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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん
☆ 近視眼の国現代日本 ―――――――――――――― 2008/02/04
大局的な視野を失っている昨今の日本は非常に気になっているところである。

――― いま政治課題となっているガソリンの暫定税率を例に説明したい。

そもそも現在の暫定税率廃止問題は、石油価格の高騰から生じている事は周知
のことだが、ガソリンの高騰にだけ対処して値下げする、というのは極めて近
視眼的な対応でしかない。

石油の100$/バレルまでの値上がりの理由は、決して1時的なものではな
い。BRICsに代表される、途上国の経済発展に伴う需要の拡大と、ピーク
オイルといわれる石油埋蔵量の、近い将来減少に転じる供給能力への不安とで
需給関係がタイトと予想されているから高騰しているのである。

確かに、投機マネーが増幅している部分はあるが、将来の需給関係を考えると
現在の$100は経過的な価格であり、2倍3倍になることも十分あると考え
ねばならない。

その状況になった時を想定すれば、石油輸入に、06年度あたりで13〜14
兆円かかっているから、30兆円を超えることにもなりかねない訳で、食糧の
値上りを含めると、今の経常収支からすると赤字になり兼ねないことになる。

したがって現在、急ぎ根本的に考えねばならないことは、石油依存度を下げた
システムへの転換を急ぐことである。

例えば貨物輸送を例にとると、今はトラック輸送が圧倒的シェアを占めるが、
エネルギーで比較すると、トラックの6分の1、CO2排出量では8分の1と
計算されている、鉄道による貨物輸送のシェアを高めることである。

そのためには、関連業界の思想の転換と、貨物取扱いヤードの整備等の投資を
必要とするし、JR貨物の拡充、並びにトラック業界の縮小や運転手の転職問
題対応も必要だから、時間とコストもかかる。

したがって、業界の貨物輸送思想の転換を促すのはガソリンのコストアップで
あり、投資を促すのも、トラックから貨車への転換がコスト合理性をもたらす
からである。或いは、国民が自動車を用いるやり方を変えなければならない部
分が色んなところであるだろう。

従って、ガソリン価格を人為的に安くすることは、この転換を遅らせるだけで
先々の大幅値上がりした時に激痛をあたえる効果しかない。いってみれば、腫
瘍の痛みを緩和するモルヒネを打って、痛みを伴う手術を伸ばし、腫瘍を更に
酷いものにするヤブの処方である。

日本のガソリンが世界で一番高い、などと民主党の議員がTVで言っていたが
全くのウソで、07年春、日本で136円の時、英国213円、ドイツ207
円、フランス199円、韓国190円であったから、どこが世界一高いのだろ
う。

民主党もつまらない政治家ばかりの集団ではあるが、(自民党は利権集団の本
質回帰で落胆であるが)更に問題なのは、この本質的な問題提起がマスコミな
どにも全く出現しないことである。

そして論点は、当面の国民の負担減か、道路整備かの近視眼的な議論に終始し
ている。本当にこれで、先々の国の経営はやっていけるのであろうか。

国民の騒ぎ方も、年金問題とかの近視眼的お金の問題であり、農家にバラ撒い
てくれる政党を後先考えずに選ぶのだから酷いものだが、評論家などの政策提
言も近視眼的低レベルと思わざるを得ない。

世界が大きく変化しているのに、その変化に対応できないところに基本的な問
題があるのだが、それは「事の本質を見ようとしない」ところにあるように思
う。

――― もう一つ、格差問題を例に述べたい。

格差問題についても視点は幾つかあるが、

1.本当に格差は開いているのか。
2.どれほどの格差なら許容できるのか。
3.格差が開いたのが本当としたとき、原因はなになのか。

が主たるものであろう。

種々のデータを検証した資料でも、格差は開いているとは言えないし、先進国
の中でも類を見ないほど平等な社会であり、マスコミで評論家どもが言うほど
酷いものとは思えない。確かに、非正規雇用が近年増えており、その話を具体
例で出してきていることが多い。

では、なぜ非正規雇用者が増えたのであろうか。

多くの評論家は、労働者派遣法を改定したことがこのような非正規雇用を増や
したと論評する。しかし、これはあたかも、手術をしたから腫瘍ができたとい
う論法と同じである。実際は全く逆で、そういう法改正をしなければならない
ニーズがあったからである。

