では、なぜ選挙民は民主党に地すべり的な政権選択を行ったのだろうか。
私は、今回の選挙を特徴づけるのは、民主党の勝利に隠れてマスコミでは殆ど
取り上げられないが、「みんなの党」の大躍進ではなかったかと思っている。
「みんなの党」は、僅か選挙の20日前の8月8日に結党して、10日に認可
された。そして選挙には13人の公認と2人の推薦で臨み、5人が当選した。
もし、比例区の選挙人名簿を適切にやっておれば、東海地区と近畿地区の比例
区で1名ずつ当選させられたので7人当選できたはずであり、民主、社民1名
ずつ減で、社民党が6名となるから、衆議院では第5位の党だったのである。
これは考えてみると凄いことだと思う。僅か20日足らずの選挙運動で、半数
近くが当選圏にいた事を重視しないマスコミ報道は的をはずしている。
みんなの党は比例区において、北海道、北陸信越、中国、四国では候補者を擁
立していないのに、社民党とほぼ同じ全得票数(共に300万票、わずか千票
差で社民が多い)を獲得している。
社民党は、みんなの党が擁立していない前記の選挙区で約60万票を獲得して
いるから、実質はみんなの党に2割離されている状態であり、
国民新党など、みんなの党と類似の地区で候補者を立てているが、みんなの党
の半分にも満たない=122万票)し、新党日本などは霞んでしまうゴミ程度
の存在である=53万票。
党の支持度を推し量れる比例区の各ブロック別の投票を解析すると、興味深い
ことが見えてくる。自民が得票率を落とし、民主が上げているのは全国の全て
のブロックで同じだが、
自民が落としたパーセントより少ないパーセントでしか民主が支持率を上げて
いない地区=民主が自民から離れた層を全て捕まえておらず、どこかに漏れ出
している)と、自民が落としたパーセント以上に民主が支持率を上げている地
区=自民以外からも支持者を集めている)に完全に分かれる。
その境界は、自民が落とした支持率の10%で区切られる。10%以上落とし
ているところは自民からの離脱者を捕まえ切れずにいるし、10%以下の支持
率低下地域は、自民からの離脱者以上に他の党からの支持者を掴まえている。
これを解釈すれば、
前者は、自民には落胆したが、かといって民主にも飽き足らないという人が多
い地域であり、後者は、自民には少し落胆したが、それよりも民主は良いんで
はないかという地域だろう。具体的には、
前者は東京、北関東、南関東、東海、近畿、いわば都市圏の地区であり、後者
は、東北、信越北陸、中国、四国、九州、という地方の地域である。北海道だ
けは大分違っていて、郵政選挙の時でも民主のほうが自民より多いという選挙
区だった所為もあって、自民の支持率低下は3.8%、民主のアップは6.8
%である。
こんな僅かの期間の活動で、昔から活動してきた政党を凌ぐ支持を集めた理由
は、「脱官僚主義」「利権政治からの脱却」と「まともな経済政策」であった
のではなかろうか。
なぜならば、党首の渡辺喜美議員は、公務員改革を福田政権下でよくまとめた
と評価されているし、江田憲司議員は脱藩官僚の会のメインキャストであった
訳だから、それが国民に良く知られていて「みんなの党」がここまで票を集め
ることができたのではないか。
下のような記事もあった。他のブログでもみんなの党のマニフェストはまとも
ではないかと書かれていた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20090810/202220/
したがって、自民党が都市部に於いて地滑り的に敗北したのは、昔の体質であ
る利権配りに戻ったからである、と断定しても良いであろう。
翻って考えても、小泉郵政選挙が自民党の大勝利になったのは、郵政がテーマ
であったことや刺客騒動が功を奏したのでもなくーーー利権政治家が郵政反対
で自民党から追放されたからだ、と考えたほうが適切ではなかろうか。
亀井某氏などその最適例である。そして、安倍内閣や福田内閣で利権政治家と
思われる連中を自民党に戻したことが、自民党の致命傷の始まりで参議院選挙
で負けて、麻生内閣になってさらに利権配り政治が戻った、ことに国民は自民
党を見放したのである。
2ちゃんねるなどの掲示板で自民党に対する書き込みを見ても、政治家と官僚
とがグルになって税金を無駄遣いしている、私腹を肥やしている、と糾弾する
記述が限りなくみつかる。
ーーーそれが世間常識となり、利権狂いの烙印を押されてしまったのである。
しかし地方は公共事業の受益者でもあるから、都市部ほど公共事業を悪く思っ
ていないようで、自民党の支持率低下は都市部ほど大きくはない。自民党の低
下より大きい割合で民主党が支持率を上げているのは、民主党のばら撒き公約
が効いているのだろう。
農家の個別補償や、子供手当などが魅力だったのではなかろうか。だから地方
は、官僚主導反対という程度は低いと思われる。みんなの党が、東北と九州で
比例区に重複候補を立てているが、各々4.5%と3.4%の票しか取ってい
