローンの震源地よ
り、輸出減の打撃を受けた日本が一番酷い目に遭ったことになってしまった。

そして今、エコノミストが口をそろえていう予測では、アメリカの消費は今回
のバブル崩壊以前には戻らないことで一致している。アメリカの消費者の消費
行動が大きく変化したのだというのだ。

例えば、バブル崩壊以前では、アメリカの貯蓄率は0%に近いものだったが、
最近は6%になっているらしい。ローンを組んで消費行動をすることも少なく
なったという。

だから、例えば車の輸出は、以前の水準には戻らないであろうということだ。

ということは市場が縮小する訳だから、不況を乗り切りさえすれば元に戻るパ
ターンではないのである。返済猶予を3年間やれば、不景気という台風が過ぎ
去り、日本の中小企業が元のようになるという図式ではないはずである。

日本の最近の景気回復は外需に支えられてきたのだから、外需の大きさや内容
が変わると、日本の産業もそれに連れて変わらざるを得ないはずである。

日本の産業に新陳代謝を迫る環境変化が起きているのに、返済猶予をするとい
うことは、環境変化への対応を拒否するような、企業に延命装置の装着をしよ
うという話なのである。

池田信夫氏は、主宰するブログでこう述べている。
┌--------
貸し渋り防止策は、90年代後半にも金融庁が実施したことがありましたが、
その結果、何が起きたでしょうか。

銀行は、金融庁の顔を立てて中小企業に融資の残高を維持するため、資金需要
はなくても安全な中小企業に融資をシフトし、危ない中小企業からの資金回収
は、貸し剥がしとして非難を浴びるため、公庫融資などに押し付けて逃げた。

その結果、大量のゾンビ企業と政府系金融機関の膨大な赤字が生じ、不良債権
問題は長期化したのです。
└--------

当然のことであるが、どの企業も慈善事業をしているのでないのだから、損失
を回避する行動をとる。これを指導などで変えようと官僚は考えるのだが、企
業はその上をいくものだ。だから、思いがけぬ結果を招いてしまうのである。

また、ゾンビ企業と政府系金融機関の膨大な赤字が生じて、不良債権問題は長
期化し、失われた10年となったのは、企業の新陳代謝を止めてしまったがた
めに市場から消えるべき非効率的企業が生き延び、(死んだ企業が生き返る=
ゾンビ)
極めて低い利益率となりながらも人・物・金を固定化してしまったことが、新
しい産業の誕生と成長を阻害していたのである。

日本企業の問題はこの点にもあり、新しい企業が産業の大きな比率にならない
のである。経済産業研究所のレポートでも、
┌--------
産業全体の全要素生産性が上がるのはどういう場合が考えられるかというと、

1)個々の企業で全要素生産性が上がる場合=内部効果
2)生産性が高い企業が新たに参入し、生産性が低い企業が退出した場合=参
  入・退出効果
3)生産性の高い企業が事業を拡大し、生産性の低い企業が事業を縮小した場
  合=再配分効果

があります。これらの要因で分解してみると、日本は米国や韓国と比べて参入
・退出効果、再配分効果が著しく少なく、内部効果が中心であることがわかり
ました。
└--------

とされ、日本は著しく新陳代謝が乏しく、それが日本の生産性の向上を阻んで
おり、GDPの伸びがないことにつながっているのだと指摘しています。
そして、
┌--------
ゾンビ企業の定義は、払っている金利が市場のレートより非常に低い企業とし
ています。それによると、ゾンビ企業は建設業、商業、不動産業などが多く=
上場企業の約20%、製造業はかなり少なくて7〜8%ぐらいです。
└--------
と述べています。

市場から退場すべき企業を人為的に守ると、一見それは人情味溢れる行為にみ
えるが、生産性向上を阻み、結局国民が豊かになる足を引っ張ることになる。

ーーー国民が豊かになるのは生産性が向上するからで、これなしだから貧しく
なっているのが現状だ。そのことを誰も指摘することもなく、さも人情に厚い
かのごとき発言を亀井大臣はするのであるが、それは結局、みんなに迷惑をか
ける結果になるだけなのです。

生産性の高い中小企業を潰していいか、というとそうではありません。

そういう企業に対しては、自民党政府の時代に、中小企業の資金繰りで政府保
証による保証協会の信用枠の拡大、政府系金融機関によるセフティネット貸付
などの手を打って、資金繰りからの倒産を防ぐような配慮をしています。

しかし、それでも貸し渋り貸し剥がしが起こっているというが、その根本原因
は、銀行(中小企業に貸しているのは地銀等が主であるらしい)の体力がなく、
少しの貸し倒れで経営が危うくなるから、貸出先の倒産を恐れて貸し渋るし、
貸し剥がすのです。

したがって、本当に危ない中小企業を救いたいのであれば、そういう危険性の
極めて少ない国の金融機関が融資する以外にはないだろう。それをあたかも、

民間銀行がモラルをなくして貸さないし、貸し剥がすのだ如き話にして、銀行
に事後立法の法律で返済猶予のリスクを負わせるのは、不当な経営悪化条件の
強制であり、とても許されることではないと思う。

