☆ 中国雲助タクシー遭遇記 ―――――――――――― 2004/08/30
by kou9100 さん@男性@中国
ーーーやってしまった・・・。
これまでにも、何度か雲助タクシーに乗ったことはあった。メーターが付いて
いないタクシーにうっかり乗り込み、平常20元(≒300円)のところを30
元ボラれたりしたことはこれまでにも何度かあった。
―― 2004年8月22日、
午後1時20分に飛び立った中国東方航空は、中国時間4時ちょうど(日本時
間でなら5時)に上海浦東空港に到着した。窓の外は、大雨とまではいかない
が、盛んに雨が降っている。
私は、05のC席で通路側。A席の窓側には中国人男性。B席には、札幌在住
でこれから上海で結婚式を挙げるのだという男性。この男性は「日常中国会話
集」をあちこち開いては、中国語で文をまとめている。何を書いているのです
かと聞いたら「結婚式の挨拶」だという。
自分は、肺癌に胃癌だという。癌でも結婚しなければならない事情があるのだ
ろう。知り合ったのは、たった一度の中国旅行でというのだから、人間の出会
いなんてどこにあるかわからない。
私など、5年も中国にいるのに、未だに「結婚してください」と言われたこと
はない。中国女性は日本男性のどこを見ているのだろう。頭は少し薄くなった
が、そんなに見劣りする風貌とも思ってはいないのだが。
ーーーひがみ根性がすぐに出てしまう。
思ったほど税関は混んではいなかった。A席に座った中国人男性は飛行場から
直接、杭州まで行くという。それなのに、私の荷物の受け取りを見届け、上海
駅に向かうバスまで案内してくれた。
空港では、すかさず雲助タクシーが「南通まで800元」と言い寄ってきた。
ここは「不要」で押し切りバスに乗った。
バスに乗るとき、A席の中国人男性が名刺をくれた。席に座ってから名刺を見
ると、名前の上に「博士」の称号がついている。まだ若いのに優秀な青年だっ
たのだ。また、逢えるチャンスはあると思う。
浦東空港から上海駅行きのバスでは、一番前の席に座った。バス車掌の小姐が
「どこまで」と切符を売りに来た。「到上海站多少銭?(上海駅までいくら)」
と聞くと「si/ba」という。
浦東から上海駅まで48元は高いと思いながら、100元札を出すと、釣り銭
が82元返ってきた。なんのことはない12元だったのだ。
何年中国にいても「shi」と「si」の発音を聞き分けることができない。
「シー」と「スー」なら、日本語では絶対に間違うことはないが、中国語では
この「シー」と「スー」がとても難しい。南方の人は完全に訛っているとしか
思えない。
上海駅でバスを降りると、結構な雨が降っている。傘もない。おまけに運転手
は下りてこない。乗客が、めいめい荷物をバスのトランクから引っ張り出して
いる。
私の重いトランクは、とんでもない奥に入っている。仕方がないので、バスの
トランクに身体を入れようとした途端に、頭を思い切り梁にぶつけた。
ーーー泣くに泣けない。
ここでも、雲助タクシーのポン引きがすかさず集まってきた。それも3人。
トランクをひったくるようにして持ってくれる。いつもなら「不要」と大きな
声で言うのだが、雨に濡れながらトランクを運んでくれるのは、正直いってあ
りがたい。一人は、機内に持ち込んだ結構重い荷物を持ちながら傘を差しかけ
てくれる。
「南通まで600元」という。「高いので要らない。普通の路線バスで行く」
と一度は振り払い、流しのタクシーを止めようとするが止まってはくれない。
すでに7時を過ぎている。雲助は「南通行きのバスは6時で終わりだ」という
「うそつけ、最終バスは8時40分だ」と言っても、「6時だ」と言い張る。
ついに根負けした。「300元で行かないか」というと「OK」という。とこ
ろがタクシーには、お客であるべきはずの私のほかに、さっきの3人が乗り込
んできた。気持ちが悪いことこの上なしの状況におかれた。
15分ほど走ると、小路にとめてあったメーター無しのタクシーのところまで
連れてきて「これに乗り換えろ」という。そのタクシーにも運転手1人が乗っ
ているので、男4人に取り囲まれた形となる。「まさか殺しはしないだろう。
最後の最後は警察に助けて貰おう」という腹も出来上がっていた。
私が席に座ると、4人は一度に消えてしまった。ここで、この車を降りたので
は、300元がまる損になってしまう。そんなばかなことは絶対にいやだ。
ーーーもう少し様子を見ようと腹をくくった。
10分ほど過ぎて、このタクシーの運転手が戻ってきた。そして、がなり立て
始めた。ゆっくり話してくれれば中国語もなんとか判るのだが、早口になれば
なるほど聞き取れない。その中で、「中国語の通訳を電話に出せ」ということ
だけは判った。
早速、紫琅学院2年班長の燕に電話をして助けを求めた。燕がタクシーの運転
手と話をしたところによると、「ここまで連れてきた男と俺とはなんの関わり
もない。南通まで、あと250元出したら学校まで連れて行く」という。
「関わりがないなんてとんでもない話だ。さっき4人で話をしながらどこかに
