中国ビジネス・急がば回れ! ―――― by 張偉京先生
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☆ 中日コミュニケーションの本当と嘘 ――――――― 2002/10/09
せっかくの国慶節だが、どこも混んでいるので、ずっと外出しなかった。風邪
で1日休んだら、いろんなことが頭に浮かんできた――――。
去年から増えている日本の皆さんとの付き合い、中国ビジネスのトラブルの話
などもよく話題になっている。
あまり尊敬できない人や企業もあるが、まともに頑張っている人や尊敬できる
人もいらっしゃるので、彼らのためにも、僕なりの見方を述べたいと思った。
ーーー少しでも今までのようなトラブルが少なくなればと思う。
◆―― はじめに
1986年、初めて国を出て日本に行ったとき、がっかりしたことがあった。
街中の女性が、想像していた綺麗な着物を着ている女性じゃなかったからだ。
メディアも情報も、だいたい偏っている。これはしかたないかもしれない。
例えだが、1日中に世の中で1億件のことが起っているとして、メディアは限
られたスペースと時間とチャンネルで、そのなかの1万件しか伝えられないか
もしれない。1億から1万をどう選ぶのかはメディアの性格や価値観による。
ヘッドラインは1つしかない。ーーーどれをトップに扱うかもまた偏った話で
しかない。
日本の女性が着物を着ている姿は、お正月や成人式のような極稀なケースでし
か見られないにしても、日本的だから新聞や雑誌やテレビなどにたくさん出て
くる。これはもう偏ったメッセージを作っている。
我々の脳はさらにそれにフィルターをかけた。我々の好みや経験や先入観で。
メディアは、着物姿以外の日本女性も写しているが、それを我々の目は無視し
てしまう。偏ったメディアと偏った我々の目。世の中は、我々の頭の中にいつ
も歪んで映っている。
ーーーだから嘘だらけの日本企業中国進出物語があった。
◆――「騙された」のは本当?
日本のメディアや日本企業中国駐在員や、たまに中国とまったく関係ない日本
人でも、日本企業の中国進出の失敗に対して、よく「中国人に騙された!」と
片付ける。ーーーこのことをよく考えると、同じ「中国人に騙された」ことで
も以下のいくつかのケースがある。
―― ケース1:本当に中国人に騙された
これはもちろんある。13億人もいる中国人だから、いろんな人がいるはず。
犯罪者もいれば信頼できない人もいる。人を騙すのが職業という中国人さえい
ると思う。これは世の中どこでも一緒。だから雪印乳業や日本ハムのようなこ
とも起る。あと、世の中で最も威張っているあの、米国のワールドコムとか。
このケースは、釈明する余地はない。
騙されないためには、結局相手をきちんと見分ける目を持つ必要がある。ちゃ
んと信頼できる人をみつけて信頼関係を築くのは重要。ーーーこれはビジネス
世界の基本で、中国だけのルールではないと思うけど。
しかし、悪い中国人に騙されたのもいれば、信頼できる中国人と出会ったとき
も、ちゃんと判断できる目を持たずに、または行動力を持たずに、チャンスを
逃してしまったり、信頼できるパートナーとの関係を悪化させたりする、逆の
ケースもある。結局、どうなことをするにも、まず自分のほうがしっかりしな
いと無理。
―― ケース2:知らないから「騙された」と思った
いくら優秀な日本企業や日本企業駐在員でも、優秀なのは中国に進出する迄。
中国は違う国だから、日本と同じように期待するのはおかしい。もともと日本
と全く同じなら、もう進出する価値もなかったといえる。
中国も知らずに、まともな中国語も喋らずに中国に来てしまった。日本の書店
に孫子兵法がたくさん置いてあるが、飾り物だろうか? 相手を知らずにビジ
ネスをするのは無謀な話。たまたま成功したら単に運がよかっただけ。それが
経験になったら、それ以上恐ろしいことはない。
違うのは当たり前だから、それを前提に考えて行動する。違いをよく調べて明
確に把握する。相手と十分コミュニケーションを取る必要があるが、殆んどの
人は足りない。
自分の常識で動いて失敗したら「騙された」というのは的はずれだ。
