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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん
☆ 応急処置ばかりの国(中) ―――――――――――― 2009/07/08
法の内容ではなく、党の性格が露呈してくるので、臓器移植法案の審議は興味
深い。

「議論が尽くされていない」と、共産党が党議拘束をかけて全員採決を棄権し
ていることはよく分からない。1997年の臓器移植法制定の時も棄権してい
るのだが、

唯物論を信じている政党なんだから、人の死生について物質的に一番結論を出
しやすいグループのはずだが、党議拘束をかけてまで全員棄権するのは、党の
本質の露見が嫌だからなんだろうか。

「議論が尽くされていない」というのは、革新系用語では「自分の望む結論が
出ていない」という意味で、本当に議論が尽くされいるか否か、とは関係ない
話というのが巷[ちまた]の解釈だ。

社民党は、党議拘束はかけていないのだけれど、衆議院の採決では全員揃って
A案反対であった。同党の阿部知子議員の取りまとめ力が強いせいなのかもし
れないが、

現法より厳格なC案でまとまっているようで、臓器移植を望む人達のことをど
う考えているのか表明しないので、日頃の言動と違っているような感じもして
この党の判断もよく分からない。

民主党もA案反対が多く、公明党も同じである。A案は自民党の賛成多数で衆
議院を通過した。

そもそも、今年臓器移植法の改正案が国会審議されたのは、WHOが総会にお
いて、臓器不正売買防止を目的に、移植ツーリズムの原則禁止を決議する見込
みになったことから、日本の国会においても、2009年になって改正の機運
が出てきた。

----WHOの決議自体は、新型インフルエンザの流行に伴い、総会の開催期間
が短縮され、2010年に延期された。

1997年の法制定から11年間も、不都合な部分の改正もせず放置してきた
のであるが、世界に臓器を求めて出かけることができなくなりそうだから対応
する、という、典型的な「応急処置ばかりの国」の面目躍如というところだ。

私は、臓器移植というのは、極めてきわどいところで成り立っている法的承認
を受けた医療行為だと思っている。臓器を移植しなければ死んでしまうという
患者(レシピエント)は、毎年、数千人いると日本移植学会が発表している。

この方々に提供される臓器は、実は、昔の死亡時点=呼吸が止まり、心機能が
停止し、体温が冷たくなっていくような時点のモノでは、移植しても機能を発
揮しない。

生体細胞には、アポトーシスという、自分の細胞を溶融していく段階があって
今までの死亡と判断される時点ではそれが進行しており、臓器としての機能を
果さないからである。

だから、臓器は生きている時に近い状態で、臓器提供者(ドナー)から取り出さ
ねばならない。もし、生きている患者から臓器を取り出せば、それは医者が殺
人を行ったことになるが、一方、患者が従来の死亡診断の根拠となる心肺機能
停止になってからでは遅過ぎるのである。

したがって、ドナーは生前に臓器提供を自分の意思で決めていたとしても、身
体は温かく心臓も動いているが、もう生きている状態には戻れない段階を超え
ていると医学的に検証できれば、その患者は死亡したとして、殺人でなく医療
行為で臓器摘出を認めようという考えである。いわゆる「脳死」という概念が
これである。

だから、従前の死亡した状態=心臓は止まり身体は冷たくなる)とは、脳死で
は、(体温だとか心臓の活動だとかで)明らかな差が生ずるのである。

しかも、脳死の患者は、多くは突然の事故でそうなるわけだから、家族は動転
しており、脳死を「死」とは受け入れられない場合があることは理解できる。

しかし一方では、臓器移植を受けることができれば健常な生活を送れる人が、
また数多くいることも事実である。そして、医療技術の進歩で、脳死のドナー
からレシピエントへの臓器移植が可能となり、不治の病の克服が可能になった
のであるが、

前述のように、従来の死亡時点では臓器移植はできない、のために死亡時点を
生きてる方向に移動させざるを得ず、このような事情から、常に臓器移植は際
どいところが存在するのである。

日本で臓器移植法が定められたのは、1997年であったが、議員立法で種々
揉めた挙句に制定された。決められた条件は、大きな条件だけを述べれば、
┌--------
1.医師による「脳死」判定があり

