タイトルを言い換えるなら「広島・長崎と東京大空襲は、どう違うのか?」と
いうことになるでしょうか。
去年も書きましたが、広島・長崎に落とされた原爆は、超強力な兵器に過ぎな
かったと考えています。つまり、通常兵器と核兵器には本質的な違いはなく、
また、広島・長崎と東京大空襲も、同じ悲惨な戦災であるということです。
こう書くと、核兵器には「放射線」による長期間の被害があるという事を忘れ
ているのかと言われそうです。実際、核廃絶を訴える人たちも、その点で通常
兵器と違うのだと結論付けているようです。
・中高生のための「核兵器廃絶」基礎知識
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/HS_JH/05.htm
核兵器は、例え生存したとみえても、実はすべての生きとし生けるものの「生
きる機能」を破壊するばかりでなく、確実に遺伝子を傷つけ、正常に次世代に
受け継いでいく「再生産機能」までも奪ってしまう兵器だ、ということです。
しかし、その点にも私は疑問を持っています。
いえ、よく分からないというのが正確かもしれません。
被爆直後から半年程度の間に亡くなった方は、それが放射線によるものでも、
東京大空襲の時の、ヤケドや怪我で空襲の後に亡くなった方と、本質的には同
じだと思います。
問題は、そうした一次被害の後に、長期に渡って放射線の影響が残り多くの命
を奪ったり苦しみを与え続けるのかという点です。
そうした長期の被害は、以下のような指摘で表現されてきました。
1.広島には何十年も人が住めなくなるだろう
これは被爆直後から言われたそうですが、実際にはまったくのデマでした。
また、被爆二年目には、昭和天皇が広島市内を行幸しています。
2.遺伝子が傷つき、無事に生まれ育つ子供が減るだろう
先に挙げた、中高生のための「核兵器廃絶」基礎知識、にも結論として書かれ
ていますが、次世代を生み出す機能は本当に破壊されたのでしょうか。
以下に広島市の長期人口推移を掲載しますが、昭和22年の調査で人口が一時
的に落ち込んでいる以外は、その人口増加率はまったく他市と変わりがありま
せん。
「広島市の長期人口推移グラフ」
http://www.iza.ne.jp/images/user/20090806/570385.gif
また、戦災による人口の一時的な落ち込みは東京でも名古屋でも同様で、大き
な空襲を受けた都市の特徴でしょう。
3.何年も後に発病して、苦痛や死を招くだろう
いわゆる原爆症というもので、患者認定で何度も裁判が行われたりしていまし
たが、今回、麻生総理が全面解決といえそうな書面に署名したそうです。
原爆症に苦しむ人や亡くなった方を貶めるつもりは毛頭ありませんが、この問
題に関しては曖昧な部分が多く、また具体的な数字すらハッキリしないように
思います。
例えば、被爆の翌年以降、原爆症で亡くなった方は何人いるのか、それはどの
時点まで明確なのか…。年数が経てば経つほど、通常の人の発病と区別が付き
にくくなるという難しさが絡むのでしょうが、そうした数字を余り目にした事
がありません。
もっとも、被爆直後の死亡者数すら非常に曖昧なものだそうですから、本当に
よく判らないとしか言いようがないのです。
・広島の原爆の死者の公式数15万±1万人は幻か
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20090705/hirogen
もちろん、現実に原爆症で苦しみ、亡くなった大勢の人がいることを否定した
り、疑っているのではありません。
放射線による被害がどの程度の期間、どの程度の犠牲者を出したのか、信頼で
きるデータがみつけにくいといっているのです。
まして、一部の学者が言うように、戦後60年以上経っても影響が出る可能性
が…などと言い出すと、どうにも不信感を持ってしまいます。胎内被爆の人で
も既に60歳を越えているわけで、ガンや他の疾病があっても不思議ではない
年齢です。
広島市の人口増加率がまったく他都市と変わらない、いやそれどころか、見よ
うによっては率が高い部分もある、そうした事実は一体なにを示しているので
しょう?
そう考えると、やはり三番目の「放射線による長期の被害」という項目はよく
判らないとしか言いようがないのです。
最後に、通常兵器と違うポイントとして、大規模な核戦争になれば地球の環境
を破壊してしまうという人たちがいます。しかし、大国が最も強力な兵器で相
手を殲滅しようとしたら、それが核兵器でなくても、地上の人間が無事でいら
れるでしょうか?