相手も単に相手の常識で動いているだけで、騙そうとするつもりはまったくな
い。こういう常識は、だいたいそれぞれ一理があり、完全にどちらかのルール
で通用するのは難しい。
たまたまいまはたくさんの日本企業が中国に来ているから、中国人に騙された
話が多いけど、もし、中国企業が大量に日本に進出しているなら、日本人に騙
された話も毎日中国のメディアで賑わうだろう。ーーー日本を知っている中国
人も少ないからね。日本の常識を知らないから、中国の常識で動いたら当然違
うよっと....騙された気がするだろう。
こういうケースは、十分な準備や勉強が足りないから起る。本当は十分な準備
や勉強は間に合わなくても、相手を知ろうという心の構えがあればトラブルを
減らすことができるはず。
―― ケース3:欲があるから騙される
簡単にいうと、2人は騙しあって、1人は負けただけの話。こういう場合は、
負けた人に同情するか? 私の目には2人とも同じ次元の人で、そもそも勝っ
た人にうまいなぁと誉めるべきかもしれない。
正直に認める人や企業は少ないけれど、中国のために、中国人のために、中国
進出してきたのは普通あり得ないと思う。----もちろん、少ないけど存在する
のは信じる----欲があるから中国に来ているのだ。
まずはお金のためだ。コストを下げるためならお金のためで、中国市場を狙っ
てきたのもお金のため。あとは..女のため..というのもいるかもしれない‥。
欲があるから問題が起る。これは永遠の真理。いろんなトラブルの裏を調べて
みれば、答えは簡単に見えてくる。正直に話せる人は少ないけどね。
しかし、みんな大人だから常識で分かるよ。話さなくても。
わたしも何回か「騙されたことがあるか?」と聞かれたことがある。
ない。なんで?
ーーー欲がないからだ。物の次元で求めていないから。
―― ケース4:責任転嫁
これは当事者はだれも認めたくないと思うけど、駐在員たちは帰国すると自分
の立場は問題になるからだ。同期の人も気になるし昇進などもある。
中国でうまくいかなかったら、自分の責任にするのは当然できない。自分の責
任でも、中国人に騙されたとしたら話はしやすくなる。
ーーーこれは人間の弱いところで仕方ない。
―― ケース5:みんなで言ったら恐くない?
これはもっともつまらないケースだ。本当はどうか別にして、みんなそう言う
から自分も口を揃える。
―― まとめ
まとめにはならない、ちょっと逸れた話だけど――――。
いつ読んだか忘れたけど、日本の有名なS社が出したビジネス情報誌で、日本
企業中国進出の苦労話の特集があった。ある日本人の、大連での奮闘記(?)が
あって、
1回目は中国人に騙されて失敗した。
2回目は中国人を仲間にしないといけないと分かっていろんな方法で中国人に
接近した。しかし2回目も仲間にしていた中国人に騙されてまた失敗した。
3回目はやっと成功し、中国人に勝ったというような「すばらしいお話」。
日本の皆さんは、こういう記事をどう受け止めているか知りませんが、私には
多少ショックだった。商売人と商売人の勝ち負けの話に過ぎなかったのに‥。
2回目は、単に中国商売人を利用しようと思って、結果的にもっと騙しあいの
うまい中国商売人に負けただけ。「3度目の正直」で勝ったように見えるこの
人は、いずれ失敗すると私は思うよ。ーーー心に問題があるからだ。
こういうところで勝った負けたと思ったら子供の喧嘩みたい。
それで雑誌の編集者の品格まで疑ってしかたない。結局あの雑誌を読んだのは
あれが最初で最後だった。ほんとうのビジネスならもうすこし品があるはず。
我々が尊敬する日本の経営者も中国の経営者も、まず人格が素晴らしい。いく
らうまく設計したシステムでも、人の心が歪んでくると世界は狂ってしまう。
ワールドコムとか雪印乳業とか、どっちが勝っても世界の不幸に過ぎない。
ビジネスには心がある。
幸いこれは「日経ビジネス」の記事ではなかった。日本にいた頃、日経も日経
ビジネスもよく読んでいたから、よく読む雑誌は品格がないと読む自分も悔し
くなる。
話は戻るが「中国人に騙された」というのは、少なくとも以上の5つのケース
があるけど、それ以外のケースも当然あると思う。
◆――ソフトも中国へ?
