敗戦の将、何をや語るであるが、記者団の質問に、口を曲げて応えていた。
「敗れた原因は幾つものことが重なっている訳で、ひと言で言うことはできま
せん」と宣っておられたことに対して、口に出して言う人は誰もいないけれど
「ご冗談を!あんたが原因ですよ!」と心の中で思った人は多いはずである。
本当に「機」の読めない人であった。それは、自分がいかほどの人物であるか
を客観的に診る事のできない人の特徴でもあるが、この内閣の、支持率の推移
をご覧いただければ分かるであろう。
彼は、「定額給付金を実現すれば支持率は上がる」と信じていたらしい。しか
し、殆どそのような効果はなく、2兆円は国民の懐へ消えていった――――。
麻生内閣の支持率急落は、11月下旬から12月上旬に掛けてである。
何があったからといえば、定額給付金を出してきたこと。その給付を一律にす
るかどうかの中で、金持は辞退して欲しいと言い出しり、やめたりしたこと。
選挙を年内にやらず景気対策を先行させたこと、そして漢字の読み間違いを繰
り返して報道されだしたこと、などである。
この段階で国民は麻生内閣に見切りをつけたようである。そして自民党の支持
率も急落して、少し低いとはいえ民主党とほとんど並んでいたのに大きく差が
ついた2位に落ちるのである。
http://www.imi.ne.jp/abc/cgi/ise_genre.cgi
そしてそれ以降、若干の敵失=小沢氏秘書逮捕、民主党代表交代)による小さ
な回復が見られるものの、一貫して落ちるだけであった。その挙句に予告解散
という手で、自らの保身を図り、大負けになる選挙に入っていくのである。
この人は世の仕組みが分かっていないのか? それともひょっとして民主党の
協力者であったでは? と疑わせるタイミングでの総選挙であった。
しかし、自民党はなぜこれほどの大敗を喫したのであろうか。
ーーーそれは、麻生氏個人に帰せられない原因もあるのだと思う。
いま日本で起こっている種々の不具合の元をたどれば、全てがひとつの原因に
たどり着く。
ーーーそれは、日本が貧しくなっていることである。
格差といわれている問題は、日本人が平均して貧しくなっているのではなく、
不均衡に貧しくなっている状態をいっている。ーーー中国との競争で、賃金が
中国に引っ張られて下がるのだが、正社員は下がらず、非正規雇用の人の賃金
が極めて安くなっているのである。
年金問題も、確かに社会保険庁の杜撰な事務処理が起点になっているが、日本
が豊かであれば、年金を当てにせずとも過ごせた人々は多かったであろうし、
国庫が豊かであれば、消えた部分を補填するために臨時支出で埋め合わせがで
きたであろう。
医療問題も、医療費の膨張が国家の支出を圧迫するので、それを縮小する為に
医師数を絞ってきたことが遠因になっている。
地方の困窮は、税金を地方に、公共事業などで配布するシステムが機能しなく
なったことから起こっている。
あれもこれも、税収が60数兆円から40数兆円に減ったことが原因である。
それに加えて、扶養家族ともいえる老人が非常に増えていることが、貧しさを
更に加速している。一人当たりのGDPが世界一だったのは1993年である
が、2007年には23位となっている。
順位が下がっていること自体が貧しくなったということを示してはいないが、
所得が、バブル崩壊後も減っているし、貯蓄率も減っている等、日本が貧しく
なっていることは確実である。しかし誰もこのことは言わず、
ーーー格差だとか、医療崩壊だとかの、別の現象面の記述に留まっている。
自民党の基盤は、こうなる以前の、豊かさを配布する時代にできたものであっ
た。産業が生み出す国富を税収の形で吸い上げ、それを地方に公共事業という
形で配布したり、郵貯・簡保などで集めたお金を、財投の形で地方公共団体な
どに貸付けて公共事業を全国で行ってきた。
だから、地方の公共事業の要望を中央に伝達し、政治官僚を動かしてお金を運
んでくることが議員の仕事であったのだ。
しかし、
バブル崩壊後の長い停滞後に於いては、中央から地方に運べる豊かさはもうな
くなっているのだから、少ない富を、不満を最小化するように配分することが
政治の仕事になっているはずなのに、相変わらず日本の最盛期の時代と同じ機
能を果そうとして政治は動いてきたのである。
それが上手く作動しないことが判明したのが、小渕総理の公共投資の大盤振る
舞い施策で、単に政府の債務を増やしただけで景気の浮揚はなかった。橋本竜
太郎首相で改革をやろうとしたが、形だけで終わってしまった。
この時に、変人小泉純一郎氏が出てきて、初めて政府予算の縮小を試みた。そ
れが、地方への公共事業という名目での金の再配分の縮小で、道路予算の削減
でもあった。ーーーそして、道路公団の民営化を、妥協しつつも一応の形にこ
ぎつけたのである。
本来、日本の「世界の工場」機能を中国に奪還されたときに行うべきであった
産業構造の変革がないままに、バブル崩壊、中国の台頭の時代に入った。
米国を中心とする世界の、工業製品の生産で成り立つ企業群と、その得た富を
地方に配分する機構は、米国との貿易黒字を前提にしていたものであり、地方
は、その受け皿としての土木建築業が主たる産業になるような土建国家であっ
た。これらが、
貿易黒字の減少と共に他の産業に転換しなくてはならなかったのに、その機を
逸したのである。
