―― 豊かさの為に必要な選択
前稿に続き、具体策の前に必要な基盤となる選択というテーマで、「豊かさ」
を実現する為に必要な方法論を考えてみます。
「豊かさ」を国の大きな目標の一つにすることは、これもあまり異論はないと
思います。
前稿で採り上げた「安全」は、割合に簡単な選択でもありますし、愛国という
気持的にも好まれやすいテーマです。なのでどうしてもそればかりに目が向け
られがちですが、今回取り上げる「豊かさ」は「安全」と同等か、時にはそれ
以上に重要なものです。
※ 極端な例でいうなら、武器も兵も持てないほど貧しい国や社会は、自らを
護ることはできないからです。
もちろん「豊かさ」とは、単純にお金が沢山あれば実現できるというものでは
ありません。また、「豊かさ」とは何かという、かなり主観的な問題もあって
簡単にはいえない部分もあります。
おそらくあまり異論のないであろう「豊かさ」の一つは、「衣食住」を一定の
レベルで得ることでしょう。
つまり、「飢えず」「凍えず」「雨露を凌げる」ということです。
そんなものは当たり前だと思う人もいるでしょうが、そう思える日本の豊かさ
は、ごく最近、ここ40年程度のものに過ぎません。
それ以前は、75年前の昭和9年の東北大飢饉のように、大凶作が起きれば飢
える人が続出しましたし、食糧難が重大事だった戦後が終わったと言われたの
でさえ、つい50年前のことです。
1993年の冷夏によって、全国的な米の凶作が起き、タイ米の輸入などの騒
ぎになりましが、これも、もし現在のように経済力を持たない時代であれば、
飢餓や困窮という社会問題を引き起こしたかもしれません。
「飢えず」「凍えず」「雨露を凌げる」ことが、当たり前の前提になっている
のは、ここ40年足らずの極く短期間のことであり、決して未来に渡って保証
されているものでもなんでもないということです。
ーーー現に今の世界を見てみれば、そうでない国のほうが多いのですから。
そして、「衣食住」を当たり前の事、と思える日本の現状を支えているのは、
世界に物を売れるという経済力です。つまり、豊かな社会をどう作るかという
問題の以前に、やはり一定以上の経済力がなければお話にならないという事で
す。
さて、「豊かさ」の基本的な部分を考えてみましたが、
それを含めて、どうやって「豊かさ」を得るかという方法の選択が最初に必要
です。要は、その「豊かさ」を国に与えて貰うのか、自分たちの努力で得るの
かという選択です。
これももちろん、単純にどちらか一方だけなどということはあり得ないのです
が、どちらを基本に置くのかという選択は絶対に必要です。
つまり、自助努力を基本として、どうしても無理な部分を国が補うのか、逆に
一定のレベルまでは国が保証し、それ以上を望むなら自助努力で得るという形
なのかということです。
この選択を明確にしないで、具体的な社会保障や経済政策などの問題を論じる
から混乱や行き違いが起きているのではないかと思います。
私の場合は、何度も書いて来ましたように、自助努力によって「豊かさ」を手
に入れる事を基本とした社会を選択します。なぜなら、国家がそれを与えると
いう社会主義の、悲惨な失敗という教訓があるからです。
また体験的にも、人間は与えられ保護されるほど活力を失い、ひいては道徳心
まで失っていく事を知っているからです。勤労というものが、単にお金を稼ぐ
だけでなく、人が人である為に重要な要素だと考えるからです。
ところで、時として「安全」よりも大事な「豊かさ」を得る方法の選択につい
て、あまり注目が集まらないのは何故でしょう。
まず、感覚的にも理解しやすい「安全」の問題と違って、経済というものが複
雑で判りにくいということです。そして、今の50歳代よりも若い人たちは、
生まれた時から既に「豊かさ」を得ていたという点も大きいと思います。
そして最も困った問題が、政治や経済の長老格である60代70代が知ってい
る豊かな時代ですら、戦後復興期という、異常な時期のものでしかないことで
す。
つまり、どの世代でも、「豊かさ」が失われそうになって不安が明らかになっ
てくるほど、「今ままでの方法」に固執し、それをより強化しようとする人が
沢山出てくるのです。
「今までの方法で、戦後の復興から奇跡の経済成長を成し遂げ豊かな国になっ
たじゃないか」「おかしくなったのはアメリカ流のグローバルスタンダードな
ど取り入れたからで、日本は日本独自に成功してきた今までの方法を大事にす
べき」
特にそこまで意識しないでも、漠然と良かった頃を大事に思い、変化を嫌う人
は少なくないでしょう。
つまり、生まれた時から豊かさを得ていた多くの人にとって、「豊かさ」を得
る方法の選択が重要である、という意識を持つのが難しいということです。
また、その豊かな時代を通して行われてきた唯一のやり方に、漠然とした安心
感と回帰を望む気持が付与されていて、冷静に選択を考えられない面もあるよ
うに思えます。
++++この「今までのやり方」とは、以下に述べるような復興期に於ける社会主
義的な政策です。
ここで重要なのは、戦後復興期という1950年代から1980年代までの時
代が異常な時代であり、その異常な時期に成功した方法論が現在のように復興
して経済的には普通の国家になった日本と、それを取り巻く世界の状況の中で
同様に成功するとは限らないということです。
もっとはっきり言うなら、異常な時代は参考にならないし、判断の邪魔になる
ならキッパリと忘れる必要があるということです。