いままでは、まず日本の製造業が中国に進出。最近ソフト関係の進出もホット
になってきた。ホットなできごとをクールに見てみるといろんな問題がある。
7月に大連で、中国のソフト企業と日本のソフト企業との懇談会があった。わ
ざと時間を作って大連まで行ったのに、結果はかなり失望した。形があっても
中身のある交流ではなかったから。
日本からの参加者は、日本のソフト業界を代表する企業の会長や社長が多く、
すごい豪華なメンバーになっていたが、本気で中国企業と付き合おうという気
持は感じなかった。ほとんど中年以上や年配の人で、中国側の若いリーダー達
と比べてみると違う世代。
それだけでも中国と日本のソフト業界の協力の難しさを感じた。
大連の会議で、日本からの参加者の皆さんは、規模の差が大きいのでまだまだ
小さい中国企業を相手にしていないように見えたが、このままにいくと5年間
経ったら困るのは日本企業。ソフトは製造業と違うから。
世の中、中国が世界の工場と言っているけど、日本の製造業の強さは世界一。
ソフトに関しては、アニメとゲームは別にして日本は世界一ではない。
今までの中日ソフト業界の付き合いは、だいたい日本で設計したソフトを中国
でプログラミングする形をとる。いろんな問題が出ている。
責任?ーーー両方にある。
長年日本大手企業のシステムコンサルタントを務める友人は、日本から中国に
発注するソフト開発プロジェクトのトラブルの責任はほとんど日本側にあると
断言。その理由を聞いた。なるほどと思う。
基本的に日本ソフト企業の中国進出は、単にコストを下げるためでも、または
中国マーケットを狙うためでも、製造業以上の壁が待っていると思う。日本と
違って、中国のソフト業界は最も優秀な中国人が集まる業界のひとつであるこ
とは、忘れてはならない。
中国と日本、国境を超えたビジネスには嘘が多過ぎる。普通の人はあまり知ら
ないから嘘をつきやすいのかもしれない。
◆――終わりに
2002年9月21日の朝、上海虹橋空港の待合室で成田行きの便を待ってい
た。今までと違って、中国人ツアー団体があった。浙江省の人たち。見た感じ
では農村の人たちだと思う。
前に一回、関空から上海行きの飛行機に乗ったら、周りは、初めて海外旅行に
出る農民のような人たちで囲まれて、みんな興奮して関西弁で大声で話してい
た。
中国と日本との付き合いは、主席や首相の付き合いだけの時代を遥かに超えて
我々普通の国民の付き合いの時代に入ったと実感できる。いまのシーズンだと
着物を見るチャンスはないなぁ、、、浙江省の農民達は16年前の私のように
がっかりするのだろうか?
メディアも情報も、すべてフィルターを通っていて、本来の姿と違う。自分の
国でもそうだが、国境を超えたらなおさらだと思う。同じことはいろんな角度
から見られるので、ぜひとも先入観を持たずにいろんな角度から、できるだけ
全体像を見てほしい。ーーー感情的にではなく冷静に。
そして、なによりも大事なのは、「善」の心を持つこと。
中国人であろうと日本人であろうと、習慣や表現は違っても、愛・優しさ・思
い遣りなど、基本的に大事なところは皆一緒。これは、コミュニケーションの
基本かもしれない。
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上海新聞136号「中日コミュニケーションの本当とうそ」について、読者の
皆様からいろんなご意見やコメントをいただきました。どうもありがとうござ
います。
ちょっと誤解もありましたので少し説明を。
「5年後中国のソフト企業が日本のソフト企業を超えることはありえない。
日本企業が困ることは考えられない」というご意見がありましたが、ちょっと
私の言いたかったことと違います。
「5年後困るのは日本企業(ソフトの話)」と言ったのは、日本の製造業の中国
進出に次いでのソフト企業進出の話でした。すでに、製造業は中国に進出して
いろんな問題が出て困っているから、ソフト企業はもっと大変だと言いたかっ
た。
1)コスト削減
2)中国マーケット獲得
という2つの目的で日本企業の中国進出があって、そういうことを前提にして
いる話でした。中国ソフト企業は5年後に日本企業を超えることは当然ありえ
ないし、20年後でもまだ無理だと思いますよ。
ーーー個人的には、中国が日本に追い付くのは50年以上かかると思います。
= この稿おわり =
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▽
張偉京@上海浮山媒体有限公司 ( weijing@fushan.com )
★ 新発売の中国語学習ソフトデモ版のダウンロード:
http://www.fushan.com/download/chugokugo/index.html
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┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想
┗━┛ ┌──────────「大脇@名古屋さん」――――――― 2002/10/16
正直な感想です。ただ感想だけです、ハイ。なぜ、このような記事が、日本の
メディアに出ないのか不思議です。日経はそんな記事(中国にだまされた)を
載せていないかも知れない。が、このような記事も各社載せないのでしょうね
きっと。
成功したことを高らかに宣伝する人がいないのは当たり前じゃないですか?
