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中国ビジネス・急がば回れ! ―― by サムライ駐在員さん

☆ トラ!トラ!トラ!金型回収大作戦(前編) ―――― 2006/02/24
本日午前よりシンセン××鎮に出張し、取引先や当社の新人駐在員を交えて、
楽しくメシを食っているときであった。常平の工場業務より携帯電話に入電が
あった。
「先生、今日シンセン方面に出張しているなら、帰る途中に例のXX工場から
金型を奪還してきてくれませんか」ときた。

状況は少しく複雑である――――。

まず、当社は、東莞市常平鎮にある出向先の工場(以降常平と呼称)に◇◇を
発注し、常平の購買課が外部の外注メーカーにこれを発注するというスタイル
になっているため、メーカーへの発注から納品までの実務は常平が行い、出向
駐在である私は仕様の提示と金型の確認、および品質の確認を行うという業務
分担になっている。

常平購買の責任者である香港人の某▽△が、東莞市の最も南端にある**鎮と
いうところにある、同じく香港系××社にオーダーを回したところからこの話
の伏線が展開されるのである。

さて、常平の購買責任者である某▽△は、どうも以前から「黒い霧」的な噂が
立っており、不可解な事件がよく起きるのであった。

たとえば、某某社に前金X万元也を払って金型を発注し、金型が完成する前に
図面上で不具合な点あったため修正を依頼したところ、メーカーは否といい、
再びX万元を支払って新規で金型を起こさなければならないのだという。

改めて図面上で確認してみるのだが、やはり重新開模(金型起こし直し)にな
るほどの変更ではないので、これはおかしい妙だなと思い、実際に金型を引き
上げさせてみると、なんのことはない、まっ平らで何も彫っていない、ただの
100kgの鉄の塊であった――――。

ロクに着手もしておらず、その上で適当なことを言って金型代を倍額せしめよ
うという、実にフテエ業者もあったものだ。

この件があって以来、常平当局は、内密に某▽△を注意するようになったらし
い。ーーー当然その金型は即、他のメーカーに振り替えられることになった。

その後、今回の案件はこうである。

件の金型はその後、某▽△によって上記の東莞最南端にある**鎮の○○社に
振り替えられ、そこで一回目の量産は完了したのだが、本国の顧客から再度金
型の修正が入り、某▽△を経由して○○社に修正を依頼したところ、ロクでも
ない見積もりが上がってくるのである。

台湾系企業である常平は、どうも香港企業をあまり信用しておらず、今回のズ
バ抜けて高い見積もりを受けるに至ってついに、某▽△と○○社が「おとなし
くないことをしている」関係であると断定、この両者を切り捨てることになっ
た。
某▽△は、即時解雇を言い渡された。

そこで問題になるのが、金型の回収である。金型は、当社が全額費用負担して
いるので、当然ながら当社の財産であると皆が認めるところであるが、某▽△
と末端のメーカーの関係になると、実に不透明で、前回まっ平らの金型を引き
上げる際も、返す返さないで大いにモメたという経緯がある。

なるほど、ぜんぜん着手していないのに、再度金型費用を巻き上げようという
のだから、返せないのも道理なのだが、そういう「信じられん」ことも往々に
して起きるのが大陸ビジネスの面白い(?)ところであるといえる。

従って今回の場合も、○○社が金型を素直に返却しないことも考慮しなければ
ならず、実に疲れる話である――――。

この件については、改めて常平が同じ台湾系のメーカーに振り替え、常平のい
ちばん偉い人自身が監督するという話になった。そのため、金型を至急回収す
る必要が生じたのだが、納期も差し迫っており、無駄にゴネている余裕は一切
ないので「保険」をかけた。

つまり、昨日解雇を言い渡され、本日香港事務所で退職処理に出頭している某
▽△の身柄を拘束し、本日夕方までに金型の無事回収が確認できない場合は、
X万元を某▽△の退職金より弁済させるというものである。