卑近な喩え話でいえば、結婚直後の甘い新婚時代という異常な時期と、その後
の普通の夫婦としておくる長い日々は、まったく違うようなものです。
新婚時代のような甘い考えで奥さんに接していたら、いったいどんな罵声を浴
びせられるか、それを想像してみれば、異常な時期の成功体験は当てにしない
ほうが良いと判るはずです。
戦後の復興期は、以前にも喩えたように、大震災直後からの復興と似ている状
況で、国が支援を行い、それを統制し、多くの人に平等に食料や寝泊りする場
を提供します。
しかし、やがて状況が落ち着き、復興が終わりに近付くと、そうした配給や統
制は、逆に再起の害になるのです。
戦後の経済成長期にしても、土木建設の公共事業でお金を回し、競争よりも規
制と保護によって業界の強化を官僚の主導によって目指したわけですが、それ
は、短期間でほとんどゼロの状況から立ち直る為に必要な措置でした。
そうした社会主義的な方法は、復興期という異常な時期にのみ有効だと私は考
えますし、1990年代の失われた10年は、それを示していると思います。
それがもし正しいなら、復興期という一種のユートピアに対するノスタルジー
を捨てて、「豊かさ」を得る方法を冷静に考え、明確に選択する必要があるの
ではないでしょうか。
その時に忘れてならないのは、この国が払わねばならない負債やコストを抱え
つつ、それを支える労働者数が減り続けるという現実の数字です。
先稿の「安全」、言い換えれば「愛国か反日か」という視点で見る場合と「豊
かさをどう実現するか」という視点から見る(つまりは社会主義か自由主義か)
のとでは、政党や政治家、あるいは言論人への評価もまるで変わってくるはず
です。
以前にも書きましたように、社会主義的な経済と社会を目指している、という
意味では、一部の保守と呼ばれる政治家も反日の代表とされる極左政治家も、
まったく同じだといえるでしょう。
本当に面倒な話ですが、その両方の視点を、時と場合に応じて使い分ける必要
があるのです。
一方で、戦後から今までの日本は、社会主義的な経済と社会であり、その同じ
土俵の上で保守だ革新だと政治が争っていました。
しかし今は、その土俵自体を選択する時期なのだと考えます。
今後も「豊かさ」を持ち続ける為に、今まで通りの、つまりは社会主義的な方
法を続けるのか、今までとは大きく変わる事を覚悟して、自由主義を基盤に置
くのかという選択です。
もしも、自由主義=自助努力と自由競争を基本とする社会によって「豊かさ」
を実現するのだと選択するなら制度も構造も大胆に変える考え方が必要です。
例えば、一部で提唱され始めた「労働市場の自由化」にしても、正社員の首切
りを容易にするだけの経営者の為の策だ、と単純に反対せず、それが社会の構
造にどんな変化をもたらし、ひいては「豊かさ」を実現する事に役立つかどう
かで考えたいものです。
そして考え方を変えると同時に、「足るを知る」など、かつて自由主義を基盤
とした時代に育まれた先人の知恵が、とても重要になると考えます。
= おわり =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛
◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 23人 (50%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 16人 (35%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 4人 ( 9%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 1人 ( 2%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 2人 ( 4%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛
┌──────────「罰当り特亜さん」
外国人を入れるとか参政権を与えるとかいうのが、サヨク=社会主義でもない
でしょうし、特亜の戦略で日本をどうこうしようとする賊は、今回の意見と別
個の話だと思うのですが。
自由主義・社会主義の区分に入らない事だと思うのです。よってどちらかとい
えば賛成。
自立を考える。身の回り3mだけで全てを論じない。箱庭平和主義は、犯罪者
・特亜幇助であると自覚。
ーーーといったところから皆さんが考えられるようになれたら嬉しいですが。
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
外国人とか参政権の問題は、安全に関することでしょうね。
└──────────
┌──────────「あ〜さん」
やせ我慢さんは、私とは根本的に考え方が違うのでしょう。(笑)
古い過去のやり方ではダメだと、社会主義はダメ、自由主義は大丈夫。言って
いる事は分らないでもないのですが本質を見間違えているとしか思えません。
日本は戦後の復興時に、勿論公共事業も沢山しました。しかし、民衆が助け合
う村社会の延長として世界に誇る立派なシステムがありました。
バブルが弾けた後、アメリカを全て買われる恐怖を味わったアメリカに逆襲さ
れ、全て間違いだと否定され、長年続けてきた会計基準や、護送船団方式=株
の持ち合い等)を否定され、日本株式会社の解体を迫られました。
では、今はどうでしょう?