ない。
----近畿、東海も4%台の得票率だが、両地区とも、自民党の減少した率と民
主党が増加した率とが大きくは離れていない。
さて、みんなの党の支持率などで今回の衆議院選挙全体を見ると、日本は一枚
板ではない。ーーー新聞が書く「脱官僚政治」で国論がまとまっている訳では
ないのである。
地方は「脱官僚」よりも公共事業、農家補償等で金を落として欲しいと思って
いるようにみえる。だから民主党がムダ排除といって公共事業を切ると、地方
の支持を失うことになるのではなかろうか。
しかし反対に、公共事業を続けると都市部が怒り出すだろう。
政治的にどう折り合いをつけるのかは大変難しいように思う。
都市部、地方部の国民の意識を選挙の切り口で見たが、その意識の源はやはり
「金がない」ことがベースになっていることは確かである。そして両者とも、
経済成長は無関心で、今の枠の中で何とかやりくりしようと考えているようで
ある。
なぜ、経済成長を考えないで、今の税収の中だけで考え、そして税収不足の時
には増税仕方なしと考えるのであろうか。私にはとても不思議な思いがするの
である。
私の好きなブログに、エコノミストの三原淳雄さんの、「三原淳雄の言いたい
放題」がある。最近のものにこんな話があった。
┌--------
最近若い金融記者と話す機会があり、「君ならどんな景気対策を考えるか?」
と聞いたところ、「富裕層にカネを使ってもらうこと」という返事が返ってき
た。
そこで「富裕層はどうして富裕層になれたのか」と意地悪な質問をしたところ
「稼ぎから貯金をしたから」という答えが返ってきた。思わずのけぞったが、
金融担当の記者でもこれだから、真面目といえば真面目だが、日本人にはいま
も農耕民族の血が脈々と流れているようだ。
他人から富裕層といわれるようになるには、月給からの貯金だけでなれるはず
もない。自分なりご先祖さまが、どこかでリスクをとって、他人と違うことに
チャレンジしたから富が築けたはずなのだが、
(中略)
昔は、若者を始めとして皆がギラギラしていて、世の中アニマルスピリッツに
溢れていたが、近頃の若者はサラサラしていて「草食系男子」というのは言い
えて妙であるが、最早日本は「肉食系女子」に頑張ってもらうしかないか。
ーーーお兄ちゃんたちも頑張ってよ。
└--------
この若者の姿を示すデータがある。
http://www.crn.or.jp/LIBRARY/DATA/M8/700/M8700028.PDF
http://www.crn.or.jp/LIBRARY/DATA/M2/013/M2013014.PDF
上のリンクは最近の高校生のなりたい職業、下は、1979年の小学生のなり
たい職業のアンケート結果である。
79年の記述欄を見ると、結構な人気だったと思われる「大企業の社長」とい
うのがあるが、2003年の高校生には欠片もない。あるのは、公務員と教師
で、非常に慎ましやかというべきか現実的というべきか、その本質は「穏やか
な」「安定」でくくれる価値観であろうと思う。
実は、子供たちの夢から「会社社長」が消えたことが、新規起業が少なくなっ
ている原因ではないかと思っている。会社社長は格好の良い職業ではなくなっ
たのである。
そして、日本の世界的企業だったソニーが、時価総額でサムソンに4倍近い差
をつけられ、携帯電話器でも日本をガラパゴス=前世紀の遺物と呼ぶ関係者も
多い。企業の新陳代謝が進まず、古い企業が合併などもせず、停滞の20年間
そのまま残っているのは、他国にない現象である。
この澱み、これが日本の患っている慢性的な病気だといえる。
ーーーこれが、失われた20年間のGDPを停滞させた原因である――――。
確かに、失われた20年の前半10年は、金融機関の不良債権処理ができずに
取立てが滞るから貸し出しもならず、お金が回らない状態であったことは確か
であるが、
結局はこれも、痛みを伴う手術を忌避した為に起こった現象で、それ以降もズ
ルズルと時間だけ経ち、小泉総理の登場まで不良債権の処理ができなかった。
その後、景気は不透明な状態を脱するが、企業は大胆なことを避けた消極的な
活動に終始したのである。
慢性病の原因は、三原淳雄氏のブログにある通りの「ギラギラ」の欠如であり
リスクを回避する気持である。これが根本にあるために、新しい起業もなされ
ないし、また既存の企業も大胆な構造転換をして国際競争力を十分に持つよう
なこともなかったのだ。
いろんなブログで、経済成長が必要と説くと、成長する必要などない、と経済
成長を否定する人が結構多く投稿する。それは気持の上で、もう疲れたという
気分がいわせている言葉ではないだろうか。
その国の時代の雰囲気に、その国の構成員の年齢は大いに関係している。
例えば日下公人氏が「戦争の嫌いな人のための戦争学」の本で、数値的に検討
すると、人口問題学者ガストン・ブートゥール氏の説が殆ど全ての事例に適合
すると述べている。
「15〜25歳の人口比率が全体の15%を超えるとその国は戦争を起こし、
