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中国ビジネス・急がば回れ! ―――― by FROMFAST007氏
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☆ 中国の所得格差と社会安定 ――――――――――― 2001/06/06
<ポイント>
(1)中国の所得格差が社会の不安定に繋がっているという見方は、外国から
中国を見る際の定説になりつつある。
(2)しかし、1970年代の文化大革命をそのピークとする悪平等は中国人
の実体験に苦い記憶として刻まれている。従って、少なくとも経済発展の過程
における所得格差の拡大は社会不安とは結びつかない。
(3)所得格差と社会安定に関する内外の見方の違いは、外国間の”ヨコの比
較”を尺度に中国を見る外国人と過去の経験との”タテの比較”を尺度とする
中国人との違いを鮮明に表している。
<本文>
今回は、中国の所得格差が社会の安定に及ぼす影響について考えてみます。
中国が改革・開放路線を進めてから約20年。
データを見るまでもなく、中国の所得格差は拡大しています。
これは市場経済を導入することの必然の結果ですが、所得格差の拡大が社会不
安に繋がるという見方が海外では良く指摘されています。
私も北京に来るまでは同じように考えていましたが、中国人にこのことを聞い
てみると、意外にも所得格差は社会不安には繋がらないだろうという答えがよ
く返ってきます。
ここではその考え方を紹介し、その背景について考えます。
(1)拡大する所得格差と海外の見方
中国で所得格差が拡大しているという事実については、あまり多くを説明する
必要はないでしょう。
そもそも”先に豊かになれるものから豊かになろう”というトウ小平の先富論
に象徴されるように、中国の改革開放路線はある程度の所得格差の拡大を伴っ
てでも経済発展を優先させるという路線に他なりません。
その路線は誰もが知るとおりの経済発展に結びついた一方、予想どおり所得格
差も拡大しました。
特によく指摘されるのが、都市部と農村の格差です。
農村では電気が通っていないような村もあるのに都市部では新興企業の社長が
外国車を乗り回しているといったイメージに象徴されると思います。
国有企業改革に伴う失業率の増加と、社会保障制度の不備もこの問題の一例で
しょう。
こうした状況に対し、中国人は大変な不満を抱いており、今後犯罪の大幅な増
加や暴動の発生に繋がるのではないかという指摘がよく為され、それは今の中
国社会を語るうえでの定説の一つになっているような感さえあります。
(2)中国人から見た悪平等と不平等
この問題について以前数人の中国人に意見を聞いたことがあります。
彼らが異口同音に答えたのは、現在の所得格差に対して不満を抱く中国人はあ
まりいないし、経済発展が続く限り所得格差の不平等が大問題となることは今
後もないだろうというものでした。
その理由の根底にあるのは、改革開放以前の彼ら自身の実体験です。
現在30歳以上の中国人は全て文化大革命を実際に経験していて、悪平等の結果
としての貧困や苦しみをまさに身をもって知っているわけです。
非常に印象に残っている話があります。
ある中国人(現在29歳)が小さかった頃は食料が配給制で、粟などの雑穀お茶
碗一杯分普通の食事だったというのです。
それが今では、小学生のお小遣いでも買えるような値段でこんなものを食べら
れるんだと言って海南島から空輸されてきたパイナップル(1個3元=約40
円)を私に出してくれたのです。
今年の2月の話です。
いくら農民や工場労働者が貧しいといっても3元のパイナップルぐらいは真冬
でも気軽に買うことが出来る世の中になっているわけです。
もちろん13億の人口を抱える国ですから、内陸の洞穴に住んでいるような農
民の生活まで窺い知ることは私には出来ません。
しかし、所得の均等ということを余りにも強調してしまうとどういう事態が起
こるのかということを、彼らは別に経済学などを学ぶことなくとも身をもって
知っているのだという強い印象を私は受けました。
こうした体験をしている世代が中核にいる限り、中国では所得格差はかなりの
程度まで容認されるのではないかと思います。
言い換えれば、所得格差の拡大による相対的な貧困は、経済発展による絶対的
貧困の減少によって帳消しにされているということです。
ところで所得の不平等は、結果の不平等の象徴です。
これは、機会の平等が確保されたうえで容認されるというのが市場経済の原理
ですが、中国はその点どうなのでしょうか。
不平等が何らかの形で体制批判や社会不安に繋がるとすればむしろこの不平等
をどうするかという問題の方が大きいと思います。
この問題は教育、就職、人口移動(戸籍問題)など多くの課題を伴っているの
で今後時間をかけて取り上げていきたいと思います。
また、所得格差が社会不安に繋がらないといっても、当然それは程度の問題で
す。
老齢者、失業者それに農村で極度の貧困が広がれば深刻な問題になる危険はあ
るわけで、長期的には社会保障などの所得分配の制度整備は非常に重要です。
これも以後じっくり取り組んでいきたいと考えています。
(3)”ヨコの比較”と”タテの比較”
最後に、このように海外から見る目と中国自身の実感がなぜ生まれるのかとい
う点について考えてみましょう。
私も含めて外国人が中国を見る場合、無意識のうちに中国と諸外国を比較しま
す。
例えば、現在の中国が非民主的だという場合私たちは他のアジア諸国や欧米と
比較することが多いでしょう。
文化大革命期や中華民国当時の中国と比較して現在の政治体制を語る外国人は
それこそ中国政治の専門家ぐらいのものでしょう。
諸外国と比較すること、すなわち”ヨコの比較”が特に現在の中国の進むべき
方向や課題を考えるえで非常に重要であることは間違いありません。
しかし、中国人自身はこうした”ヨコの比較”よりは自分自身の体験に裏付け
られた”タテの比較”により中国社会を見ています。
その理由は実体験の方がまだ見ぬ外国との比較よりも遥かに実感を伴っている
ということと、そもそも外国に関する情報がまだまだ制限されているという二
つだと思います。
いずれにせよ、中国人自身と外国人が見る目とでは、同じ中国社会を見るうえ
でもそもそも比較すべき対象が違うのだということはしっかり意識していく必
要があると思います。
そして、このマガジンが目指しているのは、このギャップを少しでも埋めてい
こうということに他なりません。
= この稿おわり =
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└→ 感想や激励、ご意見などをお待ちしています。
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