経済学に要素価格均等化原理(ヘクシャー=オリーンの定理)なるものがあり、
貿易をする国では、生産要素の価格(労働、資本)は均等化する方向に変化する
というものである。すなわち、中国と交易すると、日本の労働の価格は中国労
働者の労賃により下がり、中国労働者の労賃は上がるという定理である。

1990年代の、中国からの安い品物が入ってきた時に、日本企業がとった方
策は、安い中国製品に奪われたシェアに合せた規模縮小を行い、希望退職を募
り、残った正社員で身をかがめて篭城作戦に徹した。

そして、コストダウンを苦労しておこなうも、新規採用は極力控え、規模拡大
の際には非正規雇用で対応したのである。すなわち、要素価格均等化原理で日
本の労賃が低下するべきところを、正社員は据え置きで非正規社員は極めて低
い労賃で雇い平均すると、それなりに日本の労賃が下がったようにして対応し
たのである。

従って、労働者派遣法を改定しなければ、日本の工場で生産拡大に対応できな
かったであろうし、その代わりに、東南アジアに工場がもっと多く出て行った
のではなかろうか。

この現実をみると、日本の終身雇用と、年功序列のシステムがグローバル競争
(日本からすると低賃金国との競争)に適合できずに生じたのが、非正規雇用の
大量発生といえる。だから(現在では中国の労賃も高くなっているので当時ほ
どではないだろうが)最低賃金の引き上げなどが根本的な対策ではないはずで
ある。

本来なら、労働組合が、自分たちの賃金を引き下げてでも派遣労働者の賃金を
引き上げてくれというべきなのだが、そんな殊勝な幹部もいないし、もしいて
も組合員からの賛同を得られなかったであろう。過去は、非正規雇用に関して
労組は何もいわなかったが、彼らの賃金も上げるべく要求をするようになった
だけマシというべきかもしれない。

我々が戦後成功してきたシステムは、極めて高い成果を上げただけに、過剰適
応をしているきらいが強い。それだけに、変化することは極めて辛い、乃至は
不愉快だが、それを実行しないと、食糧・資源の争奪戦に破れ、辛酸を舐める
ことになるだろう。

今変わる勇気がいるのだが、どうも旧い日本に逃避する傾向が強い。「品格」
ブームもその一端だし、なんでも小泉改革のせいにするのも同じ魂胆だろうと
思っている。

「#0133、#0137のいちのへ氏の投稿」を拝読して、本質を見通しておられ、
また、お気持は分からないではないが、失礼ながら「それは余りに自虐ではな
いですか」と言ってしまいそうである。しかし、この国が変わるには、長い目
でみることも必要な部分もあるように私は思っている。

たしかに、日暮れて尚道遠しの感は強いが・・・その期待を夢とするのは些か
寂しいことかも知れない――――。

                        = この稿おわり =
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この記事は、メールマガジン「縄文塾通信」2008年2月15日発行第290号に転載して頂きました。とても真面目で面白い、素晴らしい 無料マガジンです。購読される場合はここをクリックして下さい。(←新しいウインドウで開きます)
┌──────────「縄文塾通信中村忠之主幹のコメント」
不勉強にも、紋起さんの論説を拝見したのは初めてである。「ガソリン税」「所得格差問題」で、かくも明哲に民主党の論旨の 矛盾と不勉強を突いたものは珍しい。なにによらずいい加減でアバウトな中村にとっては、ご説なるほど・納得・ごもっと も。大いに拍手を送りたい気持ちである。
国を挙げて円高誘導をすれば、25円の差などすぐに埋まってしまうと思うのだがどうだろう。なにもエネルギーだけでは ない。食料や諸原料、特に高騰中のレアメタルなど大いに助かるはずである。
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┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「オダティエさん」 紋起さんの意見は確かに正論。 だが、例えば出血の止まらない重態患者に対し、日々の健康管理が必要だと説 教するようなもの。出血するにいたった原因をあげつらっても仕方がない。 日々の健康管理はもちろん必要だが、何よりもまず外科的処置が必要。近視眼 的に見えるかもしれないが。 └────────── ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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