10%以下になると戦争をやめる」という。----現在でも確かにそうだ。紛争
勃発地域は若く、子供たちが多い。
日本も、若者年齢が多数を占めていた1970年前後は、学園紛争や核マル、
中核派などの紛争が続いていた。しかし、老人比率が高くなるとそういう気も
なくなってしまっている。
「ギラギラ」がなくなっているのは若者の問題ではなくて、老人比率の高さが
そういう雰囲気を醸し出して、若者に感染させている危険性が高いと思う。
だから意図的な政策を打たず、放置していると現状維持の「おだやかに」過ご
すことを選ぶ国民のままでいるだろう。そして、昔から比べても異常なほどの
自立心のない、依存症傾向の国民になってしまっているのだが、その状態から
脱皮はできないと思われる。
さて、そういう病の根本を考えると、民主党という薬は、安易なばら撒き策が
殆どで、経済成長策はなく、国民の依存症を自助に向けていく力強さもない。
したがって私の診たては、病は重くなることはあるがこれからも続くだろう、
ーーーということである。
= この稿おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛
◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 44人 (67%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 12人 (18%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 6人 ( 9%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 1人 ( 2%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 3人 ( 5%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛
┌──────────「Hal さん」
ご意見に大筋賛成です。ただ、少子高齢化、それにつながら「草食系男子」に
ついて、ちょっと違う視点から考えてみたいと思います。
宮沢賢治は、未来の人類は『天人』に進化すると考えていました。その時に、
遺伝子がどのような構成になっているか想像もつきませんが、現時点でも遺伝
子XYを持つ個体は、XXを持つ個体より進化した存在だろうと考えます。
何故なら、現人類を抜きんでたと思われる仏陀もキリストも、その真理の継承
者として「僧」「神父」を指定してますし、キリストの天なる神が「父=男」
なのもその傍証になると思います。
イエスはマリアと「父」が交合ったのでも、マリアの卵子に細工したのでもな
いことは、遺伝子の法則から推測できます。神は、マリアの子宮を使って自ら
のクローンを作ったのでしょう。
我が国における伝承でも、現人類の進化の先にあるのはやはり「男神」です。
造化三神と続く二神は独り神で、その後の五組十柱の神々から男女対の神々と
なりますが、性交はイザナギ・イザナミ神から始まります。
黄泉の国に身罷ったイザナミ神が、蛆をたからせながら八雷神と交合っていた
のはガイア神の豊穣を表すもので、現世の維持のためにはこの女性の産みの力
は必要不可欠なことだったんですが、天に住むイザナギ神には耐えられなかっ
たんでしょう。
逃げ帰った筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原で禊ぎをし、独りで沢山の神産み
をし、最後に左目、右目、鼻から三貴子を得ます。
このように、洋の東西を問わず、神の世では、現人類を超越した存在、どうや
らXY遺伝子を持つ存在が、人工孵化かクローン人間を作ることによりその後
継者を作っていたようですね。
現代の技術的進歩は、既にそのレベルに達しているのを潜在的に感じ取ってい
る青年男子は、今イザナミの縛りから無意識のうちに抜け出ようとしているよ
うに思えてなりません。
「ホモ」も「レズ」も、子供を作らないという点では「半歩」だけ現人類を抜
け出しているんですが、彼らはまだ「粘膜の接触」から自由ではありません。
「草食系男子」は、そこからさらに「半歩」進んだ、いわば「天人の先駆け」
ともいうべき存在なのでしょう。「粘膜の接触」を生きがいとしている皆さん
からはご不満でしょうが、人類はいずれ形態的には「ペニスもフグリも金玉」
も、「ヴァギナもクリトリスも子宮」も消失する方向に進化(神化)するものと
思われます。
ただ、陰陽左右+−の性質は、宇宙存在の根本命題でしょうから消失すること
はないでしょう。
現時点ではまだ確かな存在として認められていない「草食系男子」に対して、
人類の進化の前線にある勇敢な存在であることを自覚して、大いに胸を張って
頂きたいと心からなるエールを送りたいと思います。奥ゆかしいのが「天人」
