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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん
☆ 足らざるもの(完) ――――――――――――――― 2009/06/03
「足らざるもの1〜4」で述べてきたことは、「日米どちらが悪いか」などと
いう話ではない。戦争になるには、財貨を奪う目的で片方が一方的に侵略した
ような場合を除いて、双方に責任があることが多い。

私が究明したいのは、(自律的に良かれと思って)選択を重ねた到着点が、勝て
ない戦争をやらざるを得ない状況であった理由を考えて、この次にはそうなら
ないようにしようということであり、そのための課題は何かであった。

ーーーしかし、世の中には異なる見方で大東亜戦争を論じている方々が多い。

過去においては、国民の敗戦によるどん底生活の悲哀の心情に乗じて、主とし
て左翼の構築する軍部=日本悪者論が幅を利かせていた。

この論の基本は、軍隊を持たねば敗北して苦しい生活をすることはない、とい
う、極めて単純な考え方で、空想的論理であったが、ソ連の解体、中国の国家
資本主義への転換などで共産主義の輝きが失せると同時に、左翼の主張は往時
の勢いを失っている。

しかし、その残渣は根深く残っているし、その復活を図る者もいる。

これに対して、ソ連の崩壊後に、日本は侵略戦争をした悪者だという左翼の歴
史認識が自虐であるとして、その呪縛から開放する運動が、右の論者から起こ
り「新しい歴史教科書をつくる会」が組織され活動を続けておられる。

そういう論者に近い渡部昇一氏の著書では、仏印南部進駐はどのように取り扱
われているのだろうか。ーーー「渡部昇一の昭和史(正)」を見てみよう。

実は、渡部氏の昭和史に仏印南部進駐は出てこない。

この時期あたりの前段に、アメリカの日本人に対する人種差別」が書かれ、日
本が有色人種であることだけで不当に取り扱われ、日本人の中にそれに対する
不満が鬱積していたことが述べられている。そして、

しかもアメリカは、先に述べたように日英同盟を解消させ、さらには開戦前、
ABCD包囲陣を作って日本を経済封鎖し、鉄鉱石一つ、石油一滴入れないよ
うにした。いうまでもないが、石油や鉄がなければ20世紀の国家は存続しな
い。と、石油禁輸に飛ぶ。
┌--------
これは日本に『死ね』と言っているに等しい。実際、これによって日本は瀕死
の状態に陥った。最初、海軍は対米戦争をやる気がなかったが、禁輸によって
石油の備蓄を食い潰すしかないという昭和16年になって、はじめて開戦を決
断する。

さらにアメリカは日本に追い撃ちをかけるように、『ハル・ノート』を突きつ
けてきた。
└--------
というように、開戦となった経過が述べられている。

渡部氏が書いておられるのは、米国の人種差別の話から、石油禁輸、そしてハ
ルノートと、それらの出来事を結ぶ補助線を引き、
┌--------
アメリカはシナ大陸に利権を求めたいがために、日本をイジメ過ぎた。排日移
民法を作り、のちには石油を止めることもやった。また真珠湾には大艦隊を集
結させた。

これは、息が止まる寸前まで首を絞め、かつ、ナイフをちらつかせて脅したの
とまったく同じことではないか。
└--------
と、米国が日本をイジメ過ぎたから戦争になった、と結論づけておられる。

感情に訴える記述が多く、米国が自国の利権を追求して一方的に日本を脅迫し
日本は耐えに耐えたが、限度を超えたので開戦したと記述されるのだが、私は
このような視座を支持しない。

日本は、石原莞爾のシナリオを筋として進めていた部分があるから、「イジメ
られる」ような情けない形ではなかったと思う。ただ、三国同盟で独と組むこ
とによる対米抑止効果を過信し過ぎで、迷路に入りこんでしまったきらいはあ
るが、

渡部氏のお話は、自虐史観の「侵略」を否定する為に日本を「弱弱しいイジメ
られっ子」に落とし込む、別の意味での自虐史観ではなかろうか。そのような
「無垢・無罪」路線は、「東京裁判史観」否定の場面でも踏襲されている。

確かに日米戦争に於ける勝者側の見方である「東京裁判史観」が存在すること
は事実であるが、その史観を否定する為に、マッカーサーが戦中・戦後行って
きた膨大な発言の中の、僅か一言にすがりつく姿は肯定しがたい。