2.本人が臓器提供をする意思を文書で提示しており

3.15歳以上である
└--------
を満たせば、臓器移植を可能とした。

これは諸外国に比べて厳しいとされるが、それはそれで一つの考え方であり、
妥当な結論と考えることもできる。ーーーしかし現実は異なった。

日本では15歳以下の臓器提供はしないと決めたことから、臓器移植を受けた
い患者は日本を出て、外国で臓器移植を受けることを継続したのである。

私が、以前、どなたかの投稿にコメントさせて頂いたことがあったが、これは
臓器をお金で漁る、極めてズルイやり方と諸外国から見られても仕方がないか
らやめるべきだと申し上げた。

すなわち、臓器提供の基準と、臓器移植を受ける基準が異なっていて、ダブル
スタンダードでやっているのである。臓器提供側の基準は、日本人の死生観だ
といいながら、臓器を移植してもらう時は、そのような死生観を都合よく放棄
して臓器の提供を受けようというのだから、極めてムシのいい話だ。

しかも、その費用を賄う募金の姿を取り上げて、マスコミは美談として報じる
のだから低劣である。

日本で決めた臓器移植の基準は、日本国籍の人々全てに適用されるべきだから
15歳以下の子が海外で臓器移植を受けるのは禁止されるべきだったはずだ。

臓器移植法は、臓器移植を受けたい人と、提供する人との合意する条件であら
ねばならない。すなわち、これを定める時の政治家は、15歳以下の児童で、
臓器移植を受けなければ生きていけない方に対して、申し訳ないですが死んで
下さいと、患者並びにその家族に伝え納得させなくてはならない。

なぜ15歳以下は臓器移植を受けれないのか、欧米と何が異なるのか、等々の
説明をして、論理的にも感情的にも説得しなくてはならない。もしその説得が
できないような法律を制定したのならば、それは政治家失格である。

「ポッポの本質」のコメントのお答えでも申し上げたように、政治家は正義な
どを振りかざすのではなくて、この場合なら、臓器移植希望の方と臓器提供の
方との間に立って、日本人の死生観にも照らして、これでやりましょうという
合意の形成を進めねばならないはずである。

私は、政治家が面倒なことを避けて、双方に良い顔をしたために、ダブルスタ
ンダードという、臓器提供側に立つ諸外国から見れば極めてズルイ、札束で顔
を張るような行動を患者家族に取らせたのである。

しかもその実体を知りながら、11年間にわたり見て見ぬ振りをして臓器移植
法改正の議論の土俵にさえ上がらなかった。

阿部知子議員のメールマガジンのアーカイブサイトでは、臓器移植法改正に対
する彼女の姿勢を示すメルマガを見ることができる。
http://archive.mag2.com/0000058959/20090618003255000.html

その多くは、脳死判定後何十日間生存した子供の患者がいたなどの事例を示し
て、臓器移植法の改定は改悪であると指弾している。事実、彼女らの提案は、
現行法をさらに厳しくしようという提案であり、臓器移植を願っている患者の
心は理解していないものだろう。

確かに、現在の脳死判定の後も、生存する患者が少数いることは確かである。

そのような場合、臓器移植法を厳しくしたり、廃案にするのではなく、脳死判
定後も生存する子供と、判定後直ぐに死去する子供とを判別する、進化した検
査法の開発を進めるのが正しいやり方だと私は思う。それが、提供者と移植希
望者が折り合える線を形成することになるはずである。

脳死イコール死亡とすることが、申し上げたように際どい点をもっているのだ
から、その判定方法の妥当性の検証なくしては、臓器移植が万人の認める治療
行為とはならない。問題の焦点はそこに存在するはずである。

ーーーしかし、問題の先送りと、痛み緩和の処置だけが得意な国は、そのよう
な視点を持たなかった。

本来すべきことを申し上げると、できるだけ多くの脳死の患者から、国の費用
でデータを取り、それをベースに、どのような判定方法が妥当であるのかを検
討したり、あるいは開発したりする地道な活動が必要である。

ーーー11年あれば十分にできたはずである。

現在、参院で、1年間の脳死臨調をやろうという修正案が出されるようだが、
データなしに議論をしても、声の大きいほうが勝つことで終わる。単なる見せ
かけのアリバイ工作でしかないと思う。

