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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん
☆ 氷山の水面下の話(4) ――――――――――――― 2008/11/17
この2〜3年、官僚バッシングが止まらない。なぜそうなったのかを、社保庁
を始めとする不祥事を氷山の見えている部分、とすると、その水面下の部分に
ついて論じたい。

結論から言えば、官僚の不祥事は、官僚のモラルの低下の問題よりも、構造的
な不適合から生じていることが多いように思う。

優秀な官僚がいたから、明治維新以降の日本の驚異的な進歩も、敗戦後の奇跡
とも言える復興も成し遂げられたことは私も異論がない。城山三郎の描く「官
僚たちの夏」に出てくるような、(肯定的な面ばかりではないが)野武士ともい
える人たちは、いまは皆無であろう。それは、人材の枯渇でもないと思う。

ーーー昔は「できて」今は「できない」理由は何か。

それは、日本がトップランナーの仲間入りをしたことによる。別の言葉で言え
ば、モデルがあるときは「できる」のだがモデルがないときには「できない」
のである。

それは、創造性の問題等ではない。「リスク」を取れるかどうかの問題なので
ある。日本がキャッチアップする時代は、誰もが認めるモデルがあった。欧米
特に明治の時代には、イギリスやドイツ、戦後は世界の覇権国であったアメリ
カをモデルとすることは、誰もが否定できないものであった。

したがって、官僚が目指すべき処、あるいはモノは、明言できたし、反対する
者は、実績のデータ等で抑えることも可能であった。

しかし、トップグループに入った1980年代からはモデルはなく、官僚が目
指すべき処やモノを示しても、甲論乙駁となり、纏めることなどできなくなっ
た。すなわち官僚が機能できなくなったのである。

官僚は、「私が正しいと思うからやる!」などとは言えない。みんなの税金だ
から、自分がリスクを取る事など端から無理である。これが、私企業との大き
な違いである。

私企業の経営者は、リスクを取ることが仕事とも言える。こういう目的地を描
けなくなった集団は、仲間内の居心地の良さの中でささやかな快適な時を過ご
すことを組織の目的にして過ごす。ヤミ出張も、カラ残業も、裏金も、ゴルフ
練習設備やマッサージチェアも、全ての動機は、ここから発するのである。

そして、官僚が批判に晒されているいま、復権を図り、民間の不祥事に対する
マスコミのバッシングを糸口として、規制強化の道筋を盛んにたどろうとして
いる。ーーーこのような動きは、みんなで阻止しなくてはならない。マスコミ
の、不安を煽る扇動に乗せられてはならないのである。

では、官僚の目的地は誰が示さねばならないかといえば、「政治家」である。

実は80年代以降も、制度疲労している官僚組織を、それ以前と同様に頼って
政治がなされてきた。そして野党も、揚げ足は取るが目的地等示さなかった。

今でもそうである、

民主党の主張は批判だけで新しい社会等皆無だ。以前にも述べたように、日本
に新しい産業を起こそうなどとは一言も述べず、無駄を省けば金が生まれる等
と言っている――――。

そういう面では、まだ地方自治体のほうがマシかもしれない。いろんな批判は
あるが、松沢成文神奈川県の電気自動車普及構想等のほうが、随分と目的地が
示されている。

党利党略ではなく、どこに行けばこの国が再びそれなりのポジションを占めら
れるのかを示すことが重要であると、政治家に思い知らせねばならない。

また、リスクを取れる民間が、果敢に開発を進めたバブル期前の勇気を持たね
ばならない。ーーー民間まで官僚化してコンプライアンスに終始しているよう
では、日本の将来はないのである。その点でも、

国民の閉塞感からくる不満を、小さなトラブルを取り上げ煽るマスコミを何と
かできないものかと痛感するこの頃である――――。

アメリカの金融業が、壊滅的と思われるような混乱を起こしているのを、比較
的冷静に見れる経済状態にある日本では、「金融は虚業、ものづくりは実業」
と物知り顔で語る風潮が多くみられる。