私は、「東京裁判史観にあるような善悪の視点で戦争を見るな、日本にも十分
言い分がある」と断言するだけで十分だと思っている。

私は、渡部氏らが、左翼の非難をものともせず戦ってこられたことには敬意を
払っているし感謝している。しかし問題なのは、軍部の犯した間違いを問うこ
とが東京裁判史観だ、と決め付けるような論まで同調者から出てくることだ。

我々が常に持たねばならない考えは、「日本無罪である」論よりも、「負ける
戦はするな、勝つ戦をするのだ」である。すなわち、戦争は「善・悪」で区分
けするものではなく、「勝ち・負け」だけであり、負けた側は「賢くなかった
弱かった」のだろう。

だから、どのように「賢くなるか」、如何にして「強くなるか」が課題として
浮かび上がる歴史記述でなくてはならないと思う。

「日本は悪くなかった、米国にも悪い点が多くあった」の主張のたどり着く先
が、軍部や政府の犯した過ちに目を背けての「誇りの持てる日本」なら、再び
負ける戦争を、苦渋の決断でやらざるを得ないことになる時代の再現だろう。

ーーーそのような心配が、現実に現れている。

先日、本屋で「田母神塾」を立ち読みして驚いた。

「対華21ヶ条要求」の項で、全文が小さい字ながら次の頁に掲載して、「読
めば分かるように、酷い要求ではなくごく当たり前のことである」という趣旨
のことが書いてあった。

ご存知のように、日中戦争が終結しなかった要因に、日本軍が中国大衆の支持
を得られなかったことがあるが、その始まりは、この「対華21ヶ条要求」で

これを受け入れた日を、抗日のシンボル「国恥記念日」としたぐらいである。

しかも、その起こりは、時の清朝政府主導でなく、民衆が立ち上がったからだ
といわれている。ーーーこのことを自衛官に教えるのなら、21ヶ条要求の正
当性よりも、戦争では民衆の支持を得ることが重要であり、得られなかった理
由と対策を教示することが一番大事なことである。

それがないと、自衛官の教科書にはならないだろう。ーーー私は、この1頁を
読んで、この方は駄目だ、と再度確認した思いであった。

大東亜戦争を振り返る時、童話のハーメルンの笛吹き男をいつも思い出すのだ
が、朝日や毎日新聞の笛で、徳富蘇峰、中野正剛らに煽られて敗戦という沼川
に至る過程がダブって見える。

現在ある情緒的な「日本は悪くない=悪いのは他国」論と共に「鬼畜米英」に
おき換えての「鬼畜中韓」の横行は、有害な副作用のほうが多いだろうと思っ
ている。

左翼の言うような、「隣国と仲良く」なんて思わないが、感情的に外国と対し
ては、まともな判断が生まれるはずもなく、不要なる先入観が邪魔をすること
が多いだろう――――。

