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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん
☆ 皇帝アウグストゥスに学ぶ(完) ――――――――― 2009/04/29
前報でご紹介した横田増生著「フランスの子育てが日本の10倍も楽な理由」
の書評を見ると
┌--------
フランスでは子育ては人生の愉しみなのに、なぜ日本では子育てが人生の苦労
になりやすいのか。本書を読むと、それはフランス人と日本人の人生観の違い
というよりも、政府の制度設計の仕組みの違いに決定的に依存していることが
わかる。

例えば所得格差、男女間格差、長時間労働などを放置すれば、出生率が低下す
るのはあたりまえだと著者はいう。
└--------
と、著者の主張点が明示されているのだが、ーーー本当だろうか?

例えば所得格差について、多くの論者は所得格差の激しいと主張するのデータ
(貧困率)をもって日本の所得格差を大きいと断定する。しかし、

このデータは、平均所得の半分に満たない人のパーセントで貧困率を定義して
いるが、年功序列賃金の場合、見かけは高くなる。

例えば、全ての年齢(20歳〜60歳)に於いて、同人数の人が働いていて同一
年齢同一賃金で、昇給は年齢に完全に比例している集団(仮想の国)を考えると
ーーー平均は40歳の年収であり、その半分の年収は30歳のところである。

30歳の年収以下は、OECDの定義では貧困層となるのだから、20〜30
歳は全体の1/4なので、貧困率25%の国である。

しかし、20歳で働き始めの時も同期の中では差はないし、退職の時の60歳
でも差のない、完璧に個人間で格差のない社会でも貧困率25%の国となる。

まして日本では、パートの税金が年収120万円から課せられるので、それを
超えないように労働時間調整をしている労働者----統計では女性パートは8百
万人----がいる国では、貧困率は高く見えるのは当然である。

国連の機関である Development Programme=UNHP)の統計に、所得の不平
等に関する報告がある。 http://hdrstats.undp.org/indicators/145.html

この統計は、全所得の分布の最富裕層10%の所得と最貧層10%の所得の比
率で格差の大きさを定義している。

それによれば、日本は4.5倍、フランス9.1倍で、圧倒的に日本のほうが
格差は小さい。このデータで見れば、日本は世界で一番所得格差が小さい国な
のである。

序ながら、他国のデータを挙げると、ドイツ6.9倍、韓国7.8倍、アメリ
カ15.9倍だ。ーーー少子化対策がうまくいっていないといわれるドイツ、
韓国は、フランスより所得格差が小さい。ーーー本のほうが間違いである。

労働時間を小川裕氏のサイトで見ると、
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3100.html

確かにフランスは日本より短い。しかし、ドイツのほうがフランスより短い労
働時間なのに、ドイツは少子化が改善されていない。また、日本の労働時間は
1970年から単調に減少し、90年代からは急激に短縮されているが、合計
特殊出生率は向上などせず低下し続けている。

日本の時系列のデータからは、労働時間を短縮したから少子化が起こったとさ
え強弁できそうだ。(笑)

こういう系統の本は、私は信用しない。それは、子供をみんな持ちたいと思っ
ているのに、制度が悪いから産めないし、また育てられないのだと、誰も傷つ
かない建前論に終始していて、本質的な原因究明を怠っている。まして、

この書評を書いているエコノミストは、無責任にお追従をして、反撃しない政
府の責任で終わりである。ーーー情けない根性と言いたい。

田中秀臣ブログ 04月12日の書評欄
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/

フランスの税制は、子供を産み育てることで、日本と比べて税金が安くなるよ
うに設定されている。フランスは、所得制限なしで、第2子から、年、約10
万円の児童手当が支給される。その他に種々の補助がある。

税金は、子供が多いほうが割安になるN分N乗方式と呼ばれるやり方で算定さ
れる。N分N乗方式については、次をご参照下さい。
http://chinachips.fc2web.com/tiny/090429.html

前報で述べたように、独身でいると税金が高くなる制度にしたら、結婚して子
供を持とうとする外因的動機が増えるだろうと思う。そして、結婚したらどう
いう要因が子供を産むために重要かを、「皇帝アウグストゥスに学ぶ(上)」で
紹介した厚労省調査で検証してみよう。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen09/index.html

この調査にある表5の第1回からの夫婦の項を見れば、子供なしは7.7%で
あり、結婚すれば子供を持つ人は多いということが分かる。また、調査回数が
少ない時に結婚した夫婦ほど、子供なしの率は低いので、結婚から年数が経つ
にしたがい子供を持つ人の率が非常に高くなることも分かる。

表6を見ると、夫の仕事が正規か非正規かの区分で子供の有無についてみると
非正規の人のほうが子供を持っている率がやや高いぐらいで、差がないと思わ
れる。

一方、子供を産み育てる、女性が正規か非正規かで、子供を出産した率は正規
の人のほうが倍ほど高い。図7を見ると、育児休業制度のあるほうが、出産し
た率は高く、第2子、第3子の場合は、育児休業制度のあるほうが倍以上に高
い。
結婚し、子供を持とうと思っている人達にとって、阻害要因を減ずる施策は有
効である。

