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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん |
☆ 皇帝アウグストゥスに学ぶ(中) ――――――――― 2009/04/08
日本では、1970年代中頃から合計特殊出生率が下がり始めたことを、前レ
ポートで説明したが、その理由はなんであろうか。ーーー実は、世界の傾向と
同じく、日本でも女性の就業率の向上に起因していると思われる。
1960年代にあったウーマンリブ運動なども影響を与え、女性の自立、まず
経済的な自立を求める動きが先進国から始まり、日本にもウーマンリブ運動は
上陸した。
女性は男性の奴隷ではない、という主張は女性の間に広い支持を受け、性的な
開放もその一方で叫ばれ、ピル解禁を求めた中ピ連も目立つ存在だった。女性
の職場進出は、それ以前の結婚までの腰掛的な会社勤めではなくなり、
1970年代の初めには、「勤労婦人福祉法(1972施行)」が制定され、198
0年代には、オフィスレディなる言葉が一般化した。
そして、女性が仕事を持つと、未婚率が高まり晩婚化も当然のことになった。
仕事というものはストレスの種ではあるが、その一方では、エキサイティング
なものであり、面白いものだから、いつ帰るか分からない旦那を待ち、子供に
追い回される結婚生活より魅力的であると感じても不思議ではない。
会社では、明日は今日とは異なる出来事があり、飲み会とかアバンチュールも
あるが、家庭生活は同じ顔ばかりつき合わせ、ひたすら同じことの繰り返しと
感じるのであろう。
ーーー人間誰しもそう感じるのは、決しておかしなことではないと思う。
しかし、彼女らに「何故結婚しないのか」「子供を持たないのか」と質問すれ
ば、「日本の将来が不安だから」「こんな暗い社会で子育てできると思うの」
とか「こんな収入で育てられるはずはないじゃない」とか答える人が大多数で
ある。
不思議なことに、この建前の返答を額面どおり信じる識者が多いようだ。
本音に近い声は「育児か仕事かと言われれば仕事」であり、「仕事はできれば
続けたいーーー以上の価値あるもの」なのである。
子供を産むかどうかを決めるのは、ひとえに女性であり、それは時代を超えた
真実である。前報で、皇帝アウグストゥスが少子化に対応して法律を制定した
ことを述べたが、
その内容は、子供を持つプロセスに対する洞察から生じたものであろう。
元老院からの相当の反対を押し切って、「ユリウス姦通罪・婚外交渉罪法」と
「ユリウス正式婚姻法」を制定した。
頭につく「ユリウス」は、アウグストゥスの家門名であるが(アウグストゥス
はカエサルの養子でありユリウスはカエサルの家門名)ーーーそれまでローマ
ではこういう私的なことに国家は介入すべきではないと考えられてきた領域で
あった。
「ユリウス姦通罪・婚外交渉罪法」は、男女の性的交渉は子孫繁栄の為のもの
であって、アバンチュール等のためのものではないとの国家からの宣言であっ
た。
この法律により、当時の男には、女奴隷や娼婦との性的関係は姦通罪には問わ
れないが、それ以外の女性との関係は公的な罪となったのである。
有夫の婦人との関係は姦通罪であり、先述の2つの区分の女性以外の独身の女
性と関係があった場合は、なんと「強姦罪」が適用されたという。
「ユリウス正式婚姻法」は、ローマ社会の上層・中間層にのみ適用される法律
であるが、25〜60歳の男子、並びに20〜50歳の女子は、独身でいると
不利を忍ばねばならないような制度になった。
未亡人でも、1年以内に再婚しないと独身と見なされる。独身の男子、並びに
子供のいない男子は、近親者でない人の遺産を相続できないと定められた。
ローマは、血の繋がりがなくても遺言で、知人、友人に遺産を相続させる制度
となっており、それが一般的な風習であった。従って、相続ができないことは
経済的に痛手であった。また、公的な役職に就任する場合も、子供のない人は
不利となるように定められていた。
ーーー独身女子の不利はそれ以上であった。
ローマ市民は無税なのに、一定額以上の資産を持つ独身女性は、資産から上が
る収益の1%を税として国庫に収めねばならず、税が免除されるのは、第3子
の誕生以降である。
子を持たない独身女性は、50歳を超えると如何なる相続も許されないし、一
定額以上の資産は、強制的に誰かに譲らねばならないこととなっていた。
塩野氏は、「子を産み育てることで国家に奉仕をしなかったのだから、私有財
産の保護というローマ法の基本である権利も、もはや享受する資格なしという
ことか」と書いておられる。
健全な「国家」は、健全な「家族」の保護と育成なしには成り立たないと考え
る皇帝アウグストゥスは上記2法律を定めたが、それ以降で若干の修正はあっ
たものの、彼以降の皇帝もこの路線を踏襲している。
この法律が消えるのは、ローマ帝国がキリスト教に下り、独身が価値あるもの
との認識が広まった時だったようである。
皇帝アウグストゥスの行ったことを人権意識の異なる現代に当てはめよと言う
つもりはないが、実施したことの本質を考えることは、参考になるだろう。
実施したことの第一は、子供を成すには、内因的動機では弱すぎるので、外因
的動機を強める社会・経済的な仕組みを設定したことだろう。
その仕組みとは、子供を持てば不利益を蒙らなくて良く、利益を得ることもあ
り得ることとなり、反対に、独身であると自動的に不利益になってしまう社会
制度である。
第二は、そういう場を設定しても、それを無視してしまう一群の人がいるのだ
が、不利益でもかまわないという動機は、恋愛とか享楽とかいわゆる「情事」