アメリカは今現在が危機に陥っているため、再度自分の都合のいいような会計
基準を持ち出し、健全だと言い張っています。バブルの弾けた時に日本が会計
基準は世界に関係なく、ずっと今までと同じで処理するといえば、金融機関の
自己資本も8パーセントは難しくとも4パーセントを割る事はなかったでしょ
う。
やせ我慢さんの自由主義とは何か?
世界に存在すらしない国を想定しているのか、それとも自由の旗を振るアメリ
カを想定しているのか。ーーー存在しない国を想定しているのであれば、ただ
の夢見る人ですね。ーーーアメリカを想定しているのであれば、早晩アメリカ
と日本は破滅するのでしょう。
私は過去の古い日本、自由社会主義とでもいうのでしょうか、日本株式会社の
復活が一番日本人に合ったシステムだとずっと思っていますし信じています。
以前 OJIN さんにも少し話しましたが、バブルの時にJAPANプレミアムと
いう不名誉な国際金利を課せられました。
しかし、メイドインジャパンを世界にブランドとして売れる最後のチャンスが
来ていると私は思います。ーーー外国で生産したものは日本製品ではない、と
政府が世界に発信し、純然たる日本製品は日本で作った物だけ、と当たり前の
事を世界にコマーシャルすれば良いと思います。
日本から外国へ、安い人件費を求めていく企業は、政府が、日本製品と認めま
せんと公にすることで、ある程度は止められると思います。
世界が注目する(今は注目している)クールジャパン=過去の優れた日本人の貯
金)を有効に生かすチャンスはもう直ぐなくなりそうです。
ーーーアメリカ物真似人間が生息する限りは・・・
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
違うものは仕方ありませんね(笑)
┌--------
しかし、民衆が助け合う村社会の延長として世界に誇る立派なシステムがあり
ました。
└--------
それは、政府が全てを面倒見てくれるシステムという意味ですか? 逆に自助
努力=民間での協力や助け合いも含め)を基本としたシステムではないでしょ
うか。
┌--------
やせ我慢さんの自由主義とは何か?
└--------
なにか誤解されているようですが、私は基本となる選択の話を書いているので
あって、具体的なシステムの話を書いているのではありません。それなのに、
自由主義でもいろいろとあるモデルのどれなのか、と訊かれても困りますね。
具体的なモデルの前に、自由主義か社会主義かという選択をすべきだというこ
とです。
┌--------
私は過去の古い日本、自由社会主義とでも言うのでしょうか、日本株式会社の
復活が一番日本人に合ったシステムだとずっと思っていますし信じています。
└--------
それは具体的に、いつからいつまでぐらいの期間に存在した、どんなシステム
なのでしょう?
┌--------
世界が注目する(今は注目している)クールジャパン=過去の優れた日本人の貯
金)を有効に生かすチャンスはもう直ぐなくなりそうです。
└--------
それが、この記事と何の関係があるのでしょう。
┌--------
アメリカ物真似人間が生息する限りは・・・・
└--------
単に反米なだけなのでは?
└──────────
┌──────────「御座候さん」
今回の総選挙、自民党は「保守主義の自民党か、社会主義の民主党か」と言っ
ているようですが、今の自民党も十分に社会主義だと思います。
麻生首相の言う「行き過ぎた市場原理主義から決別する」というのは、どうい
う意味なのか、さっぱり分かりません。どのあたりが「行きすぎた市場原理主
義」なのでしょうか?
私としては「百年に一度の経済危機」を口実とした「行きすぎた保護主義から
訣別」していただきたいと思います。
└──────────
▼
┌──────────「やせ我慢さんから」
┌--------
今回の総選挙、自民党は「保守主義の自民党か、社会主義の民主党か」と言っ
ているようですが、今の自民党も十分に社会主義だと思います。
└--------
その通りだと思います。戦後日本には、自由主義を基盤とした時代が無かった
のでしょう。
だからこそ、復興が終わり、様々な出来事を経て閉塞感だけが残ってしまった
今、改めて、どの道を行くのかという基本的な選択を意識して行うべきだと思
うのです。
└──────────
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この記事はブログ「戦争に負けた国」より転載させていただきました。