互いに滅ぶ事を覚悟した全面核戦争と同じ状況になったら、核がないとしても
生物兵器や科学兵器などをすべて使うでしょうし、他にも知られていない強力
な兵器があるかもしれません。
いずれにせよ、大国が滅亡を覚悟して戦うなら、今の科学力で作られた兵器は
簡単に地上から生物をなくしてしまうでしょう。
最後に、被爆や戦災による被害者を利用してタブーを作り、自分達のイデオロ
ギーや政治に利用しようとしている人たちこそが、死者や苦しむ人たちを蔑ろ
にしている者たちです。
広島・長崎の被害を、東京や大阪などの大空襲と同じように、原爆の事実を直
視することで、初めて本当に必要な事が見えてくるのではないでしょうか。
ホロコーストの被害者だというユダヤ人は、二度と同じ悲劇を繰り返さない為
に、「世界からどうきられても、生存の為に必要な事をする!」と、原子炉の
空爆でも暗殺でも隔離でも、なんら怯むことなく実行しています。
ーーー侵略された国は、二度と侵略されないように軍備を整えています。
ーーー原爆を落とされた国が考えるべきことは、なんなのでしょう。
= おわり =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛
◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 37人 (37%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 30人 (30%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 10人 (10%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 8人 ( 8%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 15人 (15%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛
┌──────────「中島茂忠さん」
結論から言いますと、このご意見には異議があります。
先ず冒頭の<原爆と通常兵器の違いを、広島長崎の原爆投下と東京大空襲の違
いに置き換えた事>が誤りだと思います。
どちらも民間人の大量無差別殺戮だったという点では同じで、間違いなく非人
道的であった事は疑いの余地がありません。が、この二つの事例の根本的な違
いは、
原爆には選択性がなかったのに比べて、通常兵器の焼夷弾を主体とした東京そ
の他の大空襲は、選択性があったにも関わらず行われた作戦だったという点で
す。
通常兵器であれば、選択的な軍事目標への攻撃が可能ですが、原爆ではそれが
できません。東京大空襲は、原爆に匹敵する殺戮を行う為に広島長崎とは比較
にならない数の爆撃機、援護戦闘機と爆弾量の使用と、それに伴う撃墜被害を
出しています。一方の原爆は、何れもたった二機程の爆撃機だけです。
一時は、核兵器の思想に反する局地戦用の小威力核兵器の開発も行われました
が、最近はあまり聞かれません。元々の核兵器の基本思想が巨大なエネルギー
で広大な地域を無差別に一挙に破壊してしまおうというものだからでしょう。
つまり、最初から軍事目標、民間人の差別なしに、兎に角広大な地域を自分の
最小の手間や面倒で全滅させようという魂胆である点が通常兵器とは根本的に
違っています。
仰る通り、原水爆に因る放射能等の二次災害が実際どの程度なのかハッキリし
ない点は多々あるようですが、化学兵器と同様に、通常兵器の結果より面倒で
ある事は間違いのない事です。
ーーー以上の二点から、貴ご意見には賛成しかねます。
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
広島の小さな目標を破壊するつもりだったのに、原爆だったがゆえに広範囲な
被害を出したのならば、その通りでしょう。しかし、もともと広範囲に被害を
及ぼすという目的があって、初めて核は使用されます。
もし核兵器がなくても、広範囲を破壊殺戮しようと思えば他の方法を取るだけ
でしょう。それはドレスデンでも東京でも証明されています。
┌--------
東京大空襲は原爆に匹敵する殺戮を行う為に広島長崎とは比較にならない数の
爆撃機、援護戦闘機と爆弾量の使用とそれに伴う撃墜被害を出しています。
└--------
大本営発表を信じても、撃墜15機にしか過ぎません。杉並だけにあった最新
鋭高射砲部隊が一機撃墜したと、当時の人から聞いた事があります。
ーーーどちらにしろ、殺される側からすれば、なんの違いもないのではないで
しょうか。
┌--------
通常兵器の結果より面倒である事は間違いの無い事です。
└--------
戦争が終わってもなお、アジア各地で直接被害を出し続けている地雷は、非常
に単純で安価な通常兵器です。
└──────────
┌──────────「しょーちゃんさん」
手元に原典資料がないのでうろ覚えで申し訳ありませんが、
放射線医学会や米国陸軍軍務局による長期(たしか20年)追跡調査結果では、
一定の放射線量を被爆した場合は、線量に比例して悪性新生物の罹患率が有位
に上昇、との報告があり、
また、投下直後に救援で入った方々からも後遺被爆ともいえる状態で発病され
たケースが記載されていました。----救援者からの発病率は、投下後時間経過
と共に大幅低下していたと記憶してます。確か3日以内はかなりヤバかった。
