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中国ビジネス・急がば回れ! ―――― by HAJIME さん

>☆ 広東省開発区が人手不足?! ―――――――――― 2004/10/03
ニイハオ!!

日本はもうすっかり秋でしょうねえ。シンセンはまだまだベタベタです。それ
でも9月に入って以来、朝方はさすがに涼しくなり、エアコンをつけなくても
よくなりましたが。近所の果物屋さんに栗やミカンが並び始めたし。

栗っていえば工場時代、みんなが生の栗を食うのには困ったなあ。くれるから
パクッて食べてみたら生。驚いて吐き出すと、「なんで嫌い?これとても甘い
のに」〜〜ウソだよ〜渋いよ〜。

でも、厚街の材料市場に行くと、いつも煮た栗と石で煎った栗も売ってるから
そういう食べ方もあるんだからして。
あ〜、あの屋台売りの煎り栗が食べたいなあ。

先々週(9月第2週)、おなじみ中央電視台新聞頻道を、だらだら不真面目に見
てたら、「広東省珠江金三角で工場ワーカーの人手不足が深刻化!?」という
特集報道が。〜〜なになに?まさか〜?

もう工場にいない、経済特区、いわば外から眺めてる分には、開発区はやっぱ
りあいかわらずどこを歩いてもワラワラワラワラ若い出稼ぎさんたちがみっち
り溢れていて、人間の多い、言い方は悪いが人間の余ってる国だなあ、と今更
ながら実感してしまう光景なのだが…?

そのニュースの特集報道によるとーー

広東省珠江金三角地帯の開発区の工場、特に単純労働型の工場では、最近深刻
なワーカー不足に悩んでいる。その要因として、最近の出稼若者の志向の変化
がある。単純労働に就きたがらない…長くやっていれば結果として手に技術が
つく職種に就きたい、という志向。

番組では一人の出稼ぎのお兄ちゃんを紹介。

農村から出てきた、典型的な出稼ぎ若者の彼は言う。
「今までは、ある工場の梱包現場でいわゆるパッキング、梱包作業をやってい
たんです。でも、あれは何年やっても技術が身につかない。ずっと同じ単純作
業。だから今度はちゃんと技術が身につく職種を探しているんです」

80年代から既に20年あまり続いてきた広東省開発区と外地農村出稼ぎ若者
の関係に変化が起こっている。

80年代の出稼ぎ若者は兄弟も多く、故郷にいても生活の道が無い、切迫感を
背負って出稼ぎに出てきた背景があり、ただ職にありついて収入が得られれば
それで大いに満足だった。
しかし現在の出稼ぎ若者は(番組ではおなじみの"民工""農民工"と言っていま
したが)いわゆる一人っ子政策実施後の生まれ。かつてのような切迫した背景
を持たない。

だから、何年やってもずっと進歩も変化も、もちろん昇給も待遇のUPもない
単純労働にわざわざ就きたがらない。なるほどもっともである。当然ありえる
現象である。

私が彼ら出稼ぎ若者と同年代だった頃、日本で起こった若者「3K」嫌い現象
とは似ているようだが、単なる贅沢、我儘志向とはやっぱり違うみたいだ。
だって、技術を身につけたい、というのはちゃんと考えてるしね。逃げ志向で
なくて攻め志向だよね。前向きだ。

では、この開発区に忍び寄る(か、飛び込んできたのか?)労働者売手市場潮流
によって、どのような変化が起こるのか?

―― ニュースを見てびっくりした翌日、

会社のお昼休みランチの下敷にしようと手にした古新聞(深センローカル新聞)
に、おや?まったく同じテーマで特集してるではないですか。早速手に取って
読んでみる。ーーあらら、8月5日の新聞だよ。一ヶ月半前だよ。

そういやあ、そのぐらいの時期に、日経新聞にも出てたな広東省ワーカー不足
のニュース。すんません、古新聞からとったネタで古いニュースを伝えるヘボ
なメルマガっす。

その、もうちょっとでランチョンマットになりそうだった古新聞によりますと
・・・
2月末の調査では、東莞市で23万人のワーカーが不足、その内訳は電子関係
5万人、玩具関係4.5万人、靴関係(!!)3.5万人、家具関係2.5万人
など。って、これそのまんま東莞開発区の工場の多い順だよう。

