トシに似合わず凄い馬力で、辻褄の合わないことでも堂々と喋る亀井静香大臣
は、就任早々からスゴイことを言い出した。モラトリアム(返済猶予令)をやる
というのである。
就任直後の新聞インタビュー記事から拾えば、
〜 モラトリアムが法律上問題があるとの指摘に対し、
┌--------
物事はなんでもマイナス面があるが、マイナスが出ないよう最善を尽くす。
貸し手の銀行が困っている時は資本注入するわけだから、困っている借り手が
いる時に返済猶予ぐらいは当たり前だ。これはやる。
└--------
〜 モラトリアムをやると貸し渋りが起きないかに対し、
┌--------
(銀行は)今だって貸し渋りをやっている。借り手がいなくなったら銀行は成り
立たない。優良な借り手を育てるには、(返済を)待つとか、さらに融資する積
極性がないとだめだ。
└--------
┌--------
(銀行への補償は)返済が滞って経営に困ることがあれば助けてやればいい。現
に金融機関には膨大な公的資金を注入している。経営を圧迫するようなら、国
が責任を持って対応すればいい。
└--------
ーーーこの発想の根本は、つまるところ何であろうか。
中小企業が困っている→銀行に返済猶予をさせる→銀行の経営が苦しくなる→
国が救う。これは、「国が困っている中小企業に金を入れる」のを、銀行を介
して行おうという事だ。
さて、そのようなことで本当に「優良な借り手」が育つのであろうか。
優良な企業を育成するのに、国はどのように関与すれば良いのか、という問題
を考えてみよう。
まずは、全面的に関与するケースはどうだろうか。
実は、国の関与が多い企業の行く末は、哀れなことが多いのである。
その最近の代表例はJALである。
1951年に半官半民の会社としてスタートし、1987年に完全民営化され
たのであるが、就航路線選定、業務遂行などへの政府・官僚の口出しは多く、
度重なる経営危機を経験して抜本的体質改善策をといいながら何も変わらず、
ーーー今回も大赤字で、公的資金の導入を申請している有様である。
JALの経営危機は、1992年に560億円の赤字を出し、保有する資産を
売却して切り抜けたが、2003年にSARS禍で経営危機となり、そして、
2009年に公的資金の申請をせねばならぬところまで追い込まれている。
全日空がそれなりに収益を出す経営をしているのに、JALだけどうして経営
不振となるのであろうか。
多くの識者やコメンテーターは、苦しくなれば国が救ってくれるという安易な
依存精神がだらしない経営を生むと非難することが多い。確かにその面はある
だろうと思う。
JALは、労働組合が7つ8つもあって、互いに憎みあっているのが原因だと
いう人もいる。だが、殆どの官営事業が非効率になっていることを考えれば、
それだけではないだろう。
官営事業の無責任な仕事振りの典型は社会保険庁の年金記録の電子化であり、
あらゆる役所で摘発されていて、最近は千葉県庁で明らかになった裏金づくり
である。
官営事業のトップから末端まで、関心が仕事ではなく別のものに向かっている
為だろうと思う。
トップは、事業の成績を上げるよりも、政治家や官僚の方向を向いていて、彼
等に難癖を付けられないように、あわよくば歓心を買おうとウツツをぬかして
いるようだ。
下は、仕事がとにかく楽になることを考え、遊びだとか、仲間内の交遊だとか
にふけっているのだろう。だから、そのような費用にくすねたお金を使ってい
る。
半官半民の会社は、この企業風土(企業文化)の浸透を受けることになる。
企業風土というのは実は恐ろしいもので、一度これが染み付くと振り払うのに
長時間を必要とするのである。例えば定時に出勤しなくても当たり前とか、残
業していなくても残業をつけても後ろめたい気にならないなどの風土は、執拗
に残存するものなのだ。
私企業になぜそういうことが起こらないのかといえば、ぎりぎりの人数でやる
から、そんなことを考える暇もないというのが正直なところだ。官庁は、暇だ
からそういうことも考えられるのだともいえる。
ただ、大企業にも官僚化という病があって、官庁と類似のことが起きるのは確
かである。だから、官僚依存の企業は体力も弱く、環境変化に適応できないも
のに変質していくのである。
亀井大臣の郵政民営化の見直しは、事実上の官営化である。=トップに官僚か
らの実質的天下りを持ってこようとしている。
世の中に、民営化で良くなった企業はいくつもあるが、民間会社を官営化して
上手くいった例はない。亀井大臣は、自分の信条は日本をよくすることなので
あろうが、実行していることは日本を奈落に叩き込むことである。
┌--------
世界で国有化による自動車メーカー再建の成功例はほとんどない。英労働党政
権が、1970年代、ロールスロイスやブリティッシュレイランドなど、経営
危機に陥ったメーカーを国有化したが、結局どれもバラバラに解体されて海外
資本に買収され、英自動車産業は事実上滅びた。(産経新聞09年06月01日)
└--------
最近TBSで「官僚たちの夏」をやっていたが、事実とは大きく異なる。
城山三郎氏の同名の小説は、通産次官佐橋滋氏をモデルにしたものといわれて
いるが、彼の提唱した産業振興策は、ホンダの本田宗一郎氏や、住友金属の日
向方斎氏の反対でつぶれた。
そして、つぶしたホンダは世界企業になっているし、住金は独自の路を歩む鉄
鋼会社として確固たる地位を築いているのをみても、佐橋氏の提案は時代遅れ
だったのだ。それがいま確定している、佐橋氏がやろうとしていた産業政策の
評価なのである。
それを、今頃になってTVが、何の目的で古い埃まみれのシナリオを出してき
たのか知らないけれど、時代錯誤も甚だしい。
官僚は悪くないんだよといいたいのかもしれないが、企業にとって、余計なこ
とをするのは今も昔も変わりがない。政府・官僚が業界に関与することも業界
を歪めてしまう。その例は、農業はじめ土木業等々にいくらでも見られる。
今回の返済猶予は、国は経営内容には立ち入らない、お金を貸すだけだという
かもしれないが、
全中小企業に貸し出す道理はなく、返済猶予する企業を選別するのだろうが、
そこに国への陳情を含め関与するだろうし、政府・官僚に依存する根性が生ま
れる。
----金融機関に任せるといいつつ、必ず指導の形で口を挟む。それを我慢でき
る亀井氏でないことは、過去が証明している。
こういう依存体質の強い国で、本当に今後の世界との競合に競り勝てるのか、
実際に心配する人がもっといてもよいと思うのだが、マスコミを含め、全て政
治が悪いと、逆に依存心理を煽っているのが実情だ。
= この稿おわり =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
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◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 74人 (76%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 9人 ( 9%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 4人 ( 4%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 4人 ( 4%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 7人 ( 7%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
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┌──────────「1国民さん」
銀行は借手がいないなら国債で利ざやを稼ぐだけ。
マルクス主義者の亀井氏には別の目的があるのかな? 資本主義経済の破壊が
目的?