行ったじゃないか」と思いながらも、「本当にあと250元で南通まで連れて
行ってくれるなら、出すと伝えて欲しい」というと、運転手も「250元出し
たら学校まで連れて行く」と約束をした。改めて商談が成立した思いだ。
ーーーこの車が動き出したのが既に7時半。
南通に向かって走っているのは判るのだが、これまで一度も見たことのない道
を走る。運転する人間は本能的に道を覚えているものだ。私も運転をするのは
大好きで、一度走った道は覚えている。だが、一度も走ったことのない道を走
るのはすこぶる不安である。
時々ノッキングを起こす、前照灯が切れたり付いたりする。赤信号も無視。
そうこうしているうちに、アスファルトも敷いていない田舎道に入った。雨上
がりの道は完全にぬかるんでいる。人一人、電灯一本付いていない。
ーーー二人とも無言。こんなところでこのオンボロ車が動かなくなったらどう
しようと、そのことばかりが気に掛かるが仕方がない。
「渡船」まで11キロの文字が見えたときには、やれやれやっとと思う。
南通に渡るための「崇海汽渡」についた。
上海から一番近い揚子江を渡る渡船場だ。
船が動き出してから、日本から持ってきた握り飯を開き、若い運転手に「疲れ
たでしょう、一つ食べませんか。」と、握り飯とカレイの干物とアーモンドの
入ったチョコレートを差し出す。「おいしい、おいしい」と何度も言う。中国
人は梅干しが嫌いなはずなのに、おいしいという。よほど腹が空いていたのだ
ろう。私も一つ食べる。
食べ終わってから、青年ドライバーは盛んに話しかけてくる。オリンピックの
話。サッカーの話しなどであった。3日前の新聞を見ている。日本から教材の
ために持ってきた朝日新聞と北海道新聞のメダル獲得数の記事を見せ「中国が
一位だね、すばらしいね」というと、青年は「中国が一位だ」と、にっこりと
笑っている。
北海道新聞の一面を使った「山口百恵」のDVDの広告を見つけると、「これ
をくれ」という。教材にしようと思っていたが、ここまで連れてきてくれたさ
さやかなお礼として「好的(いいよ)」と答えた。
船をあがって海門市の街に入ったところで、車のライトが完全に付かなくなっ
た。盛んに携帯電話を入れている。暫く走ると3人の修理工が待ちかまえてい
た。車が止まると直ぐに前のトランクを開けて盛んに首を突っ込んで覗いてい
る。しかし、修理はが不可能のようである。
10分ほどトランクを開けていたところ、海門市のメーターをつけたタクシー
がやってきた。青年運転手は自分の車から、私の雨に濡れたトランクを移し替
え終わると、
「自分の車は壊れた、あとはこのタクシーが学校まで連れて行ってくれる。そ
こで250元渡してくれればよい」という。
青年ドライバーと握手して、メーターのついた本物のタクシーに乗り換える。
海門市内ではタクシーのメーターを倒して走っていた。だが、南通市に入った
とたんメーターを上げた。メーターを上げないで走ってはいけないのだろう。
腹の中では「もしかしたら、メーターに出た金額は別に支払わなければならな
いのかも知れない」と思っていた。
南通に入ると、まったく見たこともない道に入っていく。「どこを走っている
の?」と聞くと「開発区の裏道」だという。これを通れば南通は近いのだとい
う。舗装のされていないすごい悪路だ。
やっと見慣れた「軍山」の長江南路の道路に入った。ここまで来ると仮にここ
で外に投げ出されても学校まではたどりつけるという安心感が出てきた。
タクシーは長江南路から工農南路を北上する。外環北路を左折して永興汽車站
前に着く。ここを右折すると紫琅学院だ。
車から降りて、ガードマンに帰ってきた挨拶をする。
日本からの荷物が着いていた。その荷物も積んで宿舎についた。
運転手に300元出し、「お釣りはいらないが、このトランクと荷物の2つを
4階まで運んで欲しい」と頼むと「いいですよ」と気軽に運んでくれた。
時計を見ると11時を少し回っていた。ーーー部屋の中はまるで蒸し風呂だ。
飛行機の中で出会った博士。結婚式に上海に行くという癌の男性。
上海駅で、ずぶ濡れになりながらもトランクを持ってくれた雲助A、傘を差し
掛けてくれて手荷物を持ってくれた雲助B、300元を巻き上げた雲助C。
上海から海門まで、真っ暗な夜道をひた走りに走った青年ドライバー。
「250元ではここまでだ、もっと金を出せ」と、言いもしなかった。
ーーー言う気になればいつでも言えたのに。
海門市から紫琅学院まで連れてきてくれた運転手。この運転手には25キロ入
りのトランクと20キロ入りの荷物を4階まで運んで貰った。
私一人では、二つの荷物を4階まで運びあげるには泣いていただろう。
ーーーみんな、みんなありがとう!
考えようによっては600元(日本円では1万円にならない)でも安過ぎるぐら
いだ。
♪ 虫鳴ける 異国の夜を 継ぎたせり ♪
= この話おわり =
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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