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坂の上の雲を! ――――――――――― by 紋起さん |
☆ 負けないために:賛否意見(1) ――――――――― 2006/12/11
┌──────────「Yのぶながさん」―――― 2006/11/13
紋起さんの「負けないために」の論は、大東亜戦争の問題を、現在にどのよう
に繋げていくかという問題意識に進めている点で、同感するところが多い。
自虐史観も皇軍讃美史観も、別の意味でこれからの日本の進む道を正すことに
ならないとの言い分は正当である。いずれも敗戦の再生産に通じるとされる氏
の論は傾聴するべきである。その意味で、戦前の日本について反面教師とする
べきことは多い。
小室直樹の指摘する「軍と官僚の劣化」は、現代の日本官僚の堕落や腐敗のあ
りさまと同じだとする点も同感できる。陸軍と海軍のセクト的な争いは、現在
の官僚の「省益」中心の発想とそっくりである。
また、義戦という道徳的カタルシスの視点も、白人支配を覆すアジア解放の戦
いだったとする人種カードを持ち込むの論も道徳的自慰にはなるだろうが、今
現在から明日にかけて、日本の直面する現実問題に解決の道筋を与えるとは思
えない。
大東亜戦争を正当化することで、自虐史観にアンテイテーゼを示さんとする意
図や、民族精神の基本軸を失った戦後日本に活を入れることを試みようとする
保守の姿勢は理解できるが、政治と外交について、そこから新たな指針が生ま
れるとは思えない。
戦後の日本には、戦前と同じような弱さや弱点が伏在しておることを洞察する
視点がどうしても必要だと思う。今の外交のままでは、いろいろな意味で第二
の敗戦に繋がるだろう。
ただし、氏の論に留保したい点がいくつかある。
1.あの戦争の謀略的側面について解明する努力を、直ちに「謀略史観」と結
びつけるのは短絡である。ハルノートが、あのタイミングでルーズベルト側近
のソ連スパイだったホワイトによって草稿されたような事実なども含めて、国
際情報戦という陰の動きが、緊張が煮詰まった時点で実質的な要因であったこ
とは知っておく必要がある。
国際政治の舞台においては、いつの時代も情報、インテリジェンスリタラシー
が大きな役割を占めることは現在においても同じである。諜報情報を専門的に
担当する機関を持たないでスパイ防止法もない今の日本は、外交において大き
な弱点をもっている。明治の日本政府のほうがその意識は旺盛であった。昭和
戦前の失敗から学ぶべき教訓があるのに学んでいない。
2.吉田茂の再軍備反対については、その後の日本に与えた影響の大きさから
歴史的評価が低いのは当然である。経済優先と安全保障の問題を、あれかこれ
かという選択にしてしまった彼の遺した後遺症はいまでに続いている。
自国の安全保障をアメリカに依存する体質は、彼が主導した国家運営のいびつ
さとして、いまだに克服されていない。
3.欧米の狡さによって「罠に嵌[はま]っていった愚」という表現は分かり易
いが、国際政治において諸国のとる戦略は、それぞれの国益や威信がかけられ
ているのは今も昔も同じであり、狡いとか賢いという軽い表現で形容するべき
ではない。お人よしの日本、といったことで、国家戦略を確立できないままの
日本を甘受できるはずはないだろう。
戦前の日本が、本当の意味で国家戦略を確立できないまま、戦略的に大失敗し
たとすることをしないまま、今も国家戦略がない。これでは外交戦争で第二の
敗戦になってしまう。日本の保守派は、総じて精神文化論に傾いているが、現
実の国際政治と外交に鋭く切込むような洞察に欠けているのではなかろうか。
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┌──────────「紋起さん」―――― 2006/11/16
私の投稿に、ご丁寧なコメントを頂戴し、ありがとうございます。
貴兄のご指摘の点が、私の意図と異なる部分がございますので、(私の文章力
が拙いので申し訳ないとは思いますが)再度ご説明を致します。
1)私は、謀略の事実を究明する事を否定する積りは全くありません。それは
重要な作業であると思っております。しかし、謀略であることが判明した後、
それに嵌[はま]った原因を究明している論を寡聞にして存じません。「謀略で
あった」で終わりなのです。
例えばハルノートの草稿を書いたホワイトは、ソ連のエージェントである事は
立証されています。しかし、彼がハル長官を口説いたり、長官に見せないで日
本に提示したのではありません。ハル長官は別の温和な案も作成し、ルーズベ
ルト大統領にそれでいきたいと言っていたようです。しかし、チャーチルと蒋
介石の強い要請、或いは強引な干渉で、最後通牒のような形になって出された
と言われております。(「ハル・ノートを書いた男」文春新書)
読んでみますか? → http://chinachips.fc2web.com/tiny/jp_top.html
これが真実なら、ホワイトがソ連のエージェントであったことと、ハルノート
が日本に突きつけられたこととの間は、直結しているのではなく、他に検討す
べき点が多々あるように思います。しかし、謀略史観(こういうのを史観とい
うべきかどうか分かりませんが)では、ホワイトがソ連のエージェントであっ
た、で終るのです。
さもホワイト=コミンテルン)が開戦に導いたような印象を与えて終ります。
これでは何も教訓を引き出せませんので、謀略だから日本は悪くないとして終