ーーー私達は、米国の覇権が崩れる今こそ、本当に高い授業料を払った歴史か
ら真摯に学ばねばならない、状況に至っているのだと思う。

                        = この稿おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 読後アンケートの結果。 ┗━┛
◇ この説に賛成 ---------------------------------------- 50人 (45%) ◇ どちらかといえば賛成 -------------------------------- 27人 (24%) ◇ どちらともいえない ---------------------------------- 11人 (10%) ◇ どちらかといえば反対 -------------------------------- 9人 ( 8%) ◇ この説に反対 ---------------------------------------- 15人 (13%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「AWさん」 日本がやるべきは、近隣諸国がやる気を無くす程の軍事力を持ち、バランスを 維持する、ということに尽きると思います。圧倒的な軍事力を持ったほうが、 その軍事力を背景に無理をやるのは歴史が数え切れないほど証明しています。 戦争は勝ち負け、負ける戦いをしなくても済むようにする。一番大事ですね。 9条を馬鹿正直に守っていたら負ける戦いは必至でしょう。 とにかく、中国に軍拡を止めて貰わないことには話しになりません。対抗して 軍拡するしかないですから。 日本に居てはあまり感触が分からないのですが、中国はいつぐらいになったら どんな条件が整ったら、覇権・拡張路線を止められる、とお思いでしょうか?
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
中国が、覇権・拡張路線を止めるとは私には考えられません。基本的に覇権を 握らなくては気のすまない文化の国だと思っています。彼らは、第2バイオリ ンを弾くなど考えないでしょう。 日本がやるべきことは、圧倒的な軍事力を持って、近隣諸国のやる気をなくさ せることだととのご主張ですが、それができるほどの経済力が今の日本にはな いですし、それ以上に、軍拡反対勢力が強力ですから難しいと思います。 したがって、なすべきは、同盟関係を作り中国の対日侵攻を食い止めることが 最も現実的な解ではないでしょうか。 その同盟国は、米、ロシア、インドだろうと思います。 嫌中・韓、に続いて嫌ロも煽られていますが、ロシアは味方に付けるべきとい う北野幸伯氏の論は正しいと思います。 国に対する好き嫌いの感情と、同盟関係とは区別して考えないといけません。 よく言われる、同盟関係を友人関係に喩える方法が間違っています。同盟関係 は、双方の国益が一致すれば良い訳で、ロシアとも利害の一致点はあるはずで す。北方領土と区分して付き合いをしなくてはならないと思います。
└────────── ┌──────────「尊野ジョーイさん」
┌-------- とにかく、中国に軍拡を止めて貰わないことには話しになりません。対抗して 軍拡するしかないですから。 └-------- そんなことをしたら、共倒れでしょう。 日本大軍拡化計画をバーンと打ち出しておいて、実際は、表面的な数字による 軍事力の拡大だけに収める。それに挑発された支那中共が軍拡して予算が破綻 して自滅。〜〜〜このパターンが最上ではないでしょうか。 ┌-------- 日本に居てはあまり感触が分からないのですが、中国はいつぐらいになったら どんな条件が整ったら、覇権・拡張路線を止められる、とお思いでしょうか? └-------- それは永遠にないでしょう。 中華思想というのは、自民族優位思想ではなく、自民族に他民族を同化させて しまう、それを正当化させる思想だからです。それだから、チベットやウイグ ルを平気で侵略するのです。 共産党の幹部は、他民族の侵略=漢民族への同化政策)を自分たちの使命であ るとさえ思っています。中華思想の最終目的は「大同世界」という共産主義社 会を目指すからです。この思想(元は孫文が提唱)があるからこそ、チベットや ウイグルの「同化政策」があるのです。 だから沖縄も、いずれは九州や四国・本州も支那中共の領土だと主張してくる でしょう。「大同世界」に国境はありません。 詳しくは、岩田温(拓殖大学客員研究員)「中華思想という侵略イデオロギー」 『澪標』平成20年6月号参照 └────────── ┌──────────「Hal さん」 先回「組織は、意識してヘテロにしなくてはならない」について反対しました Halです。 今回の「戦争を善悪でなく、勝ち負けで論ずるべき」にはおおいに賛成です。 負けた側は「賢くなかった、弱かった」を反省を込めて論じるべきでしょう。 話を蒸し返しますが、先の「ヘテロ移入の件」、しつこいようですが再度意見 を申し述べます。 紋起さんの仰られる、「日本は異質との出会いをキッカケにして独自文化を生 み出してきて・・、平安時代の紫・・、安土桃山時代の・・。日本の特徴は・ ・発展させる処にあり、刺激がないと停滞してしまうことが多いのです」とい うことを否定はしません。 しかし、新しい文化を作りえたのは、それを咀嚼して身(実)となすだけの強い 胃袋=文化的素養があったからではないでしょうか。 GHQによる(と極論してはいけないんでしょうが)3S教育が成功し、素晴ら しい日教組による教育が浸透している現代の日本において、その咀嚼力は果た してあるのでしょうか。ーーーこれを少々怪しんでおります。 OJIN さんからのご反論に関しては、 年金制度の根本的な見直しをすることで、給料の50%も天引きされない制度 を、6千万人でも作れるのではないでしょうか。 社会福祉制度の優等生国、北欧4国の人口が、合わせて2千5百万人に満たな い事を考えると、6千万人となった日本の将来の世代が、年金で苦しむことな んかあり得ないのではないでしょうか。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
今の若者に咀嚼能力がないとのご指摘は、その通りだと思います。そのような 若者が、現在のままの純粋培養で育ち続けたら、咀嚼能力が生まれるのでしょ うか。 咀嚼能力が育つには、今までの教えられたやり方では世界で生きていけないこ とを「実体験」することが必要でしょう。 しかし、もし純粋培養で育ち続け、現実に直面してこのやり方は拙いと悟った 時はすでに遅く、日本はどこかの国に飲み込まれている危険性さえあります。 このやり方は拙いということを悟るにしても、小規模な失敗で留め置く必要が あります。ーーーそれは、移民の人との交流で気付いたりするほうが、大規模 な失敗にならないので良いのではないでしょうか。 いずれにせよ、今のような鎖国心理、或いは国単位での引きこもり心理は異常 です。大きく外に出ると同じように、他国の人を中に入れ、ある種の緊張関係 を経験することが、この国を発展させる、あるいは生き延びさせることになる だろうと思っております。 恐れる必要等ないでしょう、1千万人を受け入れたって1割ですから、日本人 の伝統がスタンダードであり続けます。
└────────── ┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
う〜〜〜む、なかなかご理解いただけないようでございます――――。 6千万人でも2千5百万人でも、微増微減は影響ありませんが、「その人口数 が昔から同じ年齢別構成で推移している」なら何千万人だろうと何百万人だろ うと、何も問題ありません。 年金制度が維持できなくなるのは「今の人口が減少していく中途の時期の何十 年間」の間なんです。何十年か経って、6千万人なら6千万人で落着いてくれ れば、その段階になれば再び安定して大丈夫なんですが、 人口が減るということは、どういうことでしょう? 生まれてくる者が減り、高齢者が増えるということです。=年齢別人口構成が 逆三角形の漏斗[じょうご]のようになるということです。生まれてくる者=成 長して生産に従事する者=負担者、高齢者=生産に従事しない者=被負担者。 逆三角形の漏斗状ではなく、元から漏斗の細い部分のような人口数で続いてき ているのなら問題はないのですが、出生率が下がって漏斗状の年齢別人口構成 になり、その上のほうのラッパの口のように広がっている年齢層が死に絶える まで、 漏斗の細い部分の年齢層が莫大な負担をしなければ維持できない、ということ です。 └────────── ┌──────────「さぶろうさん」 賛成に投票しました。今後もがんばって下さい。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
ありがとうございます。さぶろうさまからのご指摘は、私の考えていないこと が多く、種々参考になりました。 これからも、よろしくご指摘等お願いいたします。 └────────── ┌──────────「尊野ジョーイさん」 前回のさぶろうさんのコメント「1940年8月当時には、ドイツ軍は独ソ戦 を始めたばかりで破竹の進撃中=傍目にはとても強く見えます」 1941年の真珠湾攻撃成功の記事が朝日新聞に掲載されたその同じ紙面に、 「独軍、ソ連のスキー部隊に敗退」という記事も載っていたそうです。 この時点で日本の命運は決まっていたのでした=敗者の側についてしまった。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
仰るとおりですね。敗者の側に付くのが一番拙いです。 日本では、敗者の側に付く場合でも、「義」などを理由にして美化しますが、 諸外国の歴史では、負けた側は皆殺しか奴隷として売り飛ばされるかで、その まま命永らえることはあり得ない程の低い確率です。 そういう歴史からすると、生きる為に必死ですし、だから情報=インテリジェ ンスに対する飢餓感が強烈だと思います。 今の大河ドラマ「天地人」の直江兼続でも、関が原の負け戦でお家取り潰しで も不思議ではないのですが、家康でも温情処置で済ませます。だから美化しま くりなんですが、こういうことを潜在意識に入れてしまうのは拙いですよね。 とにかく、負けるほうに加担しないようにインテリジェンス感覚を磨く必要が あると思います。 └────────── ┌──────────「尊野ジョーイさん」 今のままだと、日韓、日支(那)戦争が起きる気がします。 まだ交渉の余地があるのに、世論は戦争を支持して、マスコミ(特に朝日)がそ れを煽るという図が再現されかねません。 もっと思慮深くなる必要があるように思われます。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
私も危惧いたします。今の嫌中、嫌韓の風潮は、インターネットの掲示板を媒 介して酷いほど蔓延しているようです。自らが戦いの先頭に立つほどに嫌悪感 が煽られているのかもしれません。 戦争は最後の最後に選択するもので、それ以外の方法で自国の国益を貫徹でき るような方法を考える=軍事力の威圧も必要です)べきです。 できるならば他国どうしを戦わせて漁夫の利をえることができるような工作を する能力を身に着けるべきなのに、こういう話は汚いとかなんとかいって侮蔑 するからよくないですね。 とにかく、「勝ちて後に、戦いを求む」を座右の銘にして、国民全体がやらな いといけないと思います。 └──────────
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