だって成功を真似されたら、自分が儲からなくなってしまうじゃないですか。
で、騙された、と自分を取り繕わず、商売に負けた、と素直に受け止められる
日本社会になれば、構造改革も簡単に進むでしょうね。(関係ないか?)
└──────────
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┃┃ 2009/04/22/リライト版 読後アンケート結果
┗━┛ ◇ なるほどこのとおり! -------------------------------- 43人 (67%)
◇ そうかな?どうかな? -------------------------------- 12人 (19%)
◇ この説には頷けない! -------------------------------- 9人 (14%)
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┃┃ 2009/04/22/リライト版 お寄せいただきましたご意見や感想
┗━┛ ┌──────────「onestoさん」
ーーー著者の意見には全く反対である。
私は一人のイタリア人男性と友人である。世間ではイタリア人は「陽気」な民
族だと云っているが、彼はさして陽気でもない。
イタリア人は陽気な人のパーセンテージが日本人より高いので「陽気な民族」
といっているのではないでしょうか。
日本にも騙す人はいます。しかし、騙す人のパーセンテージが、貴国のほうが
日本より高いのではないでしょうか。だから中国はその様な印象を持たれる。
今、上海でモーターショーが開催されているが、外国車をコピーするのは絶対
やめて下さい。
└──────────
▼
┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
ーーー張偉京さんは仕事がお忙しいので、ピンチヒッターさせて頂きます。
日本は「信の国」中国は「詐の国」とは巷間いわれている言葉ですが、ただ、
今回のレポートで張偉京さんが分析された「知らないから騙されたと思った」
「欲があるから騙される」「責任転嫁」「みんなで言ったら恐くない」などの
事例は、現地経験の長い我々日本人から見ていても「そうなるぞそうなるぞ」
そしてそうなって、という事例をよく見聞いたします。
ーーー概して日本人は脇が甘いです。またはその逆でガチガチに警戒する人。
中国に限らず、常識・習慣・法律が全く異なる異国で成功するのは、簡単では
ございません。ーーーもうひとつ、うまくいかない大きな原因となっているの
が、
「(極端にいえば)本社で使いものにならない二流・三流社員を送り込む」
それが何より証拠には、任期が明けて本社に戻って、上に上っていくような人
が手掛けた事業は大体成功しています。===そういうことでございますよ。
└──────────
┌──────────「尊野ジョーイさん」
私の大好きなモーニング娘。には「留学生」という2人の支那娘のメンバーが
います。2人とも、モーニング娘。が大好きで、もちろん、日本も大好きです
よ。
礼儀正しいし、頭も良いし、すごく良い印象を持っています。
こういう支那人ばかりだったら、日中の友好も進むだろうにねぇ(^_^)
└──────────
▼
┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
そんな娘さんは、中国本土には山ほどおりますよ〜〜〜♪
ただ、現在は、そういう娘さんは、あまり日本へ行きたいとは考えません。
だって、中国に居たって同じぐらいの稼ぎは難しくない=なんではるばる日本
まで出かけていって稼ぐ必要があるの?ーーー中国の現在の実情をご存知ない
日本の方々は「まだまだ日本のほうが!」
けれど、何を根拠に「まだまだ日本のほうが!」なんですか??
ーーーいい加減に現実を直視なさったほうがよろしいのではないでしょうか?
最近、アメリカは、日本抜きで中国とG2とか言い出しています。どうして?
ちゃんと、冷徹な現実を踏まえているからではありませんか?
先般、中国の飲み屋での人種別人気順位を、
台湾人>中国人>日本人&欧米人>韓国人
と書かせて頂きましたが、飲み屋の女の子の評価というのは結構的を射ている
もので、虚飾や吹牛=ホラはほとんど見破られているものです――――。
いまの日本=日本人に対する評価なんて、これが正確なところでしょう。アメ
リカは少しも間違えていないのです――――。
ーーーいい加減に、現実を直視したほうがいいのではないでしょうか。
└──────────
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励、ご意見などをお待ちしています。
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