今の日本で「ものづくりに励むべし」と説く人は、私は「ワーキングプアー」
の生みの親だと思っている。単なる「ものづくり」に励んだ結果が、中国との
競合であり、人件費の切り下げしか競争する手段がなく、中国の労働者に近い
賃金しか貰えない状況を作ったのである。

「金融は虚業」と宣[のたま]う人は、高利貸しの子供が、家業の実態を知らず
にひたすら罵倒している姿と重なり、恩知らずであり、哀れだなと思ってしま
う。

日本の対外収支での経常黒字の過半が、配当や金利の結果である「所得収支」
の黒字であり、「ものづくり」の結果である「貿易黒字」は、08年度等では
石油や食料の高騰で極めて少なく、所得収支の数分の1となっているであろう
と予測される。

日本は、「金融に頼って生きる国」に分類される時代になっているのに、その
生きる術を貶めるのだから、自虐史観と変わらない頭の構造なのかなと推察し
ている。

私が、ある意味アメリカは凄い国だなと思うのは、日本と競合する製造業で負
けたときに、日米構造協議などの仕掛けをやる一方、同じ分野で競争をやると
日本並みの賃金となることを悟り、

ITと金融の、付加価値の高い分野に持ち場を移動させると共に、製造業は、
中国の低賃金を利用して、委託生産や現地生産をして栄える、いわゆるアウト
ソーシングで生きる高収益分野を確保してきたことである。

この変わり身の速さと、得意分野の断念の仕方は、感嘆せざるを得ない。

今回の混乱は、小沢民主党の太鼓持ちに堕した勝谷誠彦氏が上手く形容したよ
うに、正常米として汚染米を混入させて売った三笠フーズと同じく、サブプラ
イムローンという汚染米を、正常な債券の中に入れて売ったことで、汚染米と
分かった後の大混乱が現在の金融パニックだ、ーーーという喩えである。

大前研一氏が指摘する今回の大混乱の根本原因は、この喩えを理解しておくと
分かり易い。ーーー大前氏は、大混乱の原因は金融システムとか投資銀行とか
が問題ではなく、サブプライムローンを債権化して販売する時の、債券の検査
に問題があったと指摘している。

世のエコノミストは、始めからサブプライムローンは無茶なローンであったか
のごとく言うが、必ずしもそうではない。例えば、サブプライムローンは年収
の5〜7倍貸しているから危ないというのだが、ーーー日本は年収の8倍貸し
ているのが通常の住宅ローンである。金利が10%近くあるのは、通常の金利
が5%超だから、差でみると無茶ではない。

しかし、サブプライムローンを債権化して、他の債券と併せて売る債券にした
時に、その危なさを表示するのが実体と一致していなかったため、信用の高い
ものとして流通してしまったのである。

だから勝谷氏の言うような、初めから「汚染米」ではなく、流通している最中
にその米に黴が生じ始めたという喩えのほうが正確であろう。そして、黴が生
える危険性の検査が不十分であり、その表示が不十分であったために、大混乱
になったということだと思っている。

日本が何故負債を抱え込まなかったのかといえば、ーーーリスク回避を身上と
していたからである――――。

日本の土地バブルの頃、土地を買え買えと上から言われているのに、愚図で土
地を買えなかった担当者が、その時は叱り倒されたが、バブルが弾けた後で誉
められているようなものだ。

要するに、賢かったり要領が良かった訳でなく、運が良かった結果である。

運の良さも大事なことだから、今回はそれはそれで喜べばよいのだが、これか
ら先も運頼りでは、それこそ神風が吹くと念じて戦に賭けるようなもので心許
ない限りとなる。

この機に、金融でも更に儲かるような才覚を磨く必要があるし、ものづくりで
も、中国で作れないようなものの開発をひたすら心がけねばならない。我々の
過去の思考方法では難しい領域なので、よく考察すべきことだと思う。

                        = この稿おわり =
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