つまり全面的に不足してんですね。はあ、なんかピンとこないなあ。

だって私の知ってる開発区って、工場の門の前にバン!!と「募集」看板一個
立てるだけでワラワラとすごい数の若者が集まってきて行列になる、っていう
ーー募集の看板なんかなくても、いつでも数人〜数十人がなんとなくウロウロ
してるっていう。

―― ある工場の人事課の担当者は言う。

「従来は、工場が人が要る、と言えば労働局も学校も大喜びで飛びついてきた
ものだが、現在は彼らがいろいろ条件を突きつけてくるようになりました。
給料は880元以上、そうでなかったら話もできないね。それに、労災保険は
つくのか?医療保険はつくのか?と・・・」

ということはこの辺の工場は、普通は労災保険や医療保険が無いということだ
な。ーーうすうすそうではないかと思っていたが…。まあ私も、靴工場時代は
どうもこれがなかったみたいだから、なにも中国に限ったことでは無いがね。

で、仕方ないから求人条件を緩くする。

今までは、女子ワーカーの募集条件といえば定型の「18歳〜25歳の間に限
る」だった。その上「中学か高校以上学歴要」、しかし高校出だったらすでに
19歳だ。では実質最長4年しか働けない。この辺の開発区は圧倒的に精密な
電子部品なんかの組み立てラインの工場がほとんどを占める、こういう仕事に
中国の若いお嬢さんの、やたらいい視力と辛抱強さと体力がうってつけ。
ゆえに、年取ったらどんどん取り替える。ーー視力も落ちるしね。

お嬢さん方も、お金が貯まってちょうどお嫁に行く年頃になって自然に辞めて
いくので、今まではこれが通った。

しかし現在は、こんな条件では誰も寄り付かないので「18歳〜30歳」に改
める。「女子のみ」だったのを「男女不問」にぼやかす。中央電視台新聞頻道
のニュースでも、確かそんなこと言ってたな。

もう、全然条件を区切らない、「男女不問」「年齢不問」「学歴不問」不問を
いっぱい並べて、でほんとに不問なのかと思って面接に行くと、実はいろんな
条件が出てくる、という現象が普遍的だと。つまり、とにかくワーカーさんが
ひっかかるようにと必死なんだな。

「そうだ!!ベトナムに行ってワーカーさんをひっぱってこよう!!」東莞の
某人材市場(人材紹介所か?)の責任者がつぶやく…こんな考えさえ浮かぶほど
ワーカー供給が切迫している。

今年の5月、東莞某鎮の某工場がワーカー募集をこの人材市場に依頼し、人材
市場が、湖南のある学校と話をつけて200人の若者を送り込んでくれること
なった。
ところが、3日後に校長が詫びて言うことにゃ、その電話のあとすぐに、同じ
鎮の別の工場が、どこからかこのニュースを嗅ぎつけ人を寄越してその200
人をひっさらって工場に連れて行ってしまいましたとな。うおお、なんかバブ
ルの頃の日本の大学生みたいだぞ。
きっとあちこちで、内地の学校の校長が工場に接待攻めにあってるぞ。

かつては、人材市場が足しげく工場を廻って「人は要りませんか〜」とやって
いたのに、今では工場がひっきりなしに人材市場に電話してきては「人はいな
いか?人は?」になってるそうな。

東莞の某工場では、従業員が人をひっぱってきたら一人当たり30元の報奨金
が出るそうな。100元出す工場もあるそうな。
100元?
安いワーカーさんの月給が400元ぐらいなのに100元?大金だ!!

「でもウチは人手不足なんてことないね。ワーカーの定着率も非常に高いし。
心配ないですよ」と余裕をぶっかましている工場もしかし、ある。なぜ?
ーーちゃんと理由がある。

そういうところは、ワーカーさんの待遇や福利厚生を特別厚くしてるのだそう
だ。…毎週映画を上映、毎月お誕生パーティ、祝祭日にはイベント、バスケッ
トボール場、バトミントン場、卓球場、ビリヤード場、読書室などの娯楽設備
も充実…うおお、なんて人権的、人道的!!あの靴工場のはひとつもなかった
ぞ!!(ウソ....バスケットコートとビリヤード台はあったな)っていうか、
毎日12時まで残業して休み無いから、こんなんあっても使って遊ぶ機会自体
が無いんだよね、あそこの場合。