マスコミや一部評論家の方々は、何故資料をきちんと参照してから意見を述べ
ないのでしょうか?ーーーさまざまな理由でネットにアップされない紙資料は
膨大にあります。
全てを見ろとはいいませんが、疑問に感じたら調べる・聞くは基本の行動、図
書館などで閲覧できる書籍も数多くありますので、まず行動されることをお勧
め致します。とはいえ、
やせ我慢さんが本当に言われたいことは、多少理解しているつもりです。
原爆に限らず、大量破壊兵器全般がなぜ必要になったのか、それを使わない/
使えない理由とは何か、こういった根本原因を考えなければ、単に、悲惨だか
ら、被爆国だからといったアマイ根性・抽象論で核廃絶を唱えることになって
しまいます。
本当に核廃絶を望むのなら、大多数の人々が理解し納得し行動できるものにな
らなければ、と思います。また私も、戦争反対ならキチンと備えをするべきだ
と思います。
ま、国策として全くの無抵抗主義で行くつもりなら、それはそれで承知しませ
んが納得します。
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
┌--------
さまざまな理由でネットにアップされない紙資料は膨大にあります。全てを見
ろとはいいませんが、疑問に感じたら調べる・聞くは基本の行動、図書館など
で閲覧できる書籍も数多くありますので、まず行動されることをお勧め致しま
す。
└--------
一応はざっと目を通した上で、どうにも曖昧で不明確だなと思いました。
被爆直後の強い影響は明白ですが、それは他の兵器でも同じで、数日から数月
後に死者が出るのは珍しくありません。
曖昧だというのは、その後の一年後からの影響(死亡など)なのですが、おそら
くGHQの制限もあり、ちゃんと調査さていないようです。
それ以後は、どこまでが原爆症なのか曖昧なままに、政治利用されたように思
えます。
┌--------
やせ我慢さんが本当に言われたいことは多少理解しているつもりです。原爆に
限らず大量破壊兵器全般がなぜ必要になったのか、それを使わない/使えない
理由とは何か、
└--------
私は、被爆者やその遺族に対する感情的なサポートや気遣いは重要だと思って
います。ただし、政治上の判断をする場合には、他の問題と同じように感情面
ではなく事実を冷静に見るべきだと考えます。
└──────────
┌──────────「hideおじさん」
通常兵器にしても核兵器にしても、「生物にダメージを与える」ことを目的に
しているものですから、基本的に変りはないと思います。敢て違うというなら
ば「使える兵器」か「使えない兵器」かということではないかと思います。
使えないからこそ、その存在意義があるのかもしれません。だいたい、使った
ら世の中終わりですけど。
でも別な見かたをすれば、日本だからこそ「使えない兵器」を持つ意義がある
といえないでしょうか。我々は専守防衛といってますし、外に出て行って戦う
準備も器具もありません。これほど日本の国是にあった兵器はないかもしれま
せん。
勿論、これは極論といえるかもしれませんが、核もひとつの兵器であるのです
から、極端に特別視してはならないと思います。
一人死ぬのも百万人死ぬのも、恐怖であり悲惨であることには変わりないので
すから、いかに誰も死なない、戦わなくてもよい兵器はないか、あるとするな
ら何か、そんなことを考えるのも「あり」だと思うのですが。
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
┌--------
勿論、これは極論といえるかもしれませんが、核もひとつの兵器であるのです
から、極端に特別視してはならないと思ってます。
└--------
その通りだと思います。物事や現実を直視しないことが、実は一番恐ろしく、
また被害者を蔑ろにすることです。
政治や軍事で語るならば、その兵器の特性と可能性を冷静に見るべきです。そ
のことと、被爆者遺族への心遣いとは別な問題です。
└──────────
┌──────────「まいさちさん」
意味合いは違いますが、放射線の人体に対する影響について、実感として私に
もよく解りません。ーーー数年前亡くなった私の叔父は広島での被爆者です。
被爆直後は大変苦しんだと言い、身体にケロイドも残っていましたが、その後
は至って健康でした。死因も、原爆症とはいえません。その子らも孫も、何ら
障害はありません。
だからといって放射線の害を否定するわけではないです。ただこういう例もあ
るとどこかで言いたかっただけです。
通常兵器と核の違いは、桁外れの破壊力だと思います。それが、通常兵器と違
う戦術的、戦略的、政治的意味を持つと理解しています。
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
貴重なお話、ありがとうございます。
┌--------
通常兵器と核の違いは、桁外れの破壊力だと思います。それが、通常兵器と違
う戦術的、戦略的、政治的意味を持つと理解しています。
└--------
その通りです。少なくとも確かに判っている事は、強力な破壊力がある兵器だ
ということです。
そうやって事実を見ていくことで、政治や安全保障は語るべきことであり、慰
霊や遺族への配慮とは別な問題だと思います。
└──────────
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この記事はブログ「戦争に負けた国」より転載させていただきました。