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
東大経済出身の亀井氏はマルクス主義だといわれてますね。まあ、冗談の部分
が多いのでしょうが、彼が学生の頃の東大経済学部はマルクス経済学が全盛の
頃ですから、影響は大きいのではないでしょうか。
落としどころは初めから想定内なのですが、凄いところかスタートするのは、
やの字の手口だろうと思います。彼は、闇金では有名な人で、許永中の舎弟だ
といいますから。
古い自民体質の手口なのですが、こういう時期にやられると新しく思えるのは
不思議です。
└──────────
┌──────────「tenyoufoodさん」
中小企業なら、都市銀行ではなく信用金庫との取引が多いのだろうね。
亀井策は、潰れそうな信用金庫(なんとか銀行と名乗っているところもある)を
救う深謀遠慮なのかもしれないよ。
信用金庫以外にも、国民金融公庫があるのではないか、と思うけどね。新銀行
東京のように、税金をドブに捨てるようなことにならなければいいけどね。
ドブに捨てても、ドブの中を流れたのだから「役に立った」という見方もある
し、それももっともだとも思う。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
新銀行東京と同じになる、と懸念するエコノミストも結構おられますね。
ご指摘の通りです。ドブの中を流れたのだから役に立ったという考えもありま
すが、今号(10月14日号)でも述べておりますように、救った積りの退場す
べき企業が、結局日本の生産性を引き下げ、日本全体を貧しくさせる危険性は
残ります。
企業の新陳代謝を恐れては駄目で、人間の命は救わねばなりませんが、法人は
環境に合わせて適者生存を繰り返さないと、結局国民がワリをくいます。
どうも、企業と人間とを同次元に考えるつまらない思考パターンが邪魔をして
いるのではないでしょうか。
└──────────
┌──────────「hideおじさん」
自民党への不満が、民主党への不安より勝った結果がこの前の「総選挙」だっ
たと思ってます。
自民党への不満が「惨敗」という結果で解消されたら、一気に民主党への不安
が明確になってきたといえるのではないでしょうか。
彼らのマニフェストそのものは大変立派なものですけど、どうも今ひとつ現実
味に欠けるというか、片手落ちのような気がしてなりません。国家予算という
パイの配分方法を見直して分け直すだけでは、場当たり的で、永続性に欠ける
と思います。
同じように、今回の亀井さんの話も、中小企業対策ということでは判らないで
はありませんが、やはり現実的な視点というのに欠けているように思えてなり
ません。
それでもやるだけの価値があるというのならば、何故そういえるのか、ちゃん
と説明すべきだと思います。これも、国民の意見そっちのけで、関係省庁や官
僚とでやっているだけのように見えてしまいます。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
銀行に損失を押し付ける形から、以前と同じ貸し渋り、貸し剥がし防止の指導
と変わらないものになるようですが、しかし、猶予をして倒産すれば国が弁済
する形となりますので、逆に膨大な借金を国が抱えることになるでしょうね。
そして、生き残った中小企業は良い企業でないことが殆どでしょう。
そして市場の変化に対応ささない悪い癖をつけて、国民経済に害を為すでしょ
う。ーーーそれでなくても生産性の改善がなされていない日本の経済構造が、
更に歪を酷くしそうな気がします。
└──────────
┌──────────「kunimamoruさん」
いいお話で、頷く事ばかりでした。結局、官は国から給料貰って生活安定です
が、企業はそうはいかないという事。官の論理を企業に持ち込むからおかしく
なる。
「餅は餅屋」・・上手にお互いがうまくやって自助努力を怠らなければいう事
ないんですが、最後にいわれた依存心を、日本人自身が知ってか知らずか。
ーーー身に染み込んでしまっているのでしょう。
└──────────
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┌──────────「紋起さんから」
私の仮説なのですが、子供の育て方と関係があるのではないかと思ってます。
日本では、子供は非常に構って育てますよね。あれやこれやと世話を焼くのが
いい親というイメージがありますよね。これって、結構依存心を強くするので
はないでしょうか。
しかも、昔と異なり子供の数が少なく、家電製品で家事は時間が掛らないとな
ると子供はペットですから、指図とか逆に何でも言うことを聞くとかになりが
ちで、これが社会の中まで持ち込まれているように思えて仕方がありません。
会社の話ですが、人間は生き返らないので死ぬのは駄目ですが、会社は時代に
合わなければ衣装のように脱ぎ捨てる感覚が必要のように思うのです。
どうも日本は、会社を人間と同じように見ているような気がします。これも修
正したほうが良いと思うのです。
└──────────