たるゆえんかもしれませんけどね。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
ご賢察、誠に感服ですが、ご返事に困っております、というのが正直なところ
です。神の領域は不案内でございまして、そういう方向に進化(神化)するとい
われましても、そうですか、としかお答えできないところが申し訳ないところ
でございます。
ただ、生物の進化を見ると、両性具有の方向は本当なのかと、不届きでしょう
が思っておりまして、両性具有から2つの性に分離するのが今まででした。
ーーーしかし、先行きは仰るようになるのかもしれません。
ただ、残念なのは、草食男子がどのような変転をたどるのかを見届けられない
ことです。
└──────────
┌──────────「御座候さん」
私も先の衆院選では、小選挙区は民主、比例代表は「みんなの党」に入れまし
た。=私の選挙区では、みんなの党の候補は立っていませんでしたので。
なので「みんなの党」の健闘には満足していますし、日本もまだまだ捨てたも
のじゃない、と思いました。
世論調査の結果からも、国民が民主党政権に期待しているのは、高速無料化や
子供手当などのバラマキ政策よりも「脱官僚」「利権政治からの脱却」のほう
であることは明らかです。民主党政権には、国民の期待に応える義務があるは
ずです。
そして「脱官僚」が単なる官僚叩きに終わることなく、規制緩和を通じた経済
成長へと結びつくよう、望んでいます。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
私も同じような期待をしているのですが、本来民主党は規制緩和をあまり謳わ
ない党なんですよね。どちらかというと、過剰規制気味のところがあって、ど
うも法学脳の方が多い。
一番困ったなと思うのが、真面目だからマニフェストをすべてやろうとしてい
ることです。ーーーマニフェストの支持が低いのに政権が転がり込んできたこ
とを忘れています。
自民党の総裁選を見ていると、この党は終わったなと思いますね。残念至極で
すが河野氏は選出されないでしょうし、他の2人では来年の参院選はまた壊滅
でしょう。
ーーー本当にみんなの党に頑張ってもらうしかないですね――――。
└──────────
┌──────────「緑の保守派の尊野ジョーイさん」
ずっと体調を落としていたのですが、少しずつ元気が回復しています。
先の選挙なのですが、小選挙区は地元の自民党改革派の若手議員に投票しまし
た。(惜しくも落選しましたが)
それで、比例区なのですが、なんということか、病気で調子が悪く、ニュース
とかをよく見ていなかったため「みんなの党」の比例が浅尾慶一郎だというこ
とを知らずに投票しなかったのですね。
そもそも、みんなの党がどういうものかよく判っていなかったですし。
(PCにもさわっていなかったので)
それで、ボーっとした頭で、うかつにも福祉はやっぱりここだなっと、なんと
共産党、、、に投票してしまいました。(>皿<)
なんとも軽率な行動だったと思います。(_;ウウ
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
お元気になられて、何よりでございます。
まあ、民主には入れたくないし・・で病み上がりですから、情報にも断絶して
おられたでしょうし、仕方のないことだと思います。しかしこの負け方、言い
ようがないですね。
総裁選を見る限り、再生は困難でしょう。来年の選挙で負けたら、民主に鞍替
えする連中がどんどん出てくるのではないでしょうか。そういう意味で、渡辺
喜美代表に頑張ってもらわないといけません。
└──────────
┌──────────「RANKOさん」70代@男性@九州
冠省、「坂の上の雲を!」を大変興味深く読ませていただきました。
マッカーサー議会証言の認識錯誤ーーー2008/12/24の四頁中、
「1946年1月30日に来日した極東委員会代表に対しての マッカーサー
の談話」の原典(英語原文、収蔵館をも含めて)御教授くだされば幸甚です。
宜しくお願いいたします。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
RANKO さんが質問されておられますのは、私のマッカーサー議会証言の稿に対
する、tengori さんが質問をしておられる中に引用されている文です。
http://chinachips.fc2web.com/argue3/081224.html
引用しておられる史料がどこかにないかと検索したのですが、出てきません。
tengori さんのアドレスをご存知でしたら、問い合わせてあげてください。
不明でしたら、極東委員会ですから米国の政府資料の中にはあると思います。
tengori さんの文からしますと、渡辺昇一先生のグループの方の著作等にある
ものを引用されての質問ではないかなと思います。
└──────────