時間は急を要し、そういうわけでシンセンに出張中であった私に緊急電が入っ
た次第である。

もともと顧客代表という立場で「出向」している立場上、常平と常平が選定し
た○○社の間のモメゴトに、私が介入する謂われは微塵もないのであるが、

私が最も近いところに出ていることと、「日本からの顧客」であるという強烈
な圧力を利用できること、加えて**鎮の○○社には某▽△と私しか行った事
がない点を考えると、なるほどもっともな判断かもしれない。
 
午後2時半に取引先と別れ、件の○○工場へ向かう。

シンセンには、赤いタクシーと緑色のタクシーがあって、赤いタクシーはシン
セン市外には出られないのだそうだ。従って緑色のタクシーを拾わなければな
らないのだが、どういうわけかシンセン郊外の××鎮には、赤いタクシーしか
走っていない。

仕方がないのでバスで向かうことにしたのだが、聞けば、中間地点の某々とい
うところで乗換えが必要なのだそうだ。2元を支払って、ギューギュー詰めの
バスに乗り込む。

まったく知らない土地であるので、車掌の小姐に「某々に着いたら言ってくれ
ろ」と頼んだが、途中で、常平の一番偉い人より重要な電話が入る。

金型を受け取る際は、念のために金型を割って(開けてみて)、中身に傷がつけ
られてないかどうかを確認してほしいとのことだ。まったく仁義なき戦いとは
このことである――――。

困ったことに、やかましいバスの中で、力いっぱい電話を耳に押し付けて話を
しているうちに..車掌の声を聞き逃してしまい..バス停をひとつ通り過ぎてし
まった。
仕方がないので次のバス停で降りて、前のバス停まで2km程歩いて戻り、道の
反対側にあるバス停に移動するのだが、この横断がハンパではない。

片側3車線で、車がバンバン走る高速道路のような道で、周囲には横断歩道は
おろか交差点すらない。極め付けには、中央分離帯がコンクリート製で高さが
1メートルほどもある。

覚悟を決めて横断にかかるが、道路の真ん中に少なくとも3分はいたような気
がする――――。命の危険を感じた瞬間が数度あり、余談ながら当社の場合、
大陸の国内出張には出張手当は出ないのであるが、

ーーー出張手当なんかいらんから危険手当がほしい..と心底思ったーーー

                        = この稿おわり =
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┃┃ アンケートコメントボードに頂きました感想。
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┌──────────「Jan さん」

面白愉快にいれさせていただきました。 

まったくしょうがないですね。某▽△みたいな奴は中国人にはよくいますよ。
仁義なんてものがまったく欠落している民族ですから、X万元騙し取られたわ
けで、とんだ災難でした。私が知っているある老舗会社の二代目バカ社長も、
X億円を騙し取られて泣く泣く撤退しましたから。

私たちは警鐘を鳴らして、少しでもそんな不幸な目に遭う人が少なくなるよう
に努力しましょう。

└──────────
 
┌──────────「サムライ駐在員さんから」

やはりこの辺の感覚がまるっきり違いますね。

中国人が客人に対してもてなしが厚いのも、一旦歓迎しておいてからその人物
を観察するための、いわば「警戒」という意味合いもあるんだそうです。

なんだか、始めの取っ掛かりはフレンドリーだが約束を守らないラテン系と、
取っ付きにくいが約束は守るゲルマン系の違いのようなものでしょうか。

└──────────
┌──────────「noriさん」

仕事(商売)の実話を読んでいるというより、マフィア小説を読んでいる感覚
です。(笑)スリリングですねぇ、大陸仕事…。

早く続きが読みたいです。ワクワクして楽しみにしています!

└──────────
 
┌──────────「サムライ駐在員さんから」

マフィアですか、、なるほど私もそういう人相ですね。

大陸では、人相の悪いほうが、業務上何かと都合のよいこともあります。ハッ
タリやら権謀術数やらをカマスときなど、足元を見られなくて便利ですよ。

なお、この話は完全にノンフィクションです。
CLEAR AND PRESENT DANGER(今ここにある危機)です。

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