さらに続けて…この工場のベテランミシン工さんの、食費、宿舎費などを天引
きしたあとの手取りの給料は、ハイシーズンで1千元、オフシーズンで7百元
普通のライン工さんでハイ8百元、オフ6百元である。…つまり給料が高い、
オフの時でもやっぱり高いということだ。

あ、ハイっていうのはオーダーが多くて残業代がいっぱいつくシーズン、オフ
はその反対です、ちなみに。

全然関係ないですが、公明唯一の4ツ星ホテル宝明城カラオケでおねえちゃん
を持ち帰ると、一晩相場8百元〜1千元です。
HAJIMEさんがパーマをかけると一回480元です。ワーカーさんの一ヶ月分の
給料を1時間ぐらいで使ってしまうのは、開発区でも実にわけないんです。

足マッサージ1時間45元。でもマッサージさんは絶対2時間揉めとしつこい
ので、たいてい2時間揉まれてしまい、90元がふっとびます。5回行ったら
ワーカーさんの給料はなくなります。もちろんワーカーさんはそんなとこ行き
ませんが。
上島珈琲で定食食って、ブルーマウンテンを2杯お代わりすればもう120元
ほど簡単にぶっとびます。

ワーカーさんはとっても偉いです。大切に大切にお金を使って、大切に大切に
貯金してるにちがいありません。

―― 話それました。

新聞によりますと、ワーカーさんに逃げられないように、工場が頭をひねって
いろんな方法でワーカーさんの機嫌をとるようになっているそうです。某工場
はワーカーさんの「不満調査」を行い、その結果に基づいて毎日の食事コスト
を4.5元から6元にUPした....つまり食い物を豪華にし、さらに基本給を
UPし、休日や娯楽イベントを増やし、更に宿舎の一部にテレビをつけたそう
です。

東莞の「太陽森茂」という工場は、2002年1月から1週間5日労働制に踏
み切りました。ここまでやっている工場は、まだずいぶん珍しいそうですが、
「以前は1日欠勤すると3日分の給料を引かれたが、今は有給休暇をとれるよ
うになり、さらに、法定休日通りに休めるようになった」って、ちょっと聞く
とよい話だが、1日休むと3日分引いてた?人権は?

日中合資の平兼電子では、ワーカーさんを採用した後、「本人の意向に基づい
て配置する」つまり本人の希望する仕事をさせるわけですね。

ある電子工場は、ワーカーさんひきつけのために基本給をUPし、今年の4月
から休暇中も給料が出るようになった....医療費清算制度を開始した..今まで
はワーカーさんは医者にかかっても100%自分負担だったのが、就業期間1
年未満のワーカーさんは20%まで、1年以上のワーカーさんは1年毎に20
%ずつUPで医療費が清算できるようになった…そうじゃないかとは思ってい
ましたが、開発区のワーカーさんは医療費100%自前なんですね。

いっときますが一応中国の法律は、タテマエではあるんですよ、医療保険制度
も、社会保険制度も。でもどうもこの記事によると、開発区の普通の工場では
まったくやってないようですね。
そうだろうなあ。彼ら病気になると工場の近所の小さいあやしい医療所に行っ
てたなあ。安いんだろうなあ。ーー私が何瓶点滴してもタダだったのに..工場
の医務室、ワーカーさんは実費を取られてたよな。

ーー私は、払っても平気な給料もらってるのに。そらあ私は、一応お客さんだ
からとはいえ、この国の不思議な人種差別無意識って。

そういうわけで、ワーカーさんの意識変革が廻りまわって待遇の底上げ、人権
の確立という喜ばしい形で降り注いできたわけです。政府が政索や法律でなん
とかしてくれたのではなく、需要と供給のバランスで見えないパワーでステー
ジ一個あがったんですからして、まさに資本主義原則に則ってるっていうか、
結局政府のやることは現実現状にいつも遅れる、世の中の動きのほうが政府よ
りいつも早いものなんですなあ。

―― 思い出すのは、靴工場時代。

もと紅衛兵のおばちゃん総経理と、その甥っこの副総経理が、遅れている緊急
オーダーのアンパイについて会議してて、「徹夜でもなんでもして間に合わせ
るんじゃ〜!!ワーカーを容赦なく働かせて乗り切れ!!あいつらを人間だと
思ったらいかん、機械、あれは機械といっしょなんだ」
と、ほんとに断言しているのを目の当たりにしたあの夜。怖かったなあ。