日本人の死生観云々とマスコミがいっているが、私は殆ど関係がないと思って
いる。もし、脳死した人が100%、3〜4日後に身体が冷たくなる、古くか
らの死を迎えるのなら、脳死を死とすることに反対の人は、きわめて少ないだ
ろう。

それに反する例などが出てくるから、脳死と判定しても生きているのだという
話が執拗に出てくる。

臓器移植は殺人だと告発する本を書いている著者は結構多い。しかし不思議な
のは、妊娠中絶を告発する本を彼らは出版していない。

中絶をしなければ100%近くこの世に生まれ出る命に対して、22週間以内
なら一定の条件(経済的条件でも可)が整えば殺人としないのだが、実に奇妙な
ことに、脳死判定での臓器移植は殺人だと告発している。

私の読んだ限りでは、脳死と判定されて、意識回復まで戻った例は知らない。

どちらのほうが罪深いかといえば、私は妊娠中絶だと思う。臓器移植は殺人だ
と、目を吊り上げて告発する人が、なぜ妊娠中絶は止めろという本を出さない
のかといえば、多分「慣れ」のレベルが異なるだけなのかもしれない。

しかも、臓器移植は年間数例〜多くて100件だろうが、中絶は年間30万件
近くあるといわれている。政治で人の死を決めてもよいのか、などの論を舌鋒
鋭く述べる論者がいるが、ーーー母体保護法で、22週までの生命を絶っても
殺人にならないというのも政治が決めたことなのだ。

言いたくはないが、この論者さん達は、心底から命を大事だと思っている訳で
はないのだろう、と推測している。

私が興味深く見たのは、仏教関係者のアンケートであった。

反対が結構多かった。だが、お坊さんなら「金光明経」を習っているはずで、
そこには、釈迦がその前世で、餓死寸前の7匹の仔を持つ虎に我が身を与えよ
うとした説話があったはずである。国宝「玉虫の厨子」にその絵があり「捨身
飼虎[しゃしんしこ]」図と名付けられている。

