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中国ビジネス・急がば回れ! ―――― by FROMFAST007氏

☆ "中国株式会社"の行方 ―――――――――――― 2002/01/06
<ポイント>

(1)共産党が市場経済化の旗振りをするという、一見矛盾した体制が20年
以上続いており、一応の秩序を保っている。この秩序のあり方を示す見方とし
て"中国株式会社"という考え方を提示したい。

(2)以前、日本の官民が協力して経済成長を目指す体制を"日本株式会社"と
評されたことがあるが、"中国株式会社"は更にリーダーの選出方法や集団指導
志向等の点で一昔前の日本企業に似ている面がある。
現在の中国における秩序のあり方を示すには、意外に妥当性がある。

(3)今後の課題が、不採算部門のリストラ(国有企業改革)や不良債権処理
であることなども共通している。
中国が、日本を教訓として経済成長の余力があるうちに、負の資産をどこまで
処分できるかが今年の課題。

(4)"中国株式会社"が現在の秩序を説明するならば、それで説明できない面
こそが長期的な不安材料になる。

<本文>

(1)"中国株式会社"という視点

昨年は世界全体があらゆる面で落ち込み気味だった一方、中国はオリンピック
開催やWTO加盟に代表される上昇気流に乗り、海外からもこれまでにない注
目を集めるようになりました。
ここ十年程度の経験では、こうした中国ブームの後には必ず過度の期待を裏切
るような出来事があり、世界の目は突如失望に変わってきました。

しかし、中国自身は実はそれほど極端な躍進や挫折を繰り返しているわけでは
なく、少しずつその巨体を前進させるように粛々と自らを変化させています。
このマガジンでは、そのゆっくりながら着実に進む変化を引き続き追っていき
たいと思います。

現在の中国を海外からみた場合、その客観的な評価の妨げになる最大の要素は
いうまでもなく、共産党が市場経済化の旗振り役になっているという点でしょ
う。"共産党"と"市場経済"をそれぞれ別個に考えれば、これは紛れもなく大き
な矛盾ですが、一方でその体制が20年以上続いてきたことも事実であり、そ
こには一応の秩序があると考えるべきでしょう。

ところが、その秩序のあり方が、中国の外にいるといまひとつハッキリしませ
ん。なぜなら、共産党という看板を掲げて市場経済化を進め、かつ一定の秩序
を保っている国が、少なくとも主要国にはないからです。

そこで、中国にいるからこそ見えてくる今の中国の秩序のあり方を簡単に説明
できるようなフレーズはないものかと考えてきたのですが、それが意外に身近
なところにありました。
中国の今の秩序のあり方そして、その秩序自体の大きな矛盾は、日本の大企業
をなぞらえた"中国株式会社"という見方でかなりの程度説明できるのではない
かと思うのです。

(2)"中国株式会社"の特徴

これはいうまでもなく一昔前にいわれた"日本株式会社"という呼び名を参考に
したものです。
"日本株式会社"とは主に官民の協調的関係により経済成長を最重要の国策とし
て推し進めていく様を説明した言い方ですが、様々な規制で国内産業を保護し
つつ経済成長を最優先する姿勢は現在の中国に酷似しています。

"中国株式会社"には更に特徴があります。
例えば、外国の投資を貪欲に取り入れて活用する姿は、主権国家というよりも
一般企業の財務活動に似ているところがあります。

経済以外の面でも説明できる部分があります。例えばリーダーの選出。

中国のリーダーは選挙で選ばれるわけではなく、各組織で上司の評価や周囲の
風評を通じて徐々に昇進していくわけですが、これなどは大企業の人事そのも
のです。中国では、例えば小都市の市長が地方裁判長に抜擢され、その後中央
官庁の幹部に就任というように、優秀な人は(三権分立とは関わりなく)様々
な職種を経験して出世していきます。

これも中国全体を一マンモス企業と考えれば一応の理解ができます。
更に、毛沢東や(とう)小平のようなカリスマ指導者がいないなか、集団指導
体制を進める共産党では、相当のサラリーマン社会化が進んでいるという推測
も成り立ちそうです。

以前、日本は資本主義ではなく、会社主義の国だという冗談を聞きましたが、
中国政府も、目指しているところは市場経済の恩恵を受けながらも政府の管理
色が強い"会社主義"の方向にあるのでしょう。
このように、今の中国の秩序のあり方と中国政府が目指そうとしている体制を
説明する場合、"中国株式会社"には意外な妥当性があるように思います。

(3)"中国株式会社"の課題

それでは、"中国株式会社"にとっての課題とは何でしょうか。
経済成長最優先の"株式会社"ですから、その課題も経済成長との関連で説明さ
れることになるでしょう。
WTO加盟により、国際ルールを受け入れることを覚悟し、それに対抗する競
争力ある産業が育ちつつあるなか、最大の課題は過去の負の資産の処分、即ち
国有企業改革の仕上げと不良債権の処理になります。

この問題は5年前から提起されてきており、それなりに処理も進んでいるよう
ですが、豪華マンションが急ピッチで建築され奢侈品が飛ぶように売れている
様子を見ると、経済成長の果実が正しい方向(負の資産の処理)にどれだけ振
り向けられているのか首をかしげたくなってきます。

おそらく政府はこの問題を十分意識しているが、各"社員"すなわち国民に十分
な危機感がないのでしょう。ただでさえ公私の区別が曖昧な国民性ですから、
企業の利益を不良債権処理に充当するよりも、経営者や株主に還元したくなる
誘惑が相当強く働くはずです。
その誘惑をいかにして断ち切るか。

経済成長の結果、個人が豊かになるのは結構ですが、経済の活力があるうちに
処分すべきものは処分せねば日本の二の舞になるということをどこまで意識し
て実行できるかという点が今年の課題になると思います。

(4)それでも中国は会社ではない

このように、中国を一種のマンモス企業であると考えることによって一見矛盾
しているものが形ある一応の秩序として見えてきます。
しかし、中国は結局のところ国であって会社ではありません。
従って"中国株式会社"では説明できない事柄に注目すれば、今度は中国が抱え
る長期的かつ本質的な矛盾が見えてきます。

例えば台湾問題。
なぜ中国は現在の状態を直視せず中台統一に拘り続けるのか。
また、なぜリーダーはマンモス企業のような形で選出されるのか。
会社員と違って"退職"という選択肢をもたない国民は、それでも経済成長の果
実を得られれば満足し続けるのか等。必要以上の列挙を避けますが、共通点と
しては歴史と自由に関わる部分は、"中国株式会社"では全く説明できず、即ち
現在の秩序のなかでは解決が難しい問題ということになりましょう。

こうした本質的な矛盾は勿論抱えながらも、今年の中国は経済成長の恩恵によ
り"マンモス会社"の秩序を保ちつつ、リーダーの交代や各種制度の改革を粛々
と進めていくでしょう。
そういう意味では、中国にとって今年は、諸外国とは対照的にいい意味で“退
屈な年”になるのだろうと思います。
今年に限っていえば、不安定要因は国内よりむしろ国外、特にアメリカにある
と考えますが、このテーマは次回以降考えてみたいと思います。

                        = この稿おわり =
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