同じ中国人同士、しかも同じ湖南人同士なんだよ。ワーカーさんも総経理も。
資本家と労働者の関係って、こんなんなのか毛澤東さん!?
とムンクの叫びになったなあ。どこが共産主義国家だこれの。

で、人手不足のおかげでワーカーさんについに光りが射してきたのね。
よかったねえ。ーーと、喜んでばかりもおられません。

中央電視台新聞頻道のニュースでも、最後に力説してました。

ワーカーさんの待遇がUPする、イコール、コストがUPするわけで。コスト
UPが許されない業界や工場は、ワーカー不足でオーダー受けても作れない。
オーダーあるのに受けられない。で、そういうオーダーが、他の地域、例えば
上海のあたりやもっと北のほう、もしくは他の発展途上国に流れていってしま
う。というのがひとつ。

もうひとつは工場が珠江金三角の外、人件費の安い地域に移っていってしまう
ーーつまり、工場の流出現象が起こっていると。

新聞のほうでは、広東省の比較的発展の遅れた地域に引っ越した工場の例が挙
げられているが、中央電視台新聞頻道のニュースのほうでは、例えば四川省や
雲南省、広西省など、内陸の貧しい省に開発区が移転していくだろう。

今までは内陸に開発区をといわれても、輸出のために港のある沿海部まで輸送
してくる輸送コストの問題で合わない、で、見送られていたが、このまま珠江
金三角あたりの人件費コストが上がり続ければ、内陸からの輸送コストをプラ
スしても、内陸の安い人件費とマッチすれば広東省より安くなる状況が出来て
くるだろう、と学者先生がおっしゃっていました。

なにか、数年後はこの開発区がどのように様変わりしているのか、楽しみでも
あり、心配でもあります。

で、この新聞を持って、スーパーで高級月餅をバーンとはりこんで、靴工場に
ごんちゃんを訪ねてバス乗ってでかけていったんであります。ゴンちゃんにこ
の人手不足現象と待遇改善潮流の裏を取ろうと目論んで。しかし、ごんちゃん
いませんでした。

日曜日なのにバリ働いてて、東莞の下請け工場に打ち合わせに行って留守。
せっかく高いほうの月餅買ってきたのに…。今日だって、ちゃんと電話でアポ
取ってきたのに、そのアポの時間に不在。ーー私のいた頃と全然変わっていま
せん。人と約束出来ない生活。いつも全力で走ってる生活。

Y氏が、半年前に比べて半分ぐらいの体積にやつれて見る影もありません。

Y氏のサンプルルームスタッフマネジャーの朱君に「この新聞の報道はホント
?」と突っ込んでみました。
「もう何ヶ月も休んでいない、日曜日も毎週12時まで残業なんだ。国慶節も
2日しか休めないんだあ」と嘆く朱クンが力なく答えました。
「確かにこういう潮流はあるんだよ。みんなそう言っている」

そうか潮流はあるのか。でも、どうやらこの工場の前で潮の流れがよどんでい
るらしい。ここだけは去年の中秋節の頃と全然変わらず、激務非人権状態のま
まであった。その一番の証拠が、私とY氏のおもしろいほどの対比。

一瞬誰だかわからないほど痩せて小さくなってしまったY氏と、この日、会う
やつ会うやつ全員に「HAJIMEさんすっごい太ったねえ〜」と異口同音に言われ
た私。
…太ったんじゃあない!!ここにいたときがやつれ果てておったんじゃ!!!
今が普通なんじゃ!!
毎日12時まで働き、つい先日連続徹夜したと語るY氏の髪は半分以上白髪。
おもわず目頭が熱くなる。

ごんちゃんの彼女は、ここの激務生活に耐えられず、遂にごんちゃんを捨てて
辞めてしまったそうな。ーーいまごんちゃんはだからちょっとヤケクソです。
しかしごんちゃんは、仕送りで妹を大学に通わせているので辞められません。
明るい、可愛いごんちゃんにも、こんな涙ぐましい背景があります。

こんな忙しいごんちゃんに会える日はくるのだろうか?
ーーそして、ごんちゃんのところまでこの潮流が届く日はくるのでしょうか。

                        = この稿おわり =
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