他人に臓器提供を強要することはないが、せめて自らは釈迦の教えに従う僧が
おられてもおかしくないはずだ。しかしそのような雰囲気は、アンケートから
は見えなかった。

カソリックとも異なり、仏教関係者から中絶は止めようという運動も聞いたこ
とがない。〜〜〜ちゃっかり、水子供養の商品だけは用意しておられるだけで
ある。

宗教関係者だから生命をどう考えるか、などと問いかけるのはやめたほうがよ
いと思う。

                        = この稿おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 読後アンケートの結果。 ┗━┛
◇ この説に賛成 ---------------------------------------- 60人 (73%) ◇ どちらかといえば賛成 -------------------------------- 12人 (15%) ◇ どちらともいえない ---------------------------------- 4人 ( 5%) ◇ どちらかといえば反対 -------------------------------- 2人 ( 2%) ◇ この説に反対 ---------------------------------------- 4人 ( 5%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「Hal さん」60代@男性@自営業@海外 石橋貴明なら知っているんですがね。美智也以外は、三橋WHO?ですね。 日本人が優れていないからこそ、この段階で1千万人移入は怖いと言ってるん ですけど――――。  おっしゃるように、行き着くところまで行き着かないと、この国の再生は難し いのでしょうね。 今後とも緻密なご論考を、楽しみにしています。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
今回の選挙の結果を見て、衆議院選挙の結果も推測できるのですが、たぶん行 き着くところまで行き着くプロセスが始まったのかなと思っております。 Hal さんの一番恐れておられる〇ャイナから1千万人の移民を受け入れる話が 実現性を帯びてきたようですね。ーーー対米開戦を雀喜した紀元2601年の 国民の姿がダブります。 └────────── ┌──────────「にかいぼうさん」 主題の「応急処置ばかりの国」という点ではまったく同感ですが、臓器移植法 に関しては色々難しい点が多いので、私なりの感想です。 まず、医学的に、脳死は人の死であることに疑いはありません。なぜなら心臓 移植は可能でも脳移植はありえないからです。 問題なのは、脳死判定技術と基準の信頼性と実施方法であり、それらが本当に 諸外国と比較して間違いないものなのか、であります。以前は、移植推進派の 医学会からの圧力により、米国などの基準よりも甘かったと聞きます。 また、その基準作成の経緯もあいまいで、問題の多いものだったと聞いており 脳死とはどういうものなのか国民の理解を得られていないと思われます。 その良い例が、この法案が話題になった時、とある民放のニュース番組で「何 年も脳死状態の子供を抱えているお母さんはつらい思いを、、」などと訳のわ からない事をほざいておりました。 「それは植物状態だろ」と思わず突っ込んでしまいましたが、脳死と植物状態 の違いが報道関係者にすら理解されていない現状で、議論が正しく行われる訳 がありません。 それと、A案が、子供に対する臓器移植のチャンスを最も広げるものであると は思われますが、たとえこの案が成立したとして、国内で臓器移植を待つ子供 の数と実際の臓器提供数には大きな差が生じると思われます。 その場合、どのような優先順で提供が行われるのか、命の軽重を決めてしまう ような判断をだれがどのような手順で行うのか、が決められないままこの法律 を成立させ、あとは「市場原理」にまかせるのでしょうか?ーーー大きな問題 だと思います。 たまたま条件の合うマッチングが1組しかなければ良いですが、複数の候補が あった場合----おそらくそのほうが圧倒的に多いと思います----現状は、どう やって決めているのでしょうか? 病状の進行度ですか?登録順ですか?抽選ですか?提供者の親に決めさせるの ですか?ーーーみんなが納得するルールは決まっているのでしょうか。 また、「海外で子供の臓器移植ができなくなる」からこのような法改正を行う のではなく、「臓器移植は同国内のみに制限しましょう」という国際的コンセ ンサスを支持することが、日本としての本来の姿であると考えます。 まず、日本人の他国での臓器移植を原則禁止とした上で移植法の改正議論を行 うべきと考えますが、いかがでしょうか?
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
仰るように、先に他国での臓器移植を原則禁止する法律を提出すべきでしょう ね。法律の制定と、その実行の間には、具体化に関してなすべきことが沢山あ ると思います。 少ない臓器提供に対しての順位はどうするのかなどは、もめる原因になりうる でしょうね。 現在のレベルが高いはずがない訳で、日本国内で移植施術をやると、必ず、や らずとも良いのに売名でやった、などと痛くもない腹を探られることが多いと 思いますし、事例が少ないですから研究も進んでいないだろうと思うのです。 しかし、臓器移植でしか助からない人たちも多いのですから、再生医療が進化 するまでのつなぎとしても、大事な医療行為だと思います。 └────────── ┌──────────「しょーちゃんさん」 ご意見を拝見して、自分自身の思いがおかしくないことが再確認できました。 なぜ15歳以下がダメなのか、なぜ脳死ではいけないのか、なぜ本人意思では なく家族了解なのか、ーーー賛否それぞれの論者政治家マスゴミは、きちんと 説明して頂きたい。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
そうですよね。なにも法案を出して採決をする時でなく、もっと余裕のある時 に議論し、十分にデータを収集して、それに基づいての専門家の議論を踏まえ て意思決定をするようにしてもらいたいものです。 マスコミの不勉強はこの頃当たり前になっているようでして、我々読者が大人 しいせいなのかもしれません。 └────────── ┌──────────「緑の保守派の尊野ジョーイさん」 紋起さん ┌-------- 若者が「良い子」症候群で、年配者の言うことを聞き過ぎますね。 └-------- たとえ年配者であろうが、最低限の礼儀とマナーを身につけていない人間を、 私は小動物と見なします。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
コメントの主旨とは関係ないかもしれませんが、若者は礼儀とマナーを破壊す るぐらいのエネルギーをもって欲しいと思います。行儀よく革新を行った人達 はいないのではないでしょうか。 革新を成功させた後エスタブリッシュメントになったら、礼儀とマナーは勝手 に身に付きます。明治維新の原動力になった人達で、礼儀とマナーでお手本に なるような人はいなかったと思います。 礼儀とマナーは、既得権益層に対する忠実さを示すものだ、といえないでしょ うか。 └──────────
本当にそうだこのとおり!‥‥と思われた方!「誰でもできる!1人1日1回の愛国活 動」は、ここをクリックして頂くことからはじまります!ーーークリックして頂くと票数がアップして、この問題を多くの 人々に知らせる事ができます!
    
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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