わりにすべきではない点を主張したのです。当然ここからは、国際政治におけ
るインテリジェンスの重要性や、ロビー活動の重要性等々を教訓とすべきなの
ですが、今もって形すらないですね。
2)吉田茂が偉いとは主張しておりません。吉田茂が、正式の軍隊なき講和を
進めたことを非難するなら、武装解除をされた原因を非難した後の話ではない
のかといっているだけです。
ついでながら申し上げると、(釈迦に説法で恐縮ですが)吉田がサンフランシス
コ講和条約に調印した昭和26年に、戦力保持を否定している現憲法を改正で
きたと思われますか。――――国民投票で2/3以上の賛成を得る事ができま
したでしょうか。それとも占領軍のご威光で、超法規的に変更でしょうか。
昭和22年〜23年にかけて、社会党の片山哲が首相でした。朝鮮戦争は昭和
25〜28年であり、ここでハイパーインフレも終焉し、敗戦の貧困からやっ
と一息つけた時代の始まりです。
しかも、戦前のブロック経済で日本は販路がなく、不景気で苦しみましたが、
世界的な自由経済はまだ姿を明確に現してはいません。その中で、軍備費をど
うするかは、吉田の苦しんだところだろうと思います。自由貿易になったのは
東西の対立、冷戦があったお蔭で、西側が豊になるための自由貿易が進められ
たお蔭だと思います。
日本が高度成長を遂げたのは、世界の工場となり、世界に売れる製品を作った
からです。この構図は、吉田に見えるはずもありません。今の繁栄をベースに
考えてはならないと思います。
吉田が悪いのではなく、国が豊になっても憲法を変えさせなかった後継者の責
任、吉田茂は良く頑張った、と、個人的には評価してますが、それを前投稿で
主張したつもりはありません。
3)狡い、賢いという軽い表現はするなとのお話ですが、他に適切な言葉がみ
つかりませんでした。日本人は、相手が詐であると思う事が出来ない思考回路
を持っているのでしょうね。日本国内では、互いの取引も楽なのですが、諸外
国、特に大陸のスレタ人達との交渉は、結果として裏切られる事が多いのでは
ないでしょうか。
彼らは、騙されることの積み重ねで成立している文化を身につけてますから、
我々は心して掛からねばならないと思います。よき言い方があればご指南下さ
い。
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┌──────────「Yのぶながさん」―――― 2006/11/17
釈明された部分には、些か偏りがあると思います。
1)インテリジェンス:
日本が国際政治の上で必要なインテリジェンス・リタラシーが欠如しているこ
とを警告するために、戦争にまつわる諜報、謀略の真相を解明している、その
意図を素直に受け止めるべきだというのです。それは決して、謀略史観で以っ
て日本をその被害者とする観方ではないのです。
特に中西輝政氏のこの点についての論評は、今日的な問題意識が鮮明に出てお
ります。これに関連して思うことは、米英では、CIAのような情報機関には
頭脳明晰なエリートが意欲的に入り、その経験を以って政治外交などの分野で
指導的な地位に就くという伝統があります。
その例は枚挙にいとまがないほどです。ブッシュの父親もCIAの出身です。
ロシアのプーチンも旧KGBの出身です。日本は全くそうしたエリートの文化
が育たない。この違いは大きい。日本ではインテリジェンスや諜報の世界は、
なぜか暗い否定的イメージで捉える傾向があります。
そして、主流ではなく傍流の分野のごとく扱われる。このため、外交において
現実主義から離れてしまう甘さがつきまとうのです。戦勝国連合に過ぎない国
連を過大に評価するのもこれに関係があるといえます。(特に今は第二次冷戦
の時代ですから)
2)吉田茂:
SF講和条約までは、GHQとの協調と取引によって日本を導いたことは十分
に評価されて然るべきですが、いよいよ独立した日本をどうするかというヴィ
ジョンがなかったため、占領による「米化」に押し流されるまま、1955年
の鳩山・岸内閣によって「逆コース」を迎えるまでの間、鳩山に対抗するため
に自衛力構築に反対して経済優先を唱えた。
彼にとって、独立国家として日本のなすべき使命が半端になった職業政治家の
限界という評価になるでしょう。今は岸信介が高く評価されるのは由なしとし
ません。
3)戦略競争:
狡賢い、と、お人好し、の表現は、個人レベルではなく国家レベルのこととな
れば、国益と安全と国威を争う国際政治の上ではインテリジェンスをベースと
した戦略が求められる。理念も普遍的価値も、この戦略との整合性において試
されるでしょう。人が好いとか悪いとかいう次元ではなく、知的成熟度を競う
真剣勝負とみなすべきです。――――国家の運営も「知情意」のダイナミクス
としてみるなら、敗戦の教訓はさまざまに導かれるはずです。
4)情のこと:
ついでながら、赤穂義士伝には根強い人気のある日本には、大東亜戦争=義戦
論がカタルシスとなるのもむべなるかなです。「義理が廃ればこの世は闇よ」
の歌の文句には酔いがちなものです。(私はこの歌が好きなのです。「俺も生
きたや仁吉のように」)紋起さんも覚悟しておかれるがよい。
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= まだまだ続きます =
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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