郵政選挙は、この旧い利権を媒体にした配分機構の維持派と、その破壊を目指
す勢力との抗争であったといえる。国民は、国家予算の縮小、それに伴う公共
事業名目の配分を否定する小泉改革の勢力を選んだのである。
もし、この路線で自民党が権力基盤を再構築しておれば、自民党は延命しただ
ろうといえる。ーーー旧い勢力の代表は、現在、国民新党という名の政党とし
て存続するが、今回も、200兆円の公共投資を政権構想として打ち上げて選
挙に臨んだが、
不本意にも代表の綿貫民輔氏が落選したりして勢力を落とした。ーーーこの党
は、産業機構の変革など全く念頭になく、政府が金をばら撒けば景気が浮上し
て昔のよき時代のようになる、と、あり得ないことを信じているのだろう。
しかし、小泉氏の後継の安倍氏は、郵政反対で除名された議員をすぐ復党させ
て、結局昔通りの富の配布を行う姿に戻りはじめた。せっかく郵政選挙で利権
から離れる状態を作ったのに、安倍、福田首相の時代には、改革は止めて旧い
自民党に戻りつつあることを国民は察知していた。
特に、麻生総理の時代になって、昔どおりの利権トライアングル構造の復活が
顕{あらわ}になった。総理の「私はもともと郵政民営化は反対だった」発言で
度肝を抜かれた国民は多かったのではなかろうか。
不利益とか辛抱を配布するのが政治の役割、から、利権を配り歩く先祖がえり
を示しているのだから、およそ時代に合わない税金を食い物にする政治の復活
を感じたのであろう。
それなら、
民主党が、不利益とか辛抱を配り歩いたか、といわれると全く逆である。
バラマキといわれるほどに国民に甘い顔をしてお金を配り歩いている。しかし
野党だから利権を持っているわけではなく、公務員改革でも天下りの全面禁止
などで、自民党の政官財癒着の構造を攻撃してきたのだから、それから縁遠い
ことをやるだろう。ーーー天下りは禁止するだろうという国民の期待は、断然
自民党より強い。
しかも民主党の支持母体は、過去の利権とは縁遠い分野で、労働組合とか利権
官僚と企業に貪られていると被害者意識を持つ一般市民である。=この部分に
「政権交代」の風が吹いたと思われる。
このように、マクロで流れを見ると、今後の方向が見えてくるのではなかろう
か。
先ずいえるのは、
民主の打つ施策では日本の現在の問題を解決できない。余計に悪くしかねない
政策が計画されている。ーーー例えば、脱官僚が成功しても、金がないことの
解決策にはならないだろう。
民主党がムダといっている金も、今まで毎年消費されているのだから、それな
りの財政効果はあるわけで、使途目的が変わることで潤う人達がいる反面で、
ーーー干からびる人達もいるだろう。
どちらが世間受けするか、という問題はあるが、使い先が変わるだけで景気が
良くなることはあり得ない。ーーー今まで、或るものに使っていた1000円
を、別のものに使うだけだから景気が良くなること等とは関係がないだろう。
また、このことで内需拡大になるなどということは滑稽で、あり得ない話なの
である。
= この稿おわり =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛
◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 49人 (47%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 24人 (23%)
◇ スミマセン、よく分からない -------------------------- 14人 (13%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 4人 ( 4%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 14人 (13%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛
┌──────────「tenyoufoodさん」
とても解りやすい。
┌--------
1)一人当たりのGDPが世界一だったのは1993年であるが、2007年
には23位となっている。
└--------
伸び率が失速してしまったのだ。
┌--------
本来、日本の「世界の工場」機能を中国に奪還されたときに行うべきであった
産業構造の変革がないままに、バブル崩壊、中国の台頭の時代に入った。
└--------
ここは、「バブル崩壊、中国の台頭の時代に入り、世界の工場になって、日本
の世界の工場機能を中国に奪われたときに行うべきであった産業構造の変革が
ないままに」のほうが適切だと思う。
ソ連が崩壊したから、中国は後顧の憂いなく改革開放に突き進むことができた
のだ。
民主党は、無駄使いを止めると言っているが、肝心の節約は言っていない。
ホントは節約を言いたいのだけど、まだその時期ではないと思っている。
ーーー自民党には絶対にできない芸当だと思うよ、節約=予算圧縮なんて。
紋起さん、「産業構造の変革」について、一発論陣を張ってください。
どのような、「産業構造の変革」を考えているのか、興味があります。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
日本のGDPが伸びない原因の一つは、新しい産業となる新規事業の起業数が