しかし、グラフ化されていないのだが、表9の夫婦合計所得別の出生の状況を
見ると、子供なしの夫婦が第1子を持つ、子供1人の夫婦が第2子を持つ、子
供2人の夫婦が第3子を持つ欄の数字が示すとおり、合計所得の低い夫婦ほど
出生の率が高いとさえ言えるデータである。

----このことも、湯浅氏の指摘の不適切を示している。金さえ与えれば、人は
彼の思い通りに行動すると思っているのだろう。人権派の思い込みだけだ----

したがって、結婚しようと思わせる外因性動機を強める施策を行うと同時に、
児童手当(フランスのように第2子から所得制限なしに給付する)の整備、阻害
要因を除去する、すなわち、有職の夫婦の子育てがやり易い状況にしなくては
ならない。

皇帝アウグストゥスは、例の2つの法律を制定した後に、一人の老ローマ市民
をローマに招き、共に主神ユピテルの神殿に参拝した。

招かれたのは彼一人ではなく、8人の子と35人の孫と、18人のひ孫も一緒
で、皇帝は彼ら一行を、まるで凱旋将軍であるかのように歓迎し、ローマ市民
が見本とすべき人であると賞賛した。

ーーー私達も、こうあらねばならない。

多くの子を育て上げた人は、私費と、膨大な労役を投じて社会に貢献した人な
のである。そういう人を褒め称えることも、社会としてなさねばならないこと
だろう。そのような価値観を広く行き渡るようにすることも、政府のなすべき
ことである――――。