であり、そういう不利益無頓着が蔓延したのでは困るので、それをするのが困
難になるように刑罰という障壁を設けたのであろう。
現在の日本の社会で語られる言葉に「肉食女子」「猛禽女子」「草食男子」が
あるのをご存知だろうか。
日経ビジネス・オンライン連載の「平成女子図鑑」の著者であるコラムニスト
・編集者の深澤真紀氏によれば、
「肉体的肉食女子」は、
┌--------
スポーツをするようにセックスが好きで、セックスをすることに拘りがない。
「付き合う前にセックスしないなんてあり得ない」というタイプです。
「肉体的肉食女子」にとって、性的に自由な女性が許される今の時代は、それ
なりに楽しいかもしれません。
└--------
と述べている。
「猛禽女子」とは、
┌--------
彼女たちは、かわいくて、天然で、相手の話を丁寧に聞きます。ですから、合
コンなどでも男性にモテて、気がつくと一番いい男性をさらっていく。
└--------
女子らしいのです。
「草食男子」とは、
┌--------
恋愛にもセックスにも興味を示さない男子。
└--------
だそうです。
別の保険会社が行ったアンケートによれば、「肉食女子」比率は26%ぐらい
らしいが、こういう話がビジネス雑誌に連載される時代であるということは、
ーーー少子化問題解決が極めて難しいことを理解して頂けると思う。
「肉食女子」は、結婚し子供を産んだとたんに欲望が満たされなくなるのだか
ら、結婚や子供に縛られることを避けるでしょう。しかしその一方、
ーーー若者男性の70%が草食男子だといいますから、先が思いやられます。
= この稿つづく =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛ ◇ この説に賛成 ---------------------------------------- 23人 (56%)
◇ どちらかといえば賛成 -------------------------------- 12人 (29%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 3人 ( 7%)
◇ どちらかといえば反対 -------------------------------- 2人 ( 5%)
◇ この説に反対 ---------------------------------------- 1人 ( 2%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛ ┌──────────「西さん」
高率な独身税を導入・不妊治療を保険扱い・高額育児手当・職場近接保育園・
ということで進めるとしたらうまくいくのだろうか。
仕事のほうが楽しいか否かは個人の自由だが、国家として困るならペナルティ
を払って堂々と独身を満喫する自由も必要。ーーー但しこの場合、能力が高い
人間は米国等に住居を移すこともありえる。
ーーー収入が低い独身者には税金もかけられない。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
┌--------
高率な独身税を導入、不妊治療を保険扱い、高額育児手当、職場近接保育園と
いうことで進めるとしたらうまくいくのだろうか。
└--------
今より、絶対によくなると思います。海外に移住するか、国内にとどまり育児
をするかは、子育ての好き嫌いによるでしょうね。子供は、持ってみると可愛
いものですから、移住する人は限られた数ではないでしょうか。
貧しい独身者は、雇用を拡大する起業の振興をなし、そこに就職できるように
職業訓練を受けることに尽きると思います。働かぬ人に対して、分配のやり方
だけで皆が幸せになる時代は終わったのではないでしょうか。
└──────────
┌──────────「やせ我慢さん」
とても参考になりました。子供を産まない理由を言葉通りに真に受けるのは、
ずっとおかしいと思っていました。
戦後の苦しい時にベビーブームが起こり、ニューヨークの大停電で出産が増え
るのです。ーーー本当の理由は、非常に動物的なものだろうと思います。
でも、女性の人権や人間のプライドから、それを公の制度に取り入れることは
できないでしょう。
また、可能なのに子供を作らなかった夫婦が、子供を育てた人と同じ老後保障
はおかしいと思います。年金を支える世代を意図的に作らなかった人は、当然
それに見合ったものにするべきです。
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┌──────────「紋起さんから」
┌--------
可能なのに子供を作らなかった夫婦が、子供を育てた人と同じ老後保障はおか
しいと思います。年金を支える世代を意図的に作らなかった人は、当然それに
見合ったものにするべきです。
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全く異論なしの賛成です。年金が賦課方式で成り立っている以上、自分が先輩
世代の年金を拠出する義務を果たした上に、自分たちの世代の年金を拠出して
くれる世代の誕生・育児を果たして、はじめて年金を受取れるように設計すべ
きところを、
先輩世代の年金を拠出しただけで受取れるように設計したのが大きな間違いで
あります。そして、そのことで起こる少子化が、次の世代に過酷な問題を担わ
せるのですから、いささか酷いですね。
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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