非常に少ないことです。最近では、倒産企業数が新規起業数を上まわる状態が
続いていたりしました。
そして、GDPを伸ばすという話に、必ず伸ばさなくてもいいではないかとい
う論がどのブログを見ても投稿されています。私は、精神的に日本が萎えてい
るように感じられて仕方がありません。
これを打ち破る為には、成功例を作らないといけないですね。でも、
成功例の一つであるユニクロを、同志社大の浜矩子教授が、諸悪の根源のごと
き指摘を文春でしていましたが、こういう教授がNHK御用達ですから困るの
です。
ユニクロを日本がやらなければ、他国がやってもっと日本に金が落ちないこと
になるのに、この程度の理解の人が教授になるのですから、ガックリします。
産業論(産業構造の変革論)は、いずれ寄稿させていただきます。
└──────────
┌──────────「Cosplayさん」
素晴らしい文章です。
┌--------
結局昔通りの富の配布を行う姿に戻りはじめた。..自民党に戻りつつあること
を国民は察知していた。
総理の「私はもともと郵政民営化は反対だった」発言で度肝を抜かれた国民は
多かったのではなかろうか。
└--------
その通りです。民主党が庶民の心を読めたね。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
民主党が庶民の心を読めたのかも知れませんが、自民党が全く読めなかったの
が原因です。あるブログに書いてあったのは、麻生総理の顔を、見るのさえ嫌
だという女性がその人の周りに沢山いたそうです。
なぜ嫌なのかを聞くと、麻生総理の「上から目線」には虫唾が走るのだそうで
す。確かに、いつかハローワークを訪問した時に、就職口を探している求職者
に説教していた内容は、なぜそんなことを偉そうに言うのという感じでした。
ーーーことほどさように庶民感覚を外して平気でしたね。
└──────────
┌──────────「ana5さん」
「民主党という薬は日本が患う病に効くのか」この疑問は、日本の国家体制に
対しては、平和的権力移行が行われたのであるから、民主党は日本にとって良
い薬になった。個々の政策については良いのもあれば悪いのもあるでしょう。
もう1つ、民主党内閣は成立していない。何一つ政策を実行していない。
実行するであろう、と喧伝されている政策を基にした色々な議論が行われてい
る。〜〜〜それが面白い。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
そうですね、政権が移ったことは細川政権以来ですから、なんとか良い方向に
動いて欲しい気持が半分、上手くやれるのか、不安な気持が半分です。ただ、
政権を取ったから何でも思い通りにやるのだというのは、反発を受けます。
山梨日教組の元委員長だった輿石議員が語ったそうですが、教員免許更新制度
の廃止法案を出すと明言しました。しかし、こういう日教組の考えは、賛同す
る人が少ないでしょうね。
そして、そんなことをやっていると足元をすくわれるはずです。国民の為にな
る政策をやらなきゃ、交代した意味がないですよ。
└──────────
┌──────────「hideおじさん」
いつも興味深く読ませて頂いております。
今回の総選挙は、国民への金の配り方ばかり取り上げられ、肝心のこれからの
日本はどうあるべきかということは語られていなかったように思えたのが残念
でなりません。
地方の長である知事の多くは「地方分権」ばかりで、「それしかないのか」と
言いたくもなりました。分権すれば何でも解決できるわけではないのに、結局
これも金の分配方法にしか過ぎないように思えます。
私たちの「生活が一番」であることは言うまでもありませんが、それは日本と
いう国があってこそ、ということも論じて欲しかったと思います。
兎にも角にも次期政権を担うわけですから、民主党さんには頑張ってもらいた
いですが、私たち自身が政治に対する考え方を「Change」しなければ、どんな
薬をもってきても効かないのかもしれません。
次回、楽しみにしております。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
全くご指摘の通りです。
言葉が、「政権交代」という党利党略の言葉と、「ムダ削減」のような、非常
に近視眼的なことに終始しましたね。目線は遠くも見なくてはならないのに、
身近でかつ短期思考ですから、このツケをどこかで払わされるのが怖いです。
政治で一番大事なのは国家観ですが、全く語られることなく終わりました。
小沢氏の術中にはまった訳で、マスコミも悪いですね。そして、財源問題に終
始して、国家的なことは何一つ議論されてないですから、こんなことで「政権
選択」してはいけませんよ。
└──────────
┌──────────「大陸流浪人さん」
やはり、これは OJIN さんではなかった。ほっとした。
読んでから誰の記事か確認してよかった。(笑)
こんなの OJIN に似合わない。やはり・・・柔らかいのが似合う!
└──────────
▼
┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
・・・ありがとう!・・・と言うべきなのかな〜〜〜
とほほほ、、、こらッ!!!!
└──────────