以前にも引用させていただいた三原淳雄氏は、ブログに、
┌--------
もし本気で亀井さんが中小企業を応援したいのなら、相続税から手をつけるべ
きだろう。

今回の返済猶予策など不要な優良企業の悩みは相続税であり、真面目に頑張っ
て自己資本を増やし、財務が健全な非上場の中小企業ほど、大変な額の相続税
がかかってくることをご存知なのだろうか。

返済猶予が必要な中小企業は当然財務内容はガタガタだから、相続が発生して
も赤字だからゼロなのに、真面目にこつこつ財務内容を健全にすればするほど
根こそぎ持っていかれるほうがよほど不公平だし、

潰れて然るべき企業が生き残り、潰してはならない優良企業が相続税で潰され
るほうが、国家にとっても為になるまい。
└--------
と書いておられる。

以上お読みいただいたように、返済猶予は「優良な借り手」を育てることはな
く、市場から退場すべき企業を延命させ、それが日本の更なる停滞を生むこと
になるだろう。退場すべき企業はご退場頂くと共に、

ーーー亀井大臣も政界からご退場頂くのが日本国のためだと思う。

さて、ここまで書いて政治の状況を見ると、当初の亀井構想からは大分外れた
着地点のようだが、内容は危険であることは変わらない。

今のように返済猶予をして倒産したらその債務は国が払いますということなら
銀行は容易[たやす]く貸すようになるが、最終的には不良債権が大きく膨らむ
バラ撒き以外のナニモノでもないことは、子供でも分かるのではないか。

新銀行東京都同じく、見る間に貸し倒れが出て、この制度を食い物にしかねな
いし、それで生き残った中小企業が本当に日本の役に立つかどうかは、

ーーー述べてきたとおりである。

                        = この稿おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 読後アンケートの結果。 ┗━┛
◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 62人 (81%) ◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 6人 ( 8%) ◇ どちらともいえない ---------------------------------- 3人 ( 4%) ◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 2人 ( 3%) ◇ この意見に反対 -------------------------------------- 4人 ( 5%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「hideおじさん」 ーーー非常に勉強になるお話でした。 特異・特殊技術を持つ優秀な中小企業が存在することが日本の特色であろうと 思いますが、一方で、単に大企業の下請けという企業も少なくありません。 それぞれ日本社会を支えてきた企業には間違いありませんが、冷たい言い方で 申し訳ないけれど、ご退場いただくべき企業もあるかと思います。それを全て 一律に救済すべきことなのか?と疑問に思います。 たしかに今までの銀行の対応にも問題があろうかと思いますが、画一的な対応 だと優良な借り手も育ってこないように思えてなりません。 民主党の中にも「精査しなければならない」と発言される方もいらっしゃいま すので、よく考えてもらいたいものですね。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
どうも私達は、企業を潰してはならないという「家業」意識が強いのかもしれ ません。だから、低効率の企業=利益率が極めて低い)でも存続させる努力を してしまうのですが、 欧米では、そういう会社は業態を大転換するかスクラップ&ビルトをするよう ですね。日本も、もう少し利益率を高められる仕事をしないと、先々大変な労 苦が来るような胸騒ぎが致します。 └────────── ┌──────────「heroさん」 大変難しい問題と思います。亀井氏は人情家なのでしょう。だから困っている 中小企業を助けようと途方もないことを言い出した、と推測します。 でも、生産性の低い中小企業を延命しても社会全体のためになるでしょうか。 厳しい言い方ですが、生産性の低いところを淘汰して、生産性の高いところを 残していかないと大企業との格差は縮まりません。 同じことが農業問題にも言えるのですが、話が長くなるので割愛します。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
その通りですね。農業でも、兼業農家を救おうとしますから大規模農家が割を 食うような気がします。 亀井大臣の発想は、苦しい零細企業を金融面から助けようという話だと思いま すが、モラトリアムを出すこと自体が思わぬ結果を招くような点があり、本当 に零細企業を助けることにならない危険性があります。 応急処置の見本みたいなもので、根本処置には何も言わないのが困る話だと思 います。 └────────── ┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」 返済猶予といっても、返済しちゃダメ!というわけではないんでしょう? だったら、資金繰りに余裕のある優良企業は、次の借り入れのためにも約定ど おり返済していく。ズルイ経営者は返済猶予を利用して倒産させる。銀行は国 が補填してくれるから痛くも痒くもない。 結局、ーーー国に莫大な不良債権が残って、それを税金で国民全部が尻拭いを させられる、、と、そういう后果になるのではないんでしょうか??
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
実際に、90年代の後半に、貸し剥がし貸し渋りの防止を銀行長に行政指導で 行った話を書きましたが、結果、政府の不良債権が大きくなり、失われた10 年の原因となった、という指摘もあります。 OJIN さんの想定通りに動いていた、といってもいいだろうと思います。 └──────────
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