中国で犯罪!見聞記遭遇記
☆ 成都誤認逮捕事件(6) ――――――――――――― 1995/05/26
                         by ブーザンさん

−40
立ち上がってどうするのかな?と様子を見ていると、4人の警官を集めて話し
出した。短い話の後も、刑事部長も含む5人共「対不起!」と言うだけ、、。
私にはなにがなんだか分からない――――。
再度、刑事部長に真相を聞こうとしていたところへ、ドアが開いて体格の良い
50才代と、55才ほどの男性ふたりが入ってきた。まだ、いま起きたばかり
というような顔をしていた。皆は「局長」と呼んでいた。

その人は成都警察署長であった。彼は「いや〜大変な目に遭いましたね〜」と
言っただけだった。そして口から血を流させられた刑事は深深と頭を下げた。

−41
椅子をバラバラにした、一番生意気だった刑事に向って、「あなたがいちばん
言いたい事があるのではないですか?」と言ってやった。彼は何も言わず頭を
垂れてただ黙って立ってるだけなので内心腹が立ち、彼の前の椅子を床に叩き
つけてやろうか、とも考えたがそんな事をしても何の得にもならないことに気
がついた。

今回の事は、起るべくして起ったような事件という事は悟っていた。中国の、
見も知らぬ成都の街中を、パスポートも持たずに歩き、いくら店の要求が高過
ぎるとはいえ、200元だけ置いて女の子の腕を引張って店から逃げた事も、
話し合えば済んだ筈だ。

捕り物で、刑事のひとりに怪我を負わせた事も申し訳なかったと思う。

−42
誤認逮捕とはいえ、私が逮捕され為に彼女も恐怖を味わった。すべてが私の配
慮のなさから起った事だと思うと、怒る気にはなれなかったし、怒ってもどう
しようもない事だった。ーーー真犯人が逮捕されたという報せも聞かされた。

刑事部長が、「日本領事館へは内密に願えませんか?」と、「今回のあなたに
関する書類は全て焼却します」と言った。

取り調べの間中、何度も領事館の事を口にしたからであろう。取り調べの間は
物事を冷静に考えられない状況だったので、ついつい言ってしまったーーー。

−43
いまは何も考えたくはなかった。彼女がどうなったか聞いてみたところ、早い
うちにホテルへ送り届けたということだった。「何も不審な点がなかったし、
拘留する理由がなかった」と言うが、では私の場合はどうなんだ!と叫びたく
なったが、無罪放免!

怪我をした刑事にも謝った。彼等は「正当防衛ですから・・・」と言ってくれ
たが、ほんとうに腹の中からそう思っているのかは疑問だった。

−44
公安局のパトカーで送りますと言われたが、あまりにもハデ過ぎるので、刑事
部長の自家用車でホテルまで送ってもらった。部屋に入り、ベットに腰掛けて
タバコを吸った。そのタバコの煙を、焦点の合わない眼で眺めていた。

昨夜から今朝に掛けての逮捕騒動は、いったいなんだったんだろうか?偶然か
らおきた事件なのか?起るべくして起った事件なのか? 時間が過ぎていく。

−45
やっぱり、全ては自身にある・・・。女の子も嫌な思いをしたが、その原因は
私ではなく彼女自身の原因と結果であり、怪我をした刑事も、私に怪我を負わ
されたのでは無く自分自身に武道に長けているという奢りという原因があった
からである。

捕まえられる者が必死に逃げようとするのは当たり前である。相手が誰なのか
分らないので殺されるかもしれないという恐怖もあった。自分を取り巻く環境
の中で発生する問題を、他人のせいにするのはどうだろうか?

ーーータバコの灰が絨毯の上に落ちた。

                   = 成都誤認逮捕事件おわり =
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