さしずめ、現代で7人の子供を産み育てている大阪府知事橋本徹氏夫人は、皆
が褒めなければならない人だと思う。

ーーー国民栄誉賞と同等の、育児栄誉賞を創るべきではなかろうか。

                        = この稿おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 読後アンケートの結果。 ┗━┛
◇ この説に賛成 ---------------------------------------- 34人 (71%) ◇ どちらかといえば賛成 -------------------------------- 10人 (21%) ◇ どちらともいえない ---------------------------------- 2人 ( 4%) ◇ どちらかといえば反対 -------------------------------- 1人 ( 2%) ◇ この説に反対 ---------------------------------------- 1人 ( 2%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「さぶろうさん」 賛成に投票しました。少子化問題を論じた一連の記事のまとめとして、大変に 素晴らしい論説だと思います。特に、他のページやデータを引用しながら進め る論には、説得力と迫力があります。 所得格差は、少子化とは無関係(むしろ逆相関)という御説には、賛成です。 “貧乏人の子沢山”ということわざもありますし。 ただ私は、人口が増えることには賛成できません。それは飢餓、あるいは資源 浪費への道だからです。 急激な少子化をストップする手段の一つとして、紋起さんのご意見は貴重であ ると思います。が、やり過ぎては、人口過多の問題を引き起こします。 ーーー例えば、表彰はやり過ぎかも知れません。 もちろん、紋起さんほどの知性の持ち主ならば、人口増加も良くないことであ ることを既にご認識されていると思います。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
┌-------- 人口が増えることには賛成できません。それは飢餓、あるいは資源浪費への道 だからです。 └-------- 仰るように、地球温暖化の原因のかなりの部分は、人口増があると思います。 ーーー私も人口増には反対でした。 しかし今、合計特殊出生率が2.0に回復したとします。しかしそれでも、今 の例えば20歳世代の140万人を維持するだけなんです。(2.0を回復し た先進国はアメリカだけ。フランスでも1.98) もっと下の世代になると100万人/1世代です。だから、日本の人口は現在 の1億3千万人以上には増えることはないんです。 └────────── ┌──────────「向日葵のらさん」@女性 フランスは、アフリカからの、多産の移民が出生率を押し上げているだけで、 元々の、白人のフランス人の出生率は、世間で賞賛されている程上がっていな いと聞いたことがあります。 ドイツは、トルコ系の移民が多いですし、日本には多産な国からの移民は多く いません。このような、フランスとドイツ、日本との社会的背景をも勘案する べきではないかな?と愚考致しました。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
大いにありそうな話ですね。移民が出生率を上げているようなことはない、と 政府が公表しているそうなんですが、細かく調べないと分からないですよね。 フランスのデータ等を見て感じるのは、半分ぐらいの新生児が婚外児なんです ね。しかしドイツでは、婚外児はまだ世間から良く思われていないために出生 率が上がらない面があるように言われています。 こういう価値観も、少子化と無関係ではないようです。 └────────── ┌──────────「あさん」 お金持論理です。収入の少ない層の人たちはグラフや推移は関係ありません。 関係あるのは将来云々より目先の金です。 全ての人が色々な統計にしたがって生きているのであれば、経済はもっとコン トロールさせるでしょう。しかし、現実は殆どコントロールされていないので す。人間は機械ではなく、故障率とか収益率に縛られることは稀です。 イコール、フランスで成功した政策があるのであれば机上の空論をシュミレー トして良いとかダメだとか言っている場合ではありません。 チャレンジしてみるしかないのです。実験なくして結果なしと私は思います。
└────────── ┌──────────「紋起さんから」
┌-------- お金持論理です。収入の少ない層の人たちはグラフや推移は関係ありません。 関係あるのは将来云々より目先の金です。 └-------- ┌-------- フランスで成功した政策があるのであれば、机上の空論をシュミレートして良 いとかダメだとか言っている場合ではありません。 └-------- その通りだと思います。私が申し上げているのは、若いカップルの方達ではな くて、年配の方も多いこのメルマガ読者の方を想定しています。 少子化の話題になった時や、マスコミで少子化に関して議論されている時に、 申し上げているような切り口で影響を与えていただければ、幸甚だと思ってお ります。 当該の人は目先のことなのですから、それに合わせた施策を政治が打たねば、 少子化は止まらないでしょう。 また、こういう施策は、1度始めると変更が難しいものです。例えば補助金を 出し始めると、それを止めるのは不可能に近いのではないでしょうか。 既得権益が生まれますので、その分、フランスで何が効いているのかを考えね ばならないでしょうし、また、国の借金の多さは、フランスと比較にならない ほど日本は大きいですから、財源問題が根本的に異なります。 └────────── ┌──────────「elmsanさん」 ーーーいつも、貴重なご意見を拝読しています。 国内を見渡した人口問題の論文は、感心して拝見しました。ーーーこれは我が 国の最大の問題、課題と思っています。人口ピラミッドというのは三角形、と 思っていたら、公式な予想をあらためて並べてみるとショッキングな状況です ね。 http://chinachips.fc2web.com/illust/1930.gif http://chinachips.fc2web.com/illust/2010.gif http://chinachips.fc2web.com/illust/2030.gif 私は天皇陛下と同い年の1933年生まれです。軍国少年そのままに育ちまし た。文部科学省のデータでは、我が世代は、今の同年齢より頭一つ分陥没して います。 このメルマガの論文、意見はみなさん熱心で、なかなか貴重だと思って拝見し ていますが、戦前の観念論を彷彿させるようなご意見も多いようで、くたびれ ます。 たったこれだけのデータでもいろいろな問題点、歴史的な事実を考えさせてく れますね。貴重な図です。それではということですが、一例としてこうした公 式のデータを基礎におきながら議論を深めてほしいといつも考えています。 昔読んだレーニンの「ロシアにおける資本主義の発達」という有名な本では、 流刑地で、資料は政府発表のデータしかなかったようですが、公式データを基 礎に論文を書いたとのことでした。ーーーそこだけ感動しておぼえています。 また、ライシャワー大使の「ザ ジャパニーズ」は、日本への愛情のこもった 本と思っていますが、その中に、有名な地図があります。簡単に書きますと、 アメリカ合衆国の地図の上に、戦後の日本の地図を同縮尺で重ねたのです。 そこは、アメリカ独立13州の上なのです。その位置では、面積、緯度、気候 など、ほとんど同じ感じがします。大陸の東端ですから気候も似ていますね。 同緯度のカリフォルニアも面積は同じぐらいと聞きますが、気候条件は全くち がうでしょう。 両者の一番の違いは、アパラチア以西の西部があるかないかなのです。しから ばこの、丸裸になった日本の「生きる道は」と問いかけているのです。 戦前の日本は、この「西部」を獲得し、各大国と対等になりたいと頑張ったの でしょう。ーーー生き残ったわれわれはどうすればいいのでしょうね。 客観的事実を正しく認識することこそ、その第一歩と思います。お隣さんとも 揉めていますが、以前=戦前なら、たちまち殴りかかったでしょうね。 勝手な感想を長々書き失礼しました。これからも、よろしくお願いします。
└────────── ┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
歯痒いのは、例えば、台湾企業及びその経営者が、どんどん大陸の甘い政策に 乗って拠点を大陸に移していて、ーーー大陸の台湾併呑政策が成功しかかって いるという状況をお報せしても、まったく馬耳東風、それの及ぼす影響に思い 至っていただけない今の日本人の暢気[のんき]さ――――。 人口減少の問題についても、内需振興もクソも、買ってくれる消費者が減ると どうなるか。では外需に途を求める?ーーー若年労働人口が減っていくのに、 誰が生産するんです?自動化?----まあ、ある程度はカバーできるでしょう。 国の経済規模が縮小していく途中では、過疎市町村のように様々な要因が絡み 合って止まらなくなります――――。 紋起さんは遠慮して(?)強い言葉では発言しませんが、しっかりとメッセージ を発しているのに、そのメッセージの本当の意味を理解していただけない‥‥ まあ OJIN のこの論は、5年早過ぎるんです。それは